元気な本棚　ほっこりコミュの日本の文学　＜その３＞

＜その２＞の書き込みが長くなりましたので、＜その３＞を作りました。
引き続きよろしくおねがいします。

「日本の文学」とありますが、小説・伝記・評論などなども含めた大ざっぱな仕分けになっています。

〔目次〕
１　『絆』　藤原てい･著　埼玉福祉会（大活字本シリーズ）
２　『天地明察』　沖方丁･著　角川書店
３　『新三河物語』全３巻　　宮城谷昌光･著　新潮社
４　『萬葉集物語』　森岡美子･著　冨山房インターナショナル
５　『涅槃の雪』　西條奈加･著　光文社（１６に読後のコメントあり）
６　『私の遺言』上・下　　佐藤愛子･著　　埼玉福祉会<大活字本シリーズ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　底本 ― 新潮文庫
７　『綾子･大雪に抱かれて』　　北海道新聞社
　　『生きることゆるすこと』－三浦綾子･新文学アルバム　北海道新聞社
８～９『松居直自伝』－シリーズ松居直の世界①　松居直･著ミネルヴァ書房
１０『舟を編む』　三浦しをん著　　光文社
１１『絵本のよろこび』　松居直･著　　ＮＨＫ出版
１３『絵本はともだち』　中村柾子･著　　福音舘書店
１４『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』　末盛千枝子･著　現代企画室
１５『１Q８４』 BOOK 1～３　　村上春樹・作　　新潮社
１７『欅しぐれ』　山本一力・作　朝日新聞社
１８『小説田中絹代』　新藤兼人･著　　読売新聞社
１９『女の旅』― 幕末維新から明治期の１１人
　　　　　　　　　　　山本志乃･著　　中公新書
２０『ロダンと花子』 ― ヨーロッパを翔けた日本人女優の知られざる生涯
　　　　　　　　　　　　　　　資延勲・著　文芸社
２１『哀愁のプリマドンナ』ジェニー・リンド物語
　　　　　　　　　　　　　　森重ツル子・著　　教文館
２２『母』　石牟礼道子・米良美一／著　藤原書店
２３『弥勒の月』　　あさのあつこ　光文社
２４時代小説　料理人季蔵捕物控シリーズ
　　その１『雛の鮨』　　　　角川春樹事務所
２５『木喰』　立松和平・著　　小学館（2002年）
２６『神さまに用いられた人三浦綾子』　宮嶋裕子・著　教文館
２７『めぐり逢った作家たち』　伊吹和子・著　平凡社
２８『八重と新島襄』　保坂正康　毎日新聞社
２９『新島八重子回想録』　編集・同志社社史資料センター　
　　　　　　　　　　発行者・同志社大学出版部　販売者・同志社エンタープライズ

３１『銀のボンボニエール』　秩父宮妃勢津子／著　　主婦の友社
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　

コメント(31)

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[1] mixiユーザー 09月01日 20:12

　『絆』　　藤原てい・著　　<大活字本シリーズ>　埼玉福祉会

　藤原ていさんの夫君は、作家の新田次郎氏で、藤原正彦氏（数学者で、『国家の品格』などの著者）は、お二人の次男にあたられます。以前、藤原ていさんの著書、『流れる星は生きている』を図書館の児童書のコーナーで見つけて読み、大変心に残っていたので、本書を大活字本のコーナーで見つけて、是非読みたいと思いました。この大活字本は、読売新聞社刊『絆』を底本として2002年に刊行されたものです。

本書は、７０歳を過ぎた著者が、これが最後の作品になるかも、との思いで書き上げられたということです。
　幼いころからの父親との確執。「お前は河原で拾って来たのだ」と殴りつけられる。教師になるのを夢見て必死で勉学に励んだが、父親が学費を払ってくれず断念。羽をもがれた蝶のように生きる日々。

　夫君となられる新田次郎氏との出会い。満州へ。敗戦で、夫と離れて３人の子どもをかかえての収容所暮らし。ついに決心しての逃亡、そして帰国までのすさまじい体験。（この間のことは、『流れる星は生きている』の中でくわしく書かれています）

　著者はこの本の中で当時を振り返り、「誰にも頼らず、自分の力で生きようとする意欲は、人一倍強かったように思う。その意気があったからこそ、北朝鮮での長い放浪生活をも、生き抜いてきたのだと思う」と書かれています。父親との葛藤、逆境に耐えたことで、強さが培われた、それが、奇跡的な生還につながったのかも知れないと。

　帰国して実家の母親のもとに身をよせるが、精神的にもボロボロで普通の状態ではなく、若いころの結核も再発。夫が帰国して、また家族で暮せるようになったものの、長い間の闘病生活を余儀なくされます。

　やがて、誰にも気づかれないように、家族の眼をぬすんで、遺書を書いていたのが、お見舞いに来た人の眼にとまります。「これは世に問う必要がある」
　『流れる星は生きている』の出版の背景をはじめて知ることができ、感銘を受けるとともに、多くの試練を乗り越えながら懸命に生き抜いてこられた著者に、励まされる思いでした。

