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元気な本棚 ほっこりコミュの日本の絵本 <その2>

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双子座「日本の絵本」の紹介が20まできました。おにぎり蟹座

 長くなりますので、<その2>を作りました。
 引き続きよろしくおねがいします。

クローバー昨年も、さまざまな出来事がありました。
ですが、殺伐とした世相を憂うばかりではなく、一人ひとりが変わろうとしなくてはならないのだと思います。

クローバー「平和とは?」と考える時、政治とか、核兵器のことが、いつも大きく取り上げられます。
 ですが、このごろ思うようになったのは、「平和」という言葉を考える時、全てのことが、平和へと結びついてくるのではないかということです。

ハート達(複数ハート)例えば、絵本を通してでも、豊かな情操を育み、まわりの人への思いやりや自然を愛する心を育むこと、広い視野を持つことが出来るのではないか、それも未来への平和へとつながっていくことなのではないかと思うのです。

 「食べる」ことも大切です。
 食べることは、体だけでなく心の健康にも大きく影響します。現在の日本の「食の崩壊」は、日本の国が大きく乱れた大きな原因になっているのではないかと、多くの方が指摘されています。

揺れるハート平和な世の中にするために、個人のレベルで出来ることはいろいろあるはずだと思うのです。
  
 
〔目次〕
 1 『のえんどうと 100にんのこどもたち』 甲斐信枝・さく
                     福音舘<こどものとも>シリーズ

 2 『ピップとちょうちょう』− こどものとも・創刊号(1956年) 
                与田準一・作 堀 文子・画 福音舘書店

 3 『ごろはちだいみょうじん』−<こどものとも傑作集> 
          中川正文・さく 梶山俊夫・え  福音舘書店

 4 『ひがんばな』 甲斐信枝・さく 福音舘<かがくのとも傑作集>

 5 絵本で親しむ古事記 ―≪複刊・日本の名作絵本≫(全10巻・岩崎書店)より
   『おおくにぬしのぼうけん』 福永武彦・文 片岡球子・絵 
   『やまたのおろち』     羽仁 進・文 赤羽末吉・絵
   『にほんたんじょう』    岸田衿子・文 渡辺 学・絵
   『うみひこ やまひこ』    与田準一・文 渡辺 学・絵

   『古事記物語』  福永武彦・作  岩波少年文庫

 6 『ぶどう酒びんのふしぎな旅』 藤城清治・影絵 講談社  
                 アンデルセン・原作 町田 仁・訳 
 7  お母さんが読んで聞かせるお話  暮らしの手帖社
   『きん色の窓とピーター』   藤城清治・影絵  香山多佳子・お話     
   『お見舞いにきたぞうさん』 藤城清治・影絵  香山多佳子・お話

 8 いなばのしろうさぎは 白くなかった?
   『いなばのしろうさぎ』 ― 日本の神話(全六巻)・第四巻
             赤羽末吉・絵 舟崎克彦・文 あかね書房

 9 『さるのせんせいとへびのかんごふさん』
   『へびのせんせいとさるのかんごふさん』
          穂高順也・ぶん 荒井良二・え ビリケン出版 

10 『スースーとネルネル』 荒井良二・作 偕成社

11 『きょうという日』 荒井良二・作  BL出版

12 『くるみわり人形』 E.T.A.ホフマン=原作 中井貴恵=抄訳
                いせひでこ=絵 ブロンズ新社

13 『笑顔の咲く街』 東 亜紀・作 文芸社

14 『あいうえおはよう』 にしまき かやこ・作 こぐま社

15 『なかよしだあれ』 にしまき かやこ・作 こぐま社
   『だっこして』    にしまき かやこ・作 こぐま社
   『えかきうたのほん』 中村柾子・西巻茅子/ぶん 
             西巻茅子/え 福音舘書店

16 『どうぞのいす』 香山美子・作 柿本幸造・絵 ひさかたチャイルド

17 『なんていいんだぼくのせかい』 荒井良二・作 集英社

18 松谷みよ子・あかちゃんの本(0〜1歳)  童心社
   『いないいないばあ』   瀬川康男・え
   『おふろで ちゃぷちゃぷ』 岩崎 ちひろ・え
   『おさじさん』      東光寺 啓・え
   『のせて のせて』    東光寺 啓・え

19〖 くつくつあるけのほん〗 1〜4 林 明子・さく 福音館書店(各700円)
   『くつくつあるけ』
   『おててがでたよ』
   『きゅっ きゅっ きゅっ』
    『おつきさまこんばんは』

20 おばあちゃんと つくったよ!
   『おいしい ほしがき』 ひさかたチャイルド

21 『だいすきなおばあちゃん』 日野原重明・文  岡田千晶・絵
                        朝日新聞出版

22 『もみの木がっこうの うんどうかい』 いまむら あしこ・文
                    すえざき しげき・絵  女子パウロ会

23 『でんでんむしのかなしみ』 新美南吉・文  鈴木靖将・絵  新樹社
                                
   『でんでんむしのかなしみ』 新美南吉・作  かみやしん・絵  大日本図書

24 『ひかりの二じゅうまる』 志茂田景樹・作  石川あゆみ・絵
                 KIBA BOOK −志茂田景樹事務所

25 野鳥写真家・戸塚 学さんの写真絵本 
   『コアホウドリはかぜとともだち』  写真・文/戸塚 学   ポプラ社
                  
   『ヤンバルクイナ・アガチャーの唄』 写真・文/戸塚 学  そうえん社

26 絵本『窓ぎわのトットちゃん』  1・2巻セット
                 文・黒柳徹子  絵・いわさきちひろ  講談社

27 『はなび ドーン』  カズコ・G・ストーン/作   童心社
               
                                           

コメント(27)

 晴れ『のえんどうと 100にんのこどもたち』 甲斐信枝・さく
                     福音舘<こどものとも>シリーズ
            (読んであげるなら 3才から、自分で読むなら 小学初級むき)