[2] mixiユーザー 09月16日 12:51

「天地明察」　　　　冲方　丁　著
　　　　　　　　　　角川書店

江戸初期の暦学・天文学者　渋川春海の“日本独自の暦創り”にかける
情熱！！！

読んでみてください。

[3] mixiユーザー 10月02日 14:05

「新三河物語」全3巻　宮城谷昌光著　新潮社　

全3巻、図書館で借りて、期間内に読めるかな･･と思いましたが面白かった！

この夏のある日、愛知県は岡崎在住の年配のおじさま（お上品な人たちでした）4人と食事をした時の事。誰でもが読んでいるかのように、この本の話題になりました。世間話をしながら、またしてもこの本へ話題が行きつ戻りつ。
なるほど、出世街道を驀進してきたサラリーマンや、経営者には、示唆に富んだ本なのでしょう。挫折、裏切り、忠誠心。時代小説の３大要素満載。華麗な文体。
大久保彦左衛門の目を通して、徳川家康の天下取りの物語です。
家康は、岡崎の出身だそうです。愛知県出身の宮城谷さんは、30歳代にこの本の構想を持ち、十分な熟成を経て本になったものでしょう、自信作だと思います。
大久保彦左衛門の著書「三河物語」を底本として、宮城谷さんはこの物語を書きました。
大久保彦左衛門は、1639年、80歳で没。

物語の始まる前に、大久保家の系図がずらりと出ます。本家や分家、枝分かれしながら、各家の兄弟の多さに驚きます。しかし、その男子達が、戦で次々と死にます。また、子供の男子は有力武士へ人質です。女の子は、政略結婚の切り札です。男も女も、大人も子供も、命ををさらしながら生きた時代。
大河ドラマ「江」と同じ時代です。女の子のおままごとのようなせりふはなく、リアルな戦と、骨太の人間が描かれた本でした。

こんな本を紹介する私って、内面の「おっさん化」進んでいるなあと、思います（笑）

[4] mixiユーザー 12月04日 19:32

　『萬葉集物語』　森岡美子･著　
　　　　　　　　　冨山房インターナショナル（1952年初版・2008年改訂新版第一刷）

『萬葉集物語』は、1940年（昭和15年）に金蘭社から出版され、太平洋戦争後、まったく版を改めて冨山房から再販、そして、その更なる改版が2008年に刊行されたとあります。

　万葉集は、何度か読もうと思い、図書館でいろいろ手にとって見るのですが、私のような者でも入っていけそうな本がなかなか見つからずに、入り口で止まっていました。
　『にほんよいくに』（葉室頼昭･著　冨山房インターナショナル）の巻末に、この本が紹介されており、私にも読めないだろうかと、図書館で借りてみました。（冨山房の児童書として紹介されていましたが、図書館では、一般書のコーナーにありました。）

この本は森岡さんは、中学生、高校生以上の幅広い層を対象として、楽しく読ませたい、読めるようにしてやりたいと考えられて書かれたということです。

2008年改訂新版の序文（小野寛氏・高岡市万葉歴史館館長による）には、こう書かれています。
“取り上げた歌は全20巻にわたって170余首、万葉の歴史を語り、政治、社会、万葉人の生活、職業、賀歌（がのうた）、挽歌、旅、伝説、動植物に至るまで、研究的に細かく目をくばり、ひとつひとつ例歌をあげ、秀歌はもれなく紹介。
　その全編にあふれる、読者である子どもたちへの愛情と、美しく優しいことばは他に類がありません。”

　この本にいざなわれて、面白く、楽しみながら読み通すことが出来、たいへん嬉しかったです。

著者は、平成7年、82歳で乳がんを手術。さらに、白内障が進み本が読めなくなり、平成9年、隻眼だけ手術して視力を回復されました。
「『萬葉集物語』を、装いを新たに刊行したい」という朗報が舞い込んだのは、95歳を迎えようとしていたときだったということです。
　そこには、刊行の決断にいたる版元の強い思いがつづられていました。
　「（前略）　日本語の乱れが話題になるこんにち、千数百年前の日本人のうたったことばを、美しく優しい現代のことばでよみがえらせた本書が、ふたたび読者の手にわたることを噛みしめています。多くの読者に読みつがれることを願っています」
　森岡さんは、望外の喜びである旨を伝えられたということです。

[5] mixiユーザー 02月02日 13:41

「涅槃の雪」　　　西條　奈加　　　光文社

天保の改革　老中首座水野忠邦　鳥居耀蔵　遠山景元　おなじみの顔ぶれですが
今まで知らなかった角度から・・・。特に鳥居耀蔵は明治６年までしっかり生き抜いたなんて、しかも庶民に慕われながら！！！。

とにかく、読んでみて下さい。

[6] mixiユーザー 02月07日 19:45

『私の遺言』上・下　　佐藤愛子･著　　埼玉福祉会<大活字本シリーズ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　底本 ― 新潮文庫　

私の遺言』という題名から想像するイメージとは違う、多分にスピリチュアルな内容のようで、興味を抱いて、読んでみようかなと思いました。

著者が昭和50年（1975年）、北海道の浦河という町の山の中腹に、夏の間だけ暮らすために建てた山荘で、さまざまな超常現象が起きます。そして、それは旅先のホテルや自宅でも起こるようになり、これまで生きて来られた77年のうちのその３分の１もの年月、それは続くことになるのです。
　その中で、何人もの霊能者との出会いなどを通して、佐藤家の先祖（武士）の霊と、無残な最期を遂げたアイヌ民族の霊、狐霊の存在を知り、霊の浄化への道を探していきます。