 科学絵本でおなじみの甲斐信枝さんですが、これは、絵本<こどものとも>シリーズの中の一冊です。たのしい創作ストーリーになっていて、絵も、科学絵本のように写実的ではなく、まったく違った描き方で、作者も、きっと別の意欲をもって、たのしみながらこの本を作られたのではないかと想像しました。

  あるおかのうえに、
  いっぽんの のえんどうが たっていました。

  はるのあるひ、のえんどうは 
  たくさんの こどもを うみました。
  こどもの かずは、なんと 100にん。
  おかあさんは こどもたちに いいました。
  「みんな はやく おおきく おなり。
  おおきくなったら、そとに でられますよ」

 たいように てらされ こどもたちは おおきくなっていき
 そとにでられるひが まちどおしおくてなりません。
 
  あるよる、たいようが やってきました。
  「まもなく なつがやってくる。
  そろそろ たびのしたくを はじめては どうかな」
 
双子座よるにやってきた たいようは、まるいたいようではありません。色も黒く描かれていています。なにか、たいようの強いパワー、エネルギーのようなものを表現しているようで、とても新鮮に感じました。
 のえんどうのこどもたちの100にん全員が、見開きいっぱいに描かれているページがあります。こどもたちが とってもよろこびそうです。

双子座『ピップとちょうちょう』− こどものとも・創刊号(1956年) 
与田準一・作 堀 文子・画 福音舘書店

芽この絵本は、福音舘の月間絵本「こどものとも」の、記念すべき創刊号です。1996年に復刻版が発行されましたが、今は残念ながら版がとぎれているようです。
 
 前回ご紹介した『松居 直自伝』の第三章<『こどものとも』を作る>の中に、“当時出版されていた絵本を超えるべく、『こどものとも』三カ条をつくった”とあります。
 
1「わが国でも本格的な、楽しい創作の絵本を作り出さねばならない」
2「絵本を保育の教材から子どもたち自身の手へ取りもどさなければならない」
3「幼児期にこそ、絵は美しく、すばらしいという美的経験をし、それを通して芸術を感じ取る豊かな目と感性を養ってほしい」

ハート創刊号をぜひ手にとって見てみたくなり、図書館で借りました。
 文章も絵も、とても素晴らしく、感動しました。

 「しろい、ちょうちょ、にがして やったの。
 みんなの ところへ とばして あげたよ。」
  ちょうちょうさんは おはなし きいて、
 「それは よかった、へいわの はるだ。」って、
 ピップぼうやを はるかぜの なかに、たかく、
 たかく、だきあげました。まちじゅうの みんなが、
 ふたりの まわりを、うたって おどって まわりました。

*「ちょうちょうさん」は「町長さん」のことです。「蝶々」と「町長」が出てきます

 『松居 直自伝』については、<ハート日本の文学・その3>で紹介しています。
 『ごろはちだいみょうじん』−<こどものとも傑作集> 
          中川正文・さく 梶山俊夫・え 福音舘書店

もみじてんごしいの たぬきがいた。てんごしいとは、いたずらもんということや。
 村の人やらは、てんごされてはかなわんさかい、「ごろはちだいみょうじん さまさま」いうて、たてまつっていた。
 たてまつるだけではなく、ちょくちょく あぶらげもおそなえしていたが、ごろはちにはきつねとまちがえられたようで、気にいらない。

もみじある日、村はずれで おおさわぎがはじまった。おおぜいの人が出てきて はたらきだした。てつどう いうもんがついて、汽車というものがとおって、えきができるという。
 いよいよ まちかねていた 汽車がとおる日、よそいきを着て 日の丸を持った村の人がおおぜい 汽車がやってくるのをを待っている。
 そして、生まれてはじめて 汽車を見た 村の人たちは、汽車がへんてこな生きもののように思えて、また、ごろはちに だまされているのではないかと思い、せんろの上に とびだしてきた。
 汽車は どんどん近づいてくる。気が気でなくそれを見ていたごろはちは・・・・・

 素朴で、私たち日本人の中にある、なつかしい心のふるさとのようなものを感じさせるお話と絵でした。最後はむねがちょっといたく、心の琴線にふれてきました。

 『ひがんばな』 甲斐信枝・さく 福音舘<かがくのとも傑作集>

 以前、福音舘の<かがくのとも>シリーズの甲斐信枝さんによる作品を、いくつかご紹介しましたが、この『ひがんばな』もその中の一冊です。写実的な絵ですが、図鑑のようではなく叙情性があって、文章からも作者の自然への愛情が伝わってきます。

 秋の お彼岸のころ 咲くので、彼岸花。
 ひがんばなは たくさんの なまえを もっています。

  まんじゅしゃげ
  きつねのかんざし はなぢょうちん ちんちんどうろう
  おみこしさん あかおに おにゆり おにかぶと たんぼばな
  きつねのたいまつ ふでばな じゅずば  へびばな ・・・・・まだまだあります。

  ひがんばなは ふしぎな しょくぶつです。
  はっぱも ださず いきなり はなを さかせるのです。
  さきおわっても はなびらは ちりません。
  はなびらや しべや くきに のこった ようぶんを
  きゅうこんに すいもどして いるのです。
  そして こんどは はっぱを だしはじめます。

目土の中の球根がふえていくようすなども描かれ、「ふしぎ」にたいするぎもんを解き明かしてくれます。
♡絵本で親しむ古事記 ―≪複刊・日本の名作絵本≫(全10巻・岩崎書店)より
 『おおくにぬしのぼうけん』 福永武彦・文 片岡球子・絵 
 『やまたのおろち』     羽仁 進・文 赤羽末吉・絵
 『にほんたんじょう』    岸田衿子・文 渡辺 学・絵
 『うみひこ やまひこ』    与田準一・文 渡辺 学・絵

♡『古事記物語』  福永武彦・作  岩波少年文庫(中学生から大人まで)


台風日本の神話や昔話が、もっともっと子どもたちに読まれることをねがっています。
 この複刊・日本の名作絵本シリーズ(全10巻)の中の4冊が古事記のお話で、文も絵もそうそうたるメンバーです。
 岩波少年文庫の『古事記物語』(中学生以上)には、日本民族の息吹をいきいきと伝える24のお話が収められています。

三日月今年はちょうど、古事記編纂・1300年にあたります。秋の夜長に家族で神話の世界に親しんでみませんか?
 
 4冊の絵本については、以前に取り上げたことがありましたが、今年は特別な年でもあり、かたちをかえて、もう一度ご紹介することにしました。
波『ぶどう酒びんのふしぎな旅』 藤城清治・影絵 アンデルセン・原作 
                町田 仁・訳 講談社(2010年)2857円+税

ワイングラスこのお話のもとの題名は『びんの首』といいます。
 ガラス工場で作られたびんに、上等のぶどう酒が詰められ、売りに出され、幸せな若者と娘の婚約のお祝いのために買われていきます。

船グラスを飲み干した若者は、びんを空高くほうり投げました。小さな湖の岸に落ちたびんは長い紆余曲折の旅をへて、またふるさとに帰ってきますが、とうとう割れてしまい、コルクの栓をされてさかさまにされ、若い時に婚約者を亡くした、ひとりぐらしのおばあさんの部屋の窓辺の鳥かごにつるされて、小鳥の水のみになりました。
 
 おばあさんは、それが、あのしあわせな婚約の日にスポンという音をたててコルクを飛ばし、喜びの声をあげた、あのびんの口であることに気づきません。びんの口も、おばあさんがあのときの娘さんだということに気づかないのです。

ペンあとがきにこの絵本の出版の経緯が書かれていて、とても感銘を受けました。
 《ぼくの原点はアンデルセン童話だ。影絵の絵本を一番好きな話で出すことになり、この作品を選び、1950年、26歳のときに、最初の絵本として暮らしの手帖社から刊行された。びんの一生をたどりながら、それぞれの人生の喜びと悲しみとはかなさを描いた物語で、影絵はモノクロだった。

 50歳くらいから、カラーでもう一度、この物語を絵本にしてみたいという気持ちが強くなってきた。約60枚の影絵に、モノクロで数か月かかるが、カラーではその何倍も手間がかかり、そう簡単にとりかかれなかった。しかし年とともに思いはつのり、最初の絵本刊行から60年目にあたる、86歳の誕生日を目標につくりはじめた。
 60年の経験と技術と感動のすべてをこめて作らなければ、再びつくる意味はない。
 60年前も今も、心も、原点は学生時代からずっと一本の道を歩き、変わらない。》
ハート達(複数ハート)お母さんが読んで聞かせるお話  暮らしの手帖社
 『きん色の窓とピーター』   藤城清治・影絵  香山多佳子・お話(昭和59年)
 『お見舞いにきたぞうさん』 藤城清治・影絵  香山多佳子・お話(平成2年)

 暮らしの手帖に連載されていた<お母さんが読んで聞かせるお話>が、単行本の絵本として出版されたものです。新刊ではないのですが、是非ご紹介したいと思いました。

もみじ『きん色の窓とピーター』には、15篇のお話が収められています。
 表題作は、ビアールの童話から。その他ドイツ・スペイン・インド・日本などさまざまな国のお話、ヘッセの短編、アンデルセンやチャペックの童話からなど。

もみじ『お見舞いにきたぞうさん』には、13篇のお話が収められています。
 アナトール・フランスの短編、各国の昔話、アンデルセン・トルストイ・サンドバーグの童話、ドーデーの作品からなど。

 他に、まだ読んでいないのですが、『ロンドン橋でひろった夢』(昭和59年)も出ています

 ペンあとがきの文章に、とても感銘を受けましたので、少しご紹介したいと思います。
《よく絵本でも劇でも、年齢別に、みる対象をわけたものがあるが、ぼくはあまり、そういうわけかたをして影絵をつくりたくない。
 早いスピードで変革してゆく今の時代で、人間が一番忘れかけているのがファンタジーではないだろうか。世の中がどんどん現実的になってゆくなかで、人間にとってもっとも大切なファンタジーや夢や、やさしい心は、逆に失われていっているような気がする。
 こどもに夢をという前に、お母さんに夢をお父さんに夢をというのが、ぼくの切なる願いだ。

 人間にとってもっとも大切な光、人間の心に懐かしさを知らせてくれる影、この光と影には、自然に人の心を美しく豊かにしてくれるものがあるような気がする。光と影を愛し、自分の心の中に生まれた夢を光と影で描いてゆくことが、みんなの心の中に通じるファンタジーをつくることになると思っている。
 ファンタジーとはそんなにだいそれたものではないと、ぼくは思っている。
 自然を愛し、動物を愛し、そして人間を愛しつづけながら、光と影を通して、こどもにも大人にも愛されるような作品を作りつづけたいと思っている。》

 
exclamation & questionいなばのしろうさぎは 白くなかった?
 『いなばのしろうさぎ』 ― 日本の神話(全六巻)・第四巻
            赤羽末吉・絵 舟崎克彦・文 あかね書房(1995年初版)

台風『いなばのしろうさぎ』のお話は、先だってご紹介した古事記絵本『おおくにぬしの冒険』の中にも出てきましたが、日本でよく親しまれているこのお話について、本書を読んで、新しい発見をしました。

 絵本にはさまれている別紙で舟崎さんが書かれた、“「しろうさぎ」異聞”の内容をおおまかにご紹介します。
 《『古事記伝』を著した本居宣長は、しろうさぎとは素 ― つまり素肌の素、裸(あかはだか)のうさぎの意であって、となると素をシロと読むこと事態にも疑義ありと述べている。
 我が国のノウサギは、ふつう冬季には白化する。「いなばのしろうさぎ」が白であるためには、舞台は冬でなくてはならない。
 が、「しろうさぎ」は、漢方薬としても伝えられているガマの花粉で傷をいやさなければならない。そしてガマの花期は夏なのである。となると、しろうさぎは当然、そのとき夏毛でなくてはならない。
 我が国に飼いうさぎがもたらされたのは、もっとずっとあとになってからの、天文年間(1532〜55年)である。
 以上のような根拠から、本書は「茶色のしろうさぎ」を登場させた。》