　上巻は、これでもかと続く、すざまじい霊的現象の体験を中心に書かれています。それが何を意味するのかは、下巻になってはっきりしてきます。

　それにしても、日本人はアイヌの人々に対して、何と残酷なことをしてきたのでしょう。

　

著者は、今この国に漂っている不安と不満を拭うためのひとつの示唆になってくれればと思い、渾身の思いでこの本を書かれました。

　世の中には科学では解明出来ない不思議な出来事がある。科学万能だと思っていた人間のおごり。自然の力、眼に見えないものへの畏敬の念を忘れ、怖いもの知らずになり、物質的豊かさが本当の豊かさのように勘違いし、好き勝手してきたことの結果、世の中が乱れてしまったのではないか？

　「目に見えて下って行くこの国の波動。一人ひとりの霊性を高めることが、日本人全体の霊性を高めることになり、霊性の高い政治家を世に送り出すことが出来るのではないか」など、これからの自分の生きかたへの示唆として、深く受け止めました

　それにしても、作家であるということは、何とすごいことでしょう。

[7] mixiユーザー 02月26日 10:20

『綾子･大雪に抱かれて』　　北海道新聞社（1999年）857円＋税
　『生きることゆるすこと』－三浦綾子･新文学アルバム　
北海道新聞社（2007年）1800円＋税
　
　図書館で見つけました。二冊とも、三浦綾子の歩み、人と文学などについて写真満載で紹介されており、数々の作品が生まれた背景なども知ることが出来て、とても嬉しかったです。

　作品の舞台になった場所の写真なども興味深かったですが、綾子さんの若い頃から晩年に至るまでの、その時々の写真、特にご夫婦一緒の仲睦まじい写真がとても多いことに、暖かい気持ちにさせられました。

　右の写真は、『綾子・大雪に抱かれて』の裏表紙にある、三浦記念文学館です。雪の結晶をイメージして六角形になっているということです。

[8] mixiユーザー 03月10日 19:36

　『松居直自伝』－シリーズ松居直の世界?　松居直･著
　　　　　　　　　　　　　ミネルヴァ書房（2012年1月）1800円＋税

松居直さんは、児童書の出版社「福音舘」の代表（現在は相談役）として、戦後の出版界を牽引されてきた方です。月刊誌『母の友』や月刊絵本『こどものとも』などを創刊。『セロひきのゴーシュ』『ぐりとぐら』『だいくとおにろく』などのお馴染みの絵本もたくさん生まれました。

　京都市生まれで、幼いころから本に親しみ、大変な読書家であられたこと。戦後すぐに入学した同志社大学時代には、同期に牧師の村山三兄弟や土井たか子さんなどがいらっしゃいます。

　福音舘は、もとは金沢市の小売書店でした。そこに就職されてから、今に至るまでの様々な経営の苦労や、作品が生まれた背景、綺羅星のごとき作家達との交流なども描かれていて、興味深かったです。

著者は<「国語」ではなく「日本語」教育を>と書かれています。
　「今の国語教育は国際意識を閉め出そうとするばかりか、言葉の意味だけを教えようとして、民族の感性を養ってきた「にほんご」の力を忘れてしまっている。でもそこに豊かな広い気もちがなかったら、それは本当に空っぽの箱にすぎません。
　子どもに絵本を読む時に気もちをこめて読めば、わかってもわからなくても子どもはちゃんと心を開いて聞くでしょう。子どもの言葉を豊かにするのはまずは意味がわかることではなく、言葉の中に含まれている気もちや文化なのです。」

[9] mixiユーザー 03月10日 19:45

子守唄 ― 『松居直自伝』より

『松居直自伝』の〔はじめに―よみがえった子守唄〕の中に、このようなことが書かれていて、心に残りました。
　“子守唄は、歌ってもらっている当の子どもには意味はわからないが、それにもかかわらず、子どもたちは本当に子守唄に惹かれる。子守唄は歌う人の気持ちをちゃんと伝え、子どもの気持ちを包むような何かがある。言葉や音や調べのほか、とりわけ声には気もちがこもる。そういうものを耳にすることが、言葉というものを体験する中でとても大切だと考えるようになった。”（中略）

そして、「絵本は大人が子どもに読むもの」とあります。
　“言葉は目には見えません。でも聞くことはだれにでもできます。子どもは字が読めないからこそ、絵本を読んでもらう時には耳からの言葉に集中するのです。
　そして、絵本は読むものです。子どもは絵を言葉として、隅から隅まで読みます。絵本を読んでもらっている時こそ、子どもは目と耳から入ってくる「絵本の世界」の言葉を感性豊かに楽しむことができるのです。
　子どもにひとりで読ませては、絵本の言葉を文字で読んでしまいます。それでは、耳から入る言葉と、目から入る絵の「言葉」を同時に楽しむことができません。
　そうした考えから、私は、絵本は子どもに読ませる本ではないと思っています。まず大人が子どもに読み語る本です。”

[10] mixiユーザー 03月25日 13:32

｢舟を編む」　三浦しをん著　　光文社

ブチさんに三浦しをんを教えていただいて以来、とりこになって、新刊が出るのが楽しみな作家です。若い作家ですので、こちらの感性との当たり外れもありますが、これは面白かった。
言海･新明解･広辞苑など・・・をイメージしながら読みました。