波私には専門的なことはわかりませんが、遠い時代のお話なので、今でもはっきりわかっていないことが、いろいろあるのでしょう。それだけにロマンもあります。一冊の絵本から、歴史についても考えることが出来、遠い昔の人たちの生活を想像して心をふくらませました。
 『さるのせんせいとへびのかんごふさん』(1999年初版)
 『へびのせんせいとさるのかんごふさん』(2002年初版)
          穂高順也・ぶん 荒井良二・え ビリケン出版 1600円+税

TVこの9月にNHKの朝ドラ「純と愛」が始まり、オープニングに、絵本作家・荒井良二さんによる画像が映し出されています。荒井良二さんは童心あふれる絵を描かれる方ですが、彼の絵と朝ドラの結びつきが以外だったので、最初はちょっと驚きました。

 今日ご紹介するのは、その荒井さんの作品の中から、子どもたちに大人気で版を重ねている絵本です。

チューリップ動物村の病院のさるのせんせいは、へびのかんごふさんに、めずらしい草や根っこをたくさん食べさせ、水をのませて、そのからだごとよくふってかきまぜ、容器にうつして、いろいろなくすりを作ります。

 かぜをひいたきつねがやってきました。「ああ、かぜぐすりをのむんだなあ」
ところが、へびのかんごふさんはくすりをのみ、うでにがぶっとかみつきました。 きつねはよろこんで帰っていきましたが、うでには歯型がくっきりついていました

 へびのかんごふさんは、じぶんのからだで身長も、頭の大きさも、胸囲もはかれます。
 かん者の口からお腹の中へ入っていって、検査もできます。

チューリップニ冊目では、へびのかんごふさんが一日だけの約束でおいしゃさんにしてもらいました。
 ところが、かんごふさんになったさるは、かん者のお腹の中を診ようと口を大きく開けさせ、無理やり入ろうとしましたが、どうしても入れず、今度は抜けなくなってしまいました。さてどうなったか? 抱腹絶倒の面白い展開に、思いっきり笑ってしまいます。

 どんな時も気持ち良さそうなへびのかんごふさんの表情は、何度見ても可笑しみをさそいます。
 大人になったら、なかなか心から笑えるようなことはそうはありません。屈託のある心が日常になってしまっていますが、時々はそれを吹き飛ばすように笑うのもいいもんだと思いました。
夜眠い(睡眠)『スースーとネルネル』 荒井良二・作  偕成社(1996年第一刷)1000円

 スースーとネルネルは なかなか ねない こどもたちです
 ふたりは ねむく なるまで おはなしをつくって あそびます

時計トケイの中に入っていって、出たところは? ふしぎな世界、ちょっとこわい世界や冒険。とびきりでっかいお菓子をおもいっきりかじってみたり ・・・・・
 
 そこへ、トケイがやってきました。ふたりはもとの世界にもどります。

 「ちょっと こわかったけど たのしかったね」とスースーが いいました
 「そりゃあ たのしかったわよ」と ネルネルが いいました
 「では きょうのおはなしは おしまい おしまい」と ふたりが いいます
 「おやすみ ネルネル」 「おやすみ スースー」眠い(睡眠)

ぴかぴか(新しい)荒井良二さんの作品は、色彩があかるくうつしく、ストーリーは想像力豊かで理屈がないのが、すばらしいです。子どもの本の作家としては、ずばぬけた存在だと思います。すみきった色彩は、心の邪念のなさを表わしていると感じるのです。

 情報の飛びかう世の中、殺伐とした事件を見聞きすることが幼い心に及ぼす影響を憂えます。ざらざらしたものに接する前に、出来るだけ、幼い頃にこのような作品に出会ってほしいと願います。

ハート達(複数ハート)おやすみ前の読み聞かせの時間は、親子にとってかけがえのないものですが、時々は、この本の兄妹のように、想像力を羽ばたかせながらお話を作ってみるのも、とても楽しいおやすみの時間になるのではないでしょうか。兄弟でなくても、父母や祖父母とでもかまわないのです。

 作者は、2005年にアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を日本人初受賞された他、数々の賞を受賞されています。
ぴかぴか(新しい)『きょうというひ』 荒井良二・作  BL出版(2005年)1300円+税

  きのうの よる ゆきが ふりました
  しずかに しずかに ふりました

  あさひが ゆきを てらして
  きょうというひの はじまりです
  きらきら まぶしい はじまりです

  あたらしい セーターを あみました
  きょうというひに きる ために

  ゆきで ちいさな いえを つくります
  なかに ロウソクが はいるくらいの

  ちいさな いえを
  たくさん たくさん つくります

  きえないように きえないように・・・・・・
  そらを みあげて いのります

  きょうというひの ちいさな いのりが
  きえないように
  きえないように・・・・・・

ハート美しい絵本です。縦19.5センチ、横19センチの少し小さ目のサイズ。
 荒井良二さんの絵本は、登場人物が生きいきと動くものが多いのですが、これは異色の一冊。どちらかというと、おとな向きの絵本でしょうか。
 クリスマスの絵本のようですが、「きょうとというひ」のちいさな祈りが、きえないように、たいせつに、たいせつに、一日いちにちを生きようとするねがいともとれます。
 しずかな感動を、身近なひとにも手わたしたくなります。そっとそっと・・・・・。
クリスマス『くるみわり人形』 E.T.A. ホフマン=原作 中井貴恵=抄訳
              いせひでこ=絵 ブロンズ新社(2008年)1500円+税

ハート素適な絵本を見つけました。季節柄ちょうどぴったりですのでご紹介します。

 『くるみわり人形』は、E.T.A ホフマンの原作ですが、毎年クリスマスなどに上演されるバレエでもよく知られていますね。バレエでは、お菓子の国の妖精たちが踊る場面などが見せ場になり、クローズアップされていますが、中井貴恵さん・訳の本書は、原作により近いかたちになっているようです。

 大好きな、いせひでこさんの挿絵も、とても素適です。色使い、タッチ、センスが素晴らしく、それに、音楽にもとても造詣が深くあられることも、この本の挿絵にはぴったりだと思うのです。
クリスマスプレゼントにもぜひお薦めしたい絵本です。

クローバー『笑顔の咲く街』 東 亜紀・作  文芸社(2008年)1100円+税

家小さな街の小さなお家に
  さきちゃんという女の子が住んでいました。
  さきちゃんはとっても元気で優しくて、
  お友達がたくさんいました。
  さきちゃんは、虹とラムネと、笑顔が大好き。

  ある日、さきちゃんにお手紙が届きました。
  お空の国の王様からです。

  やさしいさきちゃんへ
  お空の国へ来てもらえませんか?
  とっても大切なお仕事があります。
  やさしくて明るいさきちゃんに
  手伝ってほしいのです。

 さきちゃんがお空の国に行ってしまって、お友達のミキちゃんとしぃちゃんはさびしくてたまりません。お空の王様とさきちゃんは、ふたりにラムネを贈りました。そして、雨上がりの空を見上げるときれいな虹が。
 布と刺繍糸、毛糸を素材にして創られた絵本です。表紙からはわかりませんが、さきちゃんとふたりのお友達が、生きいきとえがかれていて、とても素晴らしいです。

ペン <著者プロフィール>1982年大阪市生まれ。大阪市立工芸高校プロダクトデザイン科卒業後、ヒューマンアカデミースポーツ スキューバーダイビング専攻に入学。ダイビングインストラクターや小型船舶1級の免許を習得。専門学校卒業と同時に芸能活動を開始。23歳で引退後、現在(2008年)は、ライターを目指し勉強中。 

 巻末に、《この本を、大好きなさき姉に捧ぐ》とありました。
 ひと針、ひと針に、亡くなられたお姉さまへの思いが込められているのですね。

 いつでも、大事なのは“これからを明るく照らすこと”
 いつも、いつまでも、みなさんの心に、笑顔のつぼみがありますように・・・(あとがきより)
 クローバー刺繍の絵本 『あいうえおはよう』 にしまき かやこ・作
            こぐま社(2003年)900円+税

 ぜひ紹介したいと思う子どもの本の作家は、いろいろあるのですが、なかなか進まないでいます。にしまき かやこ(西巻茅子)さんもその一人ですが、思いきって西巻さんの作品の中から、いくつか紹介してみようと思います。

 やさしく淡い色あいで描かれた絵本の数々をみていると、いつもほっとする気がします。代表作『わたしのワンピース』は、すでに150刷を超え、親子二代にわたるファンも生まれているといいます。
 今日ご紹介する『あいうえおはよう』は、先日図書館ではじめて見つけ、こんな作品もあったのかと、多彩な才能に驚かされました。

 ブタあいうえおはよう、
  かきくけこぶた、
  さしすせそろって、
  たちつてとんだ。
  元気な三つ子のこぶたの
  楽しい一日が、
  五十音のことば遊びの
  リズムにのせて展開されます。(表紙カバー裏の紹介文より)

 布地と糸で、ひと針、ひと針、丁寧に時間をかけて作られた楽しい作品です。

バースデー2冊目も出ています。
 『ぼくたち1ばんすきなもの』
 1番好きなブランコが、2コしかないので、ジャンケンポンで順番を決めた三つ子のこぶた。きょうはう れしい4歳の誕生日!
ハートにしまき かやこさんの絵本、今日は“赤ちゃん絵本”と“絵かき歌の本”をご紹介します。

チューリップにしまき かやこ あかちゃんの本
 『なかよし だあれ』  にしまき かやこ・作  こぐま社(1030円)
  おにわに さいてる おはなの なかよし だあれ
  おうちの まどの なかよし だあれ
  テーブルの うえの おちゃわんの なかよし だあれ・・・
  まくらと もうふの なかよしは そうね ななこちゃん
  みんな いっしょに おやすみなさい

 やさしいふんいきの絵で「なかよし だあれ」と問いかけます。さいごのなまえのところを、お子さんのなまえに置きかえて、読んであげるといいですね。
 同じ出版社で、『だっこして』も出ています。

えんぴつ『えかきうたのほん』 中村柾子・西巻茅子/ぶん 西巻茅子/え
                 福音舘書店 1100円+税
       <ハート読んであげるなら 4才から じぶんで読むなら 小学校初級むき>

  まみこちゃんが かいた おにんぎょうの りりこが、
  たちあがって、「クレヨン かして」といいました。
  りりこが かいた めがねが ぴょんと とびだして、
  りりこの はなに のり、りりこは でかけて いきました・・・

 子どものころにおぼえてたのしんだ絵かき歌を思い出して、なつかしくなりました。
わーい(嬉しい顔)この本は、ストーリーといっしょにいろんな絵かき歌が登場して、たのしさも倍になる感じです。

双子座『どうぞのいす』 香山美子・作  柿本幸造・絵
        ひさかたチャイルド(1981年第1刷・2010年第96刷)1000円+税

 ミクシー仲間のYさんが、お孫さんへのプレゼントにされた本。人気の本のようですね。図書館で予約して連絡がくるのを楽しみに待ちました。
 
もみじうさぎさんが ちいさな いすを つくり のはらの きの したに おきました。
 そのそばに「どうぞのいす」 とかいた たてふだも たてました。
 はじめに やってきたのは ろばさん。
 どんぐりの いっぱい はいった かごを いすに のせて ひるねを しているうちに・・・・・。

 お話のゆったりとした時間の流れに合わせていると、せかせかしていた心にゆとりの場所が生まれる感じがしました。

ハート達(複数ハート)愛情のこもったプレゼントをもらったお孫さんは幸せですね。

 ぴかぴか(新しい)『なんていいんだ ぼくのせかい』 荒井良二・作 
                  集英社(2012年)1300円+税

双子座荒井良二さんの新刊です。素晴らしかった!