辞書を作る編集部の奮闘物語です。個性豊かな人物が登場します。辞書の製作過程が丹念に、面白く書かれていて、読み終わったあと、早速広辞苑などを手に取りました。
編集者達が、常に目新しい言葉や使い方に感性を研ぎ澄ましていることも面白く、私の好きな、アナログ人間、職人芸の世界でした。
製紙会社も新しい辞書を作るたびに、より薄く、しかも裏写りしない紙をと、用紙の開発までしているんですね。

日本語を大切にしようと、読んだ瞬間は、思いました。

[11] mixiユーザー 04月12日 19:20

『絵本のよろこび』　松居直･著　　ＮＨＫ出版（2003年）1600円＋税

　
筆者は、1926年京都生まれ。同志社大学卒業後、福音舘書店の創業に参画。1956年、月刊物語絵本「こどものとも」を創刊し、多くの絵本作家を世に出す。また、絵本も執筆。著書も多数ある。（表紙裏・著者プロフィールより）

第1章<絵本とはなにか>では、まずこう書かれています。
<絵本とは、言葉の湧きでてくる世界です。絵本は子どもに生きている歓びを感じさせ、生きる力を与えます。同時に大人をも生きからせてくれる言葉の泉です。>
そして、こどもの成長にとって絵本はどういう意味をもっているのか、子どもと絵本の橋渡しをする読み手の大人と、聴き手の子ども双方にとって、絵本がどういう働きかけをし、どういう意味をもつかなど、数々の日本の絵本、外国の絵本を例にあげながら、さまざまなな角度から絵本について語られています。
　

第３章<絵が語る物語世界>では、「『おおかみと七匹のこやぎ』の秘密」、「『ねむりひめ』を読みとく」など、実際の絵本を手にして照らし合わせながら読むことで、新たな発見があり、より深く絵本の世界を味わうことができたようで、嬉しかったです。

[13] mixiユーザー 04月29日 10:06

『絵本はともだち』　中村柾子･著　　福音舘書店（1997年）1700円＋税

　著者は1944年生まれ。十年間にわたって幼稚園に勤務。その後保母として保育園で仕事をつづけ、現在は私立豊川保育園園長をされています。

　絵本の紹介の本は、たくさん出ていますが、この本は、長年保育に携わってこられた著者だからこその内容で、絵本を読んでもらった子どもたちの反応が、生きいきと紹介されていて、それがとてもいいと思いました。
　
　同じ本を読み聞かせても、子どもの年齢によって感じ方がちがうこと、大人も子どもたちの目線に立つことで、気づくことがいっぱいあることなど、読んでいて、いろいろな発見がありました。

小さいお子さんやお孫さんに絵本を選ぶときの参考に、是非お薦めしたい本です。
　巻末に年齢別に、０歳～６歳までの（あくまで、おおよそのめやすとして）、おすすめの100冊の絵本のブックリストが載っています.

[14] mixiユーザー 06月09日 19:34

　『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』　末盛千枝子･著
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　現代企画室（2010年）2000円＋税
　

《著者プロフィール》
1941年東京生まれ。父は彫刻家・舟越保武氏。慶應義塾大学卒業後、絵本の出版社に入社。1988年、すえもりブックスを設立。以後、まど・みちおの詩を、皇后美智子様が選･英訳された、『どうぶつたち・THA ANIMALS』と『ふしぎなポケット・THA MAGIC POCKET』、1998年には、ニューデリーでの皇后美智子様のご講演をまとめた『橋を架ける・子供時代の読書の思い出』の他、国内外の絵本を出版。独自の価値観による出版を続けている。

本書は、2008年に、東京･代官山のヒルサイドテラスで一年間にわたって開催された、末盛千枝子さんのセミナーの記録を改稿し、出版されたものです。

　実際の講演は聴くことが出来なかったのですが、毎回、各テーマに添った絵本の紹介をとおして、各国の編集者や絵本作家との出会いなども知ることが出来、また、著者の子ども時代のエピソードなども交えながらのお話しは、とても楽しく、興味深いものでした。

　結婚後、６歳と８歳の息子さんを残して、ご主人が突然亡くなられましたが、その後も前向きに美しい本の出版に尽力されてきたことなど、深く感銘を受けました。

[15] mixiユーザー 12月28日 15:18

　『１Q８４』 BOOK 1～３　　村上春樹・作　　新潮社

　話題のピークもおさまり、図書館でもほとんど待たずに借りることができました。長い本はなかなか読む時間がないのですが、かたつむりの歩みのように、少しずつ読んでいるうちに、ようやく読み終えました。今頃になって紹介するのもどうかと迷ったのですが、うれしくて、感想を書きたくなってしまいました。立派な紹介ではなくて、本当の私的な感想です。

1Q84という世界に紛れ込んでしまった青豆と天吾。それに絡むさまざまな登場人物。想像できない展開に、２巻目の終りにはてっきり、青豆があちらの世界に行ってしまったものと思ってしまいましたが、３巻目で生きていることがわかったときは、嬉しかったです。
　児童書のファンタジーなら“行きて帰りし”で、主人公が冒険や試練を経て、成長を遂げて、またもとの世界に戻ってくるのですが、この本ははたしてどうなのかなあと思いながら読んでいましたが、心を打つハッピーエンドが待っていて本当によかったです。