 「300年後の子どもたちへ。どんな時代でも子どもは未来なんです。」
未来を見つめて投げられた『なんていいんだ ぼくのせかい』
この直球を受けとめるのは、地球に生きる私たち 子どもも大人も
                  ― 本の帯のメッセージより ―

 小さないえに こどもがうまれました。
 「なんていいんだ ぼくのせかい」

 たのしく しあわせに 成長した子どもが、
 突然 泣きます。 声をあげます。
 そして また 新たに「再生」へと・・・・・。

 それから それから こどもが わらっていった
 「なんていいんだ ぼくのせかい」
 小さな いえに また こどもがうまれます・・・。

ぴかぴか(新しい)インターネットに掲載されていた作者の言葉が、大切なことに気づかせてくれました。
 「絵本は、ベストセラーのためのものではない。そっと読者によりそうもの」
 絵本の本質に触れた言葉が、心に深くしずかに沁みました。
さくらんぼ松谷みよ子・あかちゃんの本(0〜1歳)  童心社
  『いないいないばあ』   瀬川康男・え
  『おふろで ちゃぷちゃぷ』 岩崎 ちひろ・え
  『おさじさん』      東光寺 啓・え
  『のせて のせて』    東光寺 啓・え 


 本の紹介をのぞいてくださる皆様には、小さいお孫さんのある方もいらっしゃるし、また、身近な方に赤ちゃんが生まれ、お祝いに絵本を、と考えられることもおありだと思います。あかちゃん絵本の紹介を、と思いながら、私自身が一人っ子の親であることと、保育園などでの読み聞かせの体験を豊富に持っているわけでもないので、ためらいがありました。でも、長年にわたって定評のある絵本の紹介なら、してもいいのではと思い、まず、松谷みよ子さんのあかちゃんの本を取り上げてみました。

クローバー上記の本を含むこのシリーズは、セットとしても、一冊でも購入出来、赤ちゃんがいちばん最初に出会う本としてロングセラーになっていますし。わざわざここで紹介するまでもないかも知れませんが、やはりまず、最初はこのシリーズからと思いました。

わーい(嬉しい顔)『いないいないばあ』
  スキンシップのよろこびを実感!
  日本でいちばん売れている絵本だということです。
レストラン『おさじさん』
  おやまを こえて のはらを こえて
  おさじさんが やってきました
  こんにちは おいしいものは ありませんか・・・
車(RV)『のせて のせて』
  まこちゃんの じどうしゃです はしりますよ
  のせて のせて うさぎさんが てを あげています
  のせて のせて くまさん ねずみさんも
  あっ トンネルだ! まっくら まっくら  
  



さくらんぼ福音館の赤ちゃん絵本ひよこ

ハート達(複数ハート){くつくつあるけのほん}1〜4 林 明子・さく 福音館書店(各700円)
 『くつくつあるけ』
 『おててがでたよ』
 『きゅっ きゅっ きゅっ』
 『おつきさまこんばんは』

 この{くつくつあるけのほん}は、1986年に出版されて以来、版を重ね、親しまれて来ました。

 個性豊かな絵本が数々出版されていて楽しませてくれますが、ときには食傷気味になることもあります。そんな時、林 明子さんの絵を見ると、いつもほっとするのです。とても丁寧に描かれていて、素直で、普通の感じがいいなあと思います。

プレゼントプレゼントにも素敵です。セットでも一冊でも購入することができます。
わーい(嬉しい顔)おばあちゃんと つくったよ!
『おいしい ほしがき』 ひさかたチャイルド(2013年9月)1200円

もみじ岩手県盛岡市の干し柿作りを取材した、写真絵本。おばあちゃんの家にやってきた孫が、干し柿作りのお手伝いをします。干し始めた柿が、日が経つにつれ少しずつ変化していきます。
 ひと月経つと、干した柿を箱に並べて詰め、新聞紙でふたをして冷蔵庫にしまっておきます。2週間たって、干し柿は白い粉をいっぱいつけて甘く食べごろになりました。おいしそうな笑顔がこぼれます。

もみじ日本の伝統を伝えるという大切なことが、忘れられがちな今の時代。あせりを感じながらも、何も出来ない自分を歯がゆく感じます。この絵本のように、おばあちゃん(おじいちゃんも)の智慧を孫の世代に伝えていく機会を、何とかしてもっと作ることが出来ないものでしょうか?
 
 新聞やテレビを見ても、紹介されているのは、パティシエになりたいと夢見ている子や、ケーキのコンクールなどばかり。和菓子職人になりたい子は、登場しません。 巷の外食産業は、洋食や洋菓子などの店がすごい勢いで増えているように思います。それに対して、日本の家庭で代々伝えられてきた料理や和菓子などは、よっぽどアピールする努力をしないことには、ますます押されて、隅に追いやられていくように感じます。

 日本の和食の文化が世界無形文化遺産に登録とのこと。これをきっかけに、和食の良さがどれだけ見直されるか? 現状を考えると、容易ではないような気もします。
干し柿の絵本からつい、いろんなことを考えてしまいました。

ハート以前ご紹介した『干し柿』(西村 豊/写真・文 あかね書房)を、思い出しました。(《元気な本棚 日本の絵本》に掲載しています)
ハート『だいすきなおばあちゃん』 日野原重明・文  岡田千晶・絵
                    朝日新聞出版(2014年3月)1300円

 「幾つになっても何かをはじめるのに遅いことはない」とおっしゃる日野原さん。2012年のお正月に「絵本作家になる」と宣言され、2年の歳月を経てそれを実現されました。

ペン“人間は、いつかは死にます。おじいちゃんやおばあちゃんがだんだんと弱っていき、自宅で死ぬ最後の時まで、子どもたちが世話に参加し、その瞬間に立ち会うことで、人が死んでいくなりゆきをよく理解してほしい。そして、おしえてもらったたくさんのことに感謝し、心から「ありがとう」と伝えてほしい。そんな気持ちで、このお話を書き上げました。多くの子どもさんに、ご両親や祖父母の方が読んであげてください。”

 日野原さんは、このお話をご自分の子ども時代を思い出しながら書かれたということです。おばあちゃんにおしえてもらったたくさんのことは、日野原さんのかけがえのいない宝物なのでしょう。そんな思い出を持てることは、誰にとっても幸せなことなのだと思います。

 岡田千晶さんの絵は、柔らかなおさえた色合いで、この本の内容にぴったりだと思いました。
 読んでいるうちに、私も祖母のことがいろいろ思い出され、最後のページの「おばあちゃん ありがとう」のことばに、涙が出そうになりました。


芽『もみの木がっこうの うんどうかい』
             いまむら あしこ・文  すえざき しげき・絵
                 女子パウロ会(2014年5月)1200円

 以前ご紹介したことのある『ぶな森のキッキ』シリーズの作者・今村葦子さんの新刊絵本です。

本あしたは、もみの木がっこうの うんどうかいです。
 こだぬきは、げんきいっぱいの いい子でしたが、もみの木がっこうでは こまった子でした。みんなと いっしょにすることが、にが手なのです。
 そんなこだぬきのことを、とうさんと かあさんは いつもしんぱいしていました。
 
 こだぬきは、「どうしたの」ってきいてくれる、ともだちおもいのしんせつな子でした。こうさぎが かぜをひいたとき、おみまいにきてくれたり。
でも、わがままで なきむし、すぐに おおさわぎするし、たまころがしきょうそうでは、たまをひとりじめしたり、うんどうかいのれんしゅうでは、まったくこまった子でした。

 ふくろう先生は、子どもたちがじぶんたちで、かいけつするまで、がまんづよくまっていました。
 
晴れ運動会のあさがやってきました。かけっこがはじまりました。みんな負けじと せりあいます。そのとき、こぎつねが ばたんと手をついてころびました。みんなは こぎつねにかまわず どんどんかけていきます。そのとき、こだぬきが かけもどってきて、こぎつねを たすけおこしたのです。ふたりは かたをくんで、はしりだしました。
 みんなは こえをかぎりに おうえんしました。ふたりは なかよくびりで ゴール。
 いま、みんなのこころは ひとつでした。

 『でんでんむしのかなしみ』 新美南吉・文  鈴木靖将・絵
                   新樹社(2012年)1200円              
 『でんでんむしのかなしみ』 新美南吉・作  かみやしん・絵
                  大日本図書(1999年)1300円

クローバー皇后美智子さまが、1998年国際児童図書評議会(IBBY)ニューデリー大会での基調講演「子ども時代の読書の思い出」の冒頭で、子どものころに読んでもらった「でんでんむしのかなしみ」が深く心に残っていると語られて、この作品が広く知られるようになりました。
 
 《そのでんでん虫は,ある日突然,自分の背中の殻に,悲しみが一杯つまっていることに気付き,友達を訪(たず)ね,もう生きていけないのではないか,と自分の背負っている不幸を話します。友達のでんでん虫は,それはあなただけではない,私の背中の殻にも,悲しみは一杯つまっている,と答えます。小さなでんでん虫は,別の友達,又別の友達と訪ねて行き,同じことを話すのですが,どの友達からも返って来る答は同じでした。そして,でんでん虫はやっと,悲しみは誰でも持っているのだ,ということに気付きます。自分だけではないのだ。私は,私の悲しみをこらえていかなければならない。この話は,このでんでん虫が,もうなげくのをやめたところで終っています。》                         (基調講演より) 
                             


芽新美南吉は、1913年7月30日に生まれ、1943年3月22日に30歳の若さで亡くなりました。鈴木靖将(やすまさ)さんによる絵本は、写真では小さく写っていますが大型絵本です。生誕100年にあわせて出版されたもののようです。

芽かみやしんさんによる絵本には、まず詩が1編、そして「でんでんむしのかなしみ」をはじめ、お話が4つ収められています。
 冒頭の詩がとてもよかったのでご紹介します。

 「一年詩集の序」 
  生れいでて
  舞う蝸牛の
  触覚のごと
  しずくの音に
  驚かむ
  風の光に
  ほめくべし
  花も匂わば
  酔いしれむ

  (“生れいでて”は“あれいでて”
  “蝸牛”は“ででむし”、“触覚”は“つの”と読みます。)


 ずっとこのお話が気になっていたのですが、なかなか紹介できなくて。大変遅まきながら、やっと紹介することが出来ました。
ハート2冊ともとても素敵な絵本です。小さいお子さんには、鈴木靖将さんの絵本の方がいいかと思います。どちらもプレゼントにぜひお薦めです。

クローバー「子ども時代の読書の思い出」は、『橋をかける』という題名で出版されています。

ぴかぴか(新しい)『ひかりの二じゅうまる』 志茂田景樹・作  石川あゆみ・絵
        KIBA BOOK −志茂田景樹事務所(2001年)1238円

双子座志茂田景樹さんの「よい子に読み聞かせ隊」の活動と、「よい子に読み聞かせ隊の絵本・童話」をいくつかご紹介してきましたが、この絵本もその中の1冊です。


 けんたは おもしろくて げんきな こどもです。
「二じゅうまるで いいや」というのが くちぐせ でした。
 ×はだめ △はややだめ ○はすこしよい ですから
 けんたにとって 二じゅうまるは じゅうぶん よいなのです。