　天吾が本の朗読をして聞かせるというかたちで、いろいろな本からの引用が挿まれていたり、“ふかえり”が、「平家物語」を暗唱する場面もありましたが、こんな引用のかたちもあるのかと新鮮に感じました。
　また、政治・事件など、当時のさまざまな出来事も浮かび上がり、宗教集団「さきがけ」についての描き方は、実に複雑で混沌としていて、簡単に答が出せ、割り切れるものではなく、読者に、物事について深く問いかけ、考えることをうながしてくれているようにも感じました。

　誰からも愛されずに来た。けれど、一人で強く生きようとしてきた青豆と天吾。試練をくぐり抜けてやっと出会えた愛。
この本を、何もいいことがなく悩みのうちに生きて、自分を模索している若い人たちに、是非読んでほしいと思いました。　

[16] mixiユーザー 02月10日 10:44

>>[5]
涅槃の雪、読みました。
私も、鳥居耀蔵が明治を見たことに驚きました。
読み進むにつれ、鳥居さんの冷静な知性に惹かれていきますね。
天保の改革をこんな風に描くのかと、暗記ものの歴史ではない面白さでした。

[17] mixiユーザー 02月10日 10:56

「欅（けやき）しぐれ」山本一力

ぐいぐい引き込まれて、あっという間に読み終わりました。
あるきっかけから、深川の老舗大店･桔梗屋の主と、貸元（とは渡世人らしい）の男との、身分を越えた付き合いがはじまります。時代物らしい設定です。男同士の美しい友情の予感です、(笑）
そんななか、桔梗屋に乗っ取りの手が伸びてきます。しかも、桔梗屋の主は病で死んでしまいます。後を頼まれた貸元の男は、知力と死力を尽くして、乗っ取り屋との戦いに挑む・・・そんな物語です。

そのあと、同じく山本一力さん｢はぐれ牡丹｣を読みました。
スケールの大きなかたり(詐欺）を計画する悪党に、向こう見ずなおてんば娘が立ち向かうストーリーで欅しぐれと、やや似かよった物語です。
欅しぐれを読んだ後では、人物描写や構成が荒っぽくて、物足りなかったです。

[18] mixiユーザー 02月11日 09:56

『小説田中絹代』　新藤兼人･著　　読売新聞社（昭和58年第１刷）

　昨年ご紹介した、新藤兼人監督の著書『いのちのレッスン』で、『小説田中絹代』のことを知り、是非読んでみたいと思いました。

　

映画名シナリオライターでもある著者によって書かれた本書に引き込まれて、最後まで面白く読ませていただきました。
　田中絹代の生い立ち、女優としてかけ出しの頃から、長い女優生活、絹代の家族についてなどが書かれていますが、同時に、無声映画からトーキー、映画全盛の時代を経て衰退へと、映画の歴史そのものを知ることが出来て、興味深かったです。

　初めて出演することが出来た映画は時代劇でしたが、なんとチン（犬）の腰元の役だったこと。溝口監督との出会い、若さを失っていく自分と向き合うこと。そして、最後の映画である『サンダカン八番娼舘･望郷』の老婆役では、老醜をあえて晒した体当たりの演技で、ベルリン映画祭の女優演技賞などを獲得しました。
　人間は完全でない。欠点もいっぱいかかえた人間の懸命な生き様に共感をおぼえ、読後熱いものが心に残りました。

[19] mixiユーザー 02月13日 19:45

『女の旅』― 幕末維新から明治期の１１人
　　　　　　　　　　　　　山本志乃･著　　中公新書（2012年）780円＋税

女が一人で旅することが難しかった時代に、力強く立ち向かった女性たちがいた。

　「旅」という視点からとらえた、１１人の女性の生き様が描かれていて、思いのほかたくさんの発見があり、とても新鮮な気持ちにさせられる本でした。

　この本で初めて知った女性も多くありました。第１章で取り上げられた、“田上菊舎”は、江戸時代の後期の俳人ですが、40年余りの長い年月を、しかも一人で旅に暮した女性は、現代に至るまで他にいないからということで、あえて取り上げられています。

　第６章の“花子”は、逆境で生き、ヨーロッパに渡り、約20年にわたって欧米18カ国を、一座を率いて巡業した旅芸人です。140センチ足らずの小さな身体で、精一杯舞台狭しと駆け回る花子に熱い声援が送られたということです。
　また、ロダンのモデルにもなり、彼の残した花子の作品は、58点にものぼるといいます。第一次世界大戦中は、舞台を続けることは難しく、ロンドンに料亭を開いて采配を振るいました。
　身一つで渡航してからおよそ20年。花子は、亡きロダンの彫刻二点を入手して、日本に大切に持ち帰ります。