 けんたは重い病気になり、入院しました。
  幼虫のとき、けんたに救われたホタルたちは、けんたにすばらしいプレゼントを思いつきます。

 かぞえきれないほどの 小さな ひかりが たかいへいを こえて びょういんの庭へ流れてきました。
 そして そのひかりは、うつくしい 二じゅうまるをえがいたのです。
 「二じゅうまるだ なおるぞ」
 けんたは きりょくを かいふくして 日に日によくなって たいいんすることができました。

ハート心洗われるようなストーリーと、石川あゆみさんの美しい「切り絵」に、とても感動しました。
カメラ野鳥写真家・戸塚 学さんの写真絵本 
 『コアホウドリはかぜとともだち』  写真・文/戸塚 学
                  ポプラ社(2002年)1000円
 『ヤンバルクイナ・アガチャーの唄』 写真・文/戸塚 学
                  そうえん社(2008年)1300円

 図書館で手に取った『ヤンバルクイナ・アガチャーの唄』が、野鳥写真家・戸塚学さんについて知るきっかけになりました。

クローバー戸塚さんは、1966年、愛知県生まれ。高校3年生のとき写真に興味をもち、幼少からすきだった自然風景や生き物を撮影。20歳のときアカゲラを偶然撮影できたことから野鳥の撮影にのめりこみました。作品は雑誌、コマーシャル、カレンダー等に多数発表されているということです。
 写真絵本はまだ2冊と数は少ないですが、とてもていねいに作られていて、野鳥を含めた環境にも目を向けてあり、素晴らしいと感じました。

芽ヤンバルクイナは、沖縄の方言でアガチャー(またはアガチ、ヤマドゥイ)とよばれています。全世界で、日本の沖縄島北部の国頭村を中心にした地域にしか分布していません。
 国の天然記念物に指定され、「絶滅の危機が増大している」とされる危急種です。

 やんばるの森に、道路や橋ができたけど、人間が森にアガチャーの敵を連れてきてしまいました。車にひかれて死んでしまったり、森に捨てられたイヌやネコがアガチャーを食べるようになってしまったり、マングースがアガチャーの食べ物をねこそぎ食べてしまう。それどころかアガチャーまで食べてしまうといいます。

芽コアホウドリは、11月になるとミッドウエイという小さな島に集まります。世界中のコアホウドリの75%が、この島で卵を産んで育てるのです。結婚して雛が生まれてから巣立っていくまでの様子が撮影されていますが、美しい自然と、力強く羽ばたくコアホウドリの姿にとても感動しました。
 ところが、とても悲しいことに、人間が出したプラスチックのごみが海をただよい、親鳥はえさと間違えて巣に持ち帰り、雛に与えてしまい、雛は消化できなくて死んでしまうのです。

双子座児童書(科学読み物・絵本・物語など)をとおして、「地球の生きものたちはみんな友だち」なのだと、理屈でなく実感できるのではないでしょうか。幼い頃からの心起こしの大切さを思いました。

 戸塚 学さんの著書は他に、写真エッセイ集「鳥たちは今日も元気に生きてます!」(総合出版)、身近な野鳥観察ガイド(総合出版)、里山の野鳥ハンドブック(NHK出版)があります。
クローバー絵本『窓ぎわのトットちゃん』  1・2巻セット
               文・黒柳徹子  絵・いわさきちひろ
                   講談社(2014年7月)3000円

ハート新刊です。1981年に出版された『窓ぎわのトットちゃん』は、ベストセラーとなり、世界35か国で翻訳されていますが、いわさきちひろさんの絵と組み合わせて絵本になったことを知り、さっそく手にとってみました。

 二度目なので、最初に読んだ時より深く伝わってくるものがあって、あらためてつくづく、こんないい本はないなあと感じました。
 トモエ学園は、体に障害をもっている子が何人もいたけど、校長先生は、「助けてあげなさい。」とは、一度もおっしゃらなかった。いつも、「みんな、いっしょだよ。いっしょに、やるんだよ。」とだけだった。だから、トットちゃんたちは、なんでもいっしょにやった。助けてあげると考えたことは、一度もなかった。

 大人になった黒柳さんがされている、ユニセフの親善大使の仕事や「日本ろう者劇団」の支援も、みんな、校長先生の「みんないっしょだよ」が基本になっているということです。
 「きみは、本当はいい子なんだよ」と、ずっと言い続けてくれた校長の小林先生と、トモエ学園の教育が、こんな大きな花を咲かせたのです。

 最後にこう書かれています。
 <学校のいじめの問題も、「みんないっしょだよ。」って、小さい頃から教わっていたら、きっと、こんなには増えていないと思う。せめて、この絵本を読んでくださったみなさんは、「いっしょにやっていこうね。」と、おっしゃった小林先生の考えを忘れないで、うけついでいってください。そうすれば、トットちゃんも、とてもうれしいと思うでしょう。>

 いわさきちひろさんは1974年に亡くなられているので、この本の絵は描きおろしではありません。それなのに、よくこんなに本の内容にぴったりの絵があったものだと感心しました。それだけ、ちひろさんが、子どもたちの日常のさまざまな出来ごとや喜怒哀楽を細やかに、愛情を込めて描き続けてこられた、ということなのでしょう。
夜 『はなび ドーン』 カズコ・G・ストーン/作
               童心社(2012年)950円

 花火とは季節はずれのようですが、図書館に返却する前に、ぜひ紹介しておきたかったので。

ぴかぴか(新しい)暗い色のバックに描かれた花火の色があざやかで、とても迫力があります。

 シューッ パン ドーン パパパーン キラキラキラ
 パッ パパン ポン ピカピカピカ
 音の表現もゆたかに次々にいろんな花火が弾けていき、わくわくして引きこまれてしまい、何度でもくり返し見たくなります。

 あかちゃん絵本とありますが、インターネットで見ると、7歳くらいまでの子どもたちにもとても好評のようです。花火は、大人になっても心わくわくしますものね。

 この絵本の作者、カズコ・G・ストーンさんは、先日ご紹介した絵本・『蛙となれよ冷やし瓜』の絵を描かれた方です。

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