他に、松尾多勢子、楢崎龍、岸田俊子、津田梅子、野中千代子、クーデンホーフ光子、河原操子、山野千枝子、イザベラ・バード（掲載順）

[20] mixiユーザー 03月12日 20:06

『ロダンと花子』 ― ヨーロッパを翔けた日本人女優の知られざる生涯
　　　　　　　　　　　　　　　　資延勲・著　文芸社（2005年）1700円

　少し前、この欄でご紹介した『女の旅』に、花子さんのことが書かれていて、とても心に残り、もっと詳しく知りたくなりました。

　花子の本名は、太田ひさ。慶応４年（明治元年）に生まれ、幼い頃養女に出されますが、家が破産し、旅芸人の一座に引き渡され、各地を転々とすることになります。
　その後も紆余曲折を経た後、コペンハーゲン動物園の見世物興業の踊り子募集を知り、出演するために横浜港を出港。興業後、日本に帰らず、寄せ集めの演芸団に参加してヨーロッパを巡業するうちに見い出されて、「花子」と名乗り、花子一座を率いて巡業します。
　花子の舞台を見て心を動かされたロダンが、楽屋を訪ね、モデルを依頼します。
　ロダンは、花子をモデルにした58点もの「ハナコの顔」を作りつづけます。

　旅役者花子の芝居はヨーロッパ各国の演劇界の人達からも高い評価を得ながら、日本国内では無視されたり、国辱とけなされたりします。

著者・資延（すけのぶ）勲さんは、文中でこう書かれています。
「波乱万丈の人生を生き抜いた明治女の勇気ある輝くような力強い生涯に、深い感慨をおぼえずにはいられません。私が花子さんの生涯を本にして残す動機は、そこにありました。」
　生きる力をもらえた一冊でした。

[21] mixiユーザー 04月15日 09:08

『哀愁のプリマドンナ』ジェニー・リンド物語
　　　　　　　　　　　　　森重ツル子・著　　教文館（2009年）1400円

　ジェニー・リンドは、1820年・スウェーデンに生まれ、のちに国民的スター歌手となった人です。
　めぐまれない境遇に生まれましたが、9歳の時、歌の才能を認められ、ドイツ・デンマーク・イギリスなどヨーロッパ各地でも活躍します。“スウェーデンのナイチンゲール”と呼ばれ、彼女の清らかな歌声と品性に、多くの人が心を打たれ、感銘を受けたといいます。

　アンデルセンのジェニーへの恋と失恋、ジェニーとメンデルスゾーンとの恋についても書かれています。
　メンデルスゾーンの早すぎる死により、ジェーンは深い心の痛手を負います。

　ジェニーは、28歳という若さで人気絶頂のさなかにオペラ界を去ります。静まって聖書を読む時間を取れないことが、引退の理由だったといいます。
31歳の時、良き伴侶を得て結婚。三人の子ども達に恵まれます。

　富や名声よりも、神への信仰を大切に生き、各地で慈善コンサートも開きました。フローレンス・ナイチンゲール支援のためのコンサートにも出演しています。
ジェニー・リンド小児病院などの設立、「アンクルトムの小屋」の作者であるストウ婦人との交流についても触れられています。

『メンデルスゾーンとアンデルセン』という本（児童書・中野京子/著　さ・え・ら書房）も出版されています。
　ジェニー・リンド・メンデルスゾーン・アンデルセンの３人の交流について、より詳しく書かれています。ただ、表紙については、メンデルスゾーン１人がクローズアップされているようで、本の主題を想像させる表紙とは言い難い。伊勢英子さんあたりなら、もっと違う表紙になっただろうなあ。

[22] mixiユーザー 05月11日 20:39

　『母』　石牟礼道子・米良美一／著
　　　　　　　　　藤原書店（2011年）1500円

図書館に行くと、母の日にちなんだコーナーが出来ていました。そこで目にした本です。作家・石牟礼道子さんと歌手・米良美一さんという、異色の組み合わせで、題名は『母』。どんな内容だろう？と借りて帰りました。

　お二人の出会いのきっかけは、藤原書店・刊行の石牟礼道子詩文コレクション・７巻『母』の解説を米良美一さんが書かれたことでした。本書も『母』という題名ですが、別の本です。
　お二人とも生まれは九州。石牟礼さんは熊本県天草郡、米良さんは宮崎県西都市生まれです。「母」と「故郷」がお二人を結ぶキーワードです。

第Ⅰ章<母の面影>では、初めて石牟礼さんの文章に触れ、とても引き付けられました。米良さんが解説を引き受けられるに至った経緯も書かれています。
　

第Ⅱ章〈共鳴 ― 風土、食べ物そして母〉は、お二人の対談になっています。
　石牟礼さんのご自宅で、郷土料理を召し上がりながらの対談は、お二人それぞれが育まれた風土の歴史にまで及び、観光で訪れただけでは知ることの出来ない九州に初めて気づくきっかけをいただけたようで、そのことが大変嬉しくありがたかったです。

　対談では、米良さんは終始宮崎弁でお話されています。素顔の米良さんを発見出来たようでした。
　「子供のころから神楽をみて育った。神主さんに憧れてなりたかった。日常で神主さんに合えるのは、お葬式など。祭祀を上げたりするのをみるのが大好きで、葬式というと走っていって見ていた。人間が亡くなったときのセレモニーが、私にはものすごく神聖で清らかにみえた。」とお話しされています。やはり、ただものではありません。

　石牟礼さんはこうおっしゃっています。
　「私の本は藤原さんが一生懸命作ってくださるんですけど、売れんだろうなと思って･････。私には水俣のイメージがひっついておりますから。まさしく水俣に生きているわけですけれど。･････共感はしていただくんですけど、水俣のことを考えるのはおっくうだという気持ちがおありになると思うんです。」
　私もまさしく、そんな一人だったと気づかされました。そして、このような嬉しいきっかけをいただき、是非、石牟礼さんの著書をよんでみたいと思いました。

[23] mixiユーザー 05月21日 12:47

弥勒の月　　あさのあつこ　光文社

あさのあつこさんは、児童文学の作家との印象が強いのですが、図書館で偶然に借りたこの本が面白くて、次が待ち遠しい物語です。
有名なバッテリーなどの話題作も読んだことがなくて、予備知識なしで取り掛かった本です。
すでに4巻出ています。
最初がこの｢弥勒の月｣、そして、夜叉桜、木練柿、東雲の途と、4作です。

１冊ごとに完結ですが、このお話は順番に読まないといけません。
巻を追って主人公達(ほぼ三人）のキャラクターが少しづつ解き明かされていく、その過程がまた楽しみです。

[24] mixiユーザー 05月21日 13:21

時代小説　料理人季蔵捕物控シリーズ
　　その１｢雛の鮨」　　角川春樹事務所

元気さんに教えていただいた本です。
美味しい料理と捕り物の二重奏で楽しめます。
時代物の定番と言えばそうなんですが、その分、安心して読めます。時代小説ファンのツボを知っていますね。
「煎り酒」という優れものの調味料が登場します。
ここぞと言う味つけに、これがでてきてきりっと引き締める！
江戸時代には、よく使われていた調味料だそうですが、いまでは、よほどの料理屋さん辺りしか使わないとか。そういった情報も、面白いです。
この巻では、さらに長次郎柿という「熟柿」が本当においしそうで、晩秋がいまから待ち遠しいこと。

[25] mixiユーザー 05月25日 21:01

　『木喰』　立松和平・著　　小学館（2002年）

木喰は江戸時代に生まれ、22歳で出家し、61歳で仏像造りを始めました。そして20年以上をかけて日本中を回り、行く先々に仏像を残しました。本書は、木喰上人の身体にたかって一緒に旅をする、のみとしらみが語り手となっています。殺生戒をしている木喰を語るのに、これ以上相応しい語り手はないのではないでしょうか。

最後の章〈おしろい地蔵〉では、佐渡―相川をおとずれた木喰が、女郎たちのために地蔵を彫ります。
　「お前たち、地蔵菩薩どのにご供養してくれませんかのお。できるだけ多くのものから、おしろいを集めてほしいんじゃが。地蔵菩薩を喜ばせてやってくだされ」
　真言を唱えつつ、お上人は地蔵菩薩に水おしろいを塗るのだった。微笑した顔には特にていねいに塗った。こうしておけば、女たちは悲しい時苦しい時に地蔵菩薩におしろいを塗って願をかけるだろう。

　橋本徹氏の、旧日本軍の慰安婦や風俗業をめぐる発言が、大きな問題となっている中、なぜか、以前に読んだこの本のことが思い出されてなりません。嬉しい時にはともに喜び、つらい時はともに苦しむ。そういった人と人とのつながりがなかったとしたら、どんなに殺伐とした世の中になることでしょう。

写真はインターネットからのものです。像の後ろにある大きなくぼみがあります。雪の日に子供達がこれをソリ替わりにして遊んだといいます。長い間子供達と遊んで、顔がすりへってしまいました。人々の喜び苦しみも一身に受けてきた仏たちの姿が、ここにもありました。

[26] mixiユーザー 06月04日 08:59

　『神さまに用いられた人三浦綾子』　宮嶋裕子・著
　　　　　　　　　　　　　　　　　　教文館（2007年）1200円

宮嶋裕子さんについては、先だって『三浦家の居間で』でもご紹介しましたが、三浦綾子さんの初代秘書となられた方で、結婚のため退職。２代目秘書が亡くなり、再び秘書になられ、今日に至っています。
　本書は新聞で紹介されていて、図書館にもなかったので新刊と思ってリクエストしたのですが、届いてみると、初版は2007年とありました。

　私はキリスト教の信者ではないのですが、三浦綾子さんの著書を読むと、信仰の違いはあっても、人として歩まなければならない正しい道は一つであると感じ、いつも励まされ、後押ししてもらえるような気がするのです。

貧しい家に生まれ、苦労して自分の道を切り開こうとしてこられた裕子さんと、三浦夫妻との縁。身近で三浦夫妻と接し、ともに歩んでこられた筆者が語る、綾子さん、光世さんの人物像、作品が書かれた背景などにも感銘を受けました。

　戦時中小学校教師をされていた綾子さんは、軍国主義教育の教育現場に立ったことの痛みを、終生忘れることがなかったといいます。真の平和への願いと祈りが込められた『銃口』は、舞台でも上演されており、韓国公演でのエピソードも書かれています。

　『銃口』は、綾子さんの最後の作品となりました。病を押して、渾身で平和への願いを込めて書かれたというこの作品を、是非読んでみたいと思いました。

[27] mixiユーザー 06月15日 19:25

『めぐり逢った作家たち』　伊吹和子・著
　　　　　　　　　　　　　　平凡社（2009年）1800円
　
　図書館で見つけて手に取ってみると、表紙には錚々たる作家の名前が並んでいます。最初は私などに全部は読めないかも、と思いながら借りて帰りましたが、読み進めていくうちに引き込まれていきました。

著者は、1929年京都生まれの方です。京都大学文学部国語学国文学研究室勤務を経て1953年、谷崎潤一郎『新譯源氏物語』の口述筆記を担当、引き続き中央公論社に入社。定年退職まで、多くの作家を担当されましたが、本書では谷崎潤一郎、川端康成、井上靖、司馬遼太郎、有吉佐和子、水上勉の6人について書かれています。
　超一流の作家を担当されてきた編集者である著者もまた、超一流ですごい方だと感じましたが、切れ者という感じではなく、あたたかく優しいお人柄が文章全体からにじみ出ているようでした。

　作家が作品を生み出すことの大変さを、つぶさに見て来られた著者は、ご自分で本を書くことなど、当時は思ってもみなかったということですが、のちに『われよりほかに谷崎潤一郎最後の十二年』を著され、この作品で第42回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞されています。他に『川端康成瞳の伝説』などがあります。

終始途切れることなく通奏低音のようにある、著者の優しさ、あたたかさに惹かれ、導かれるようにして最後まで読み終えることができました。
作家たちの取材旅行への同行、文中の京ことばの考証にかかわられたことなど、いろいろ興味深かったですが、この本に出合えて一番よかったことは、作家はもちろんですが、伊吹さんのお仕事をとおして、真摯に生きることの尊さに気づかせてもらえたことです。　

[28] mixiユーザー 06月17日 20:53

　『八重と新島襄』　保坂正康・著
　　　　　　　　　　毎日新聞社（2012年）1500円

　先日、同志社大学のハリス理化学館で催されていた、新島八重と会津関連の展示会の展示会に行き、そこで本を二冊購入しました。その一冊がこの本です。
　著者は1939年生まれ。同志社大学文学部卒。ノンフィクション作家・評論家。

八重と新島襄の生涯について、詳しく知りたいと思っていたことが、いろいろ書かれていて、図書館で借りた本もたくさんあったのですが、ほっぽり出して読みふけりました。昨日やっと読み終えたのですが、おしまいに書かれていた八重の命日が、６月14日で、今日・17日が同志社葬が行われた日だということで、驚きました。
　
　会津戊辰戦争については、第１章〈山本八重の会津戊辰戦争〉に詳しく書かれています。
　明治元年9月22日、ついに降伏。この時の無念さを詠んだ和歌があります。
　　あすの夜はいづくの誰かながむらん　なれしみそらにのこす月かげ

　第２章〈脱国者・新島七五三太〉では、襄が、幕末の留学生の系譜の中で、独自の道を歩むことを自らもはっきりと自覚し、そして実際にその道を歩んだ数少ない人物であることがわかります。
　外交官、岩倉使節団の岩倉具視など、多くの人物から、日本に帰って要職に就くよう促されたが、断っています。官（国家）が求める人間像とはまったく別の人間像を養成しようと考えたのは、この政府の奴隷になりたくない」という反骨が起点になっていると考えるべきだ、と書かれています。
　

八重と襄は、対等に話が出来、互いによく理解し支えあう関係だったことが伺えます。
　新島襄亡きあとは、日清・日露戦争で従軍看護婦を務め、皇族以外で初めて女性で叙勲を受けています。一方で茶道を嗜み、茶道のどのような精神が、八重をしてその後の人生の柱となすべき因となったのかを、推測されています

[29] mixiユーザー 06月30日 19:43

　『新島八重子回想録』　　（2012年9月）730円　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　編集・同志社社史資料センター　
　　　　　　　　発行者・同志社大学出版部　販売者・同志社エンタープライズ

本書の原稿は、1928（昭和3）年に同志社大学の学生であった永澤嘉巳男氏が、当時84歳であった八重のもとを訪れ、八重の生の言葉をまとめて、『同志社新聞』に連載されたものです。それを永澤氏が45年を経て1873（昭和48）年に書籍にまとめられたものが、2012年に復刻版として発行されました。
　内容は、八重と新島の出会い、結婚、夫婦生活、さまざまなエピソードなどで構成されています。写真も数多く掲載されていますし、回想録に登場する人物についての詳しい解説も挿まれています。

テレビの大河ドラマ『八重の桜』をきっかけに、八重と新島襄と会津関連の展示会に行く機会があったり、そこで本書と、前回にご紹介した『八重と新島襄』の２冊の本を購入して読むことが出来ました。
　今は、書店でも八重と新島襄関連の書籍のコーナーが出来、様々な本が並んでいますが、以前は、詳しいことを知りたくても本もなかなか見つかりませんでした。新島襄がどんな願いを持って大学を創ろうとしたか、そこでどのような人間を育て、世に送り出そうとしたかを、本を読むことで真実納得出来、うれしく思っています。

もう一つ、私が強く惹かれ、知りたいと思ったことは、八重の時代に生きた会津の名もない人たちのことです。本を通して、少しでもそれに触れることが出来たことをうれしく思います。
　『八重と新島襄』（保坂正康・著）の中に、会津藩主・松平容保を祖父に持つ、秩父宮妃勢津子様のことが出てきました。その御著書『銀のボンボニエール』に、会津関連のことが書かれているということで、さっそく図書館で借りて読んでいるところです。是非ご紹介したいと思っています。
　　　　　　　　

[31] mixiユーザー 07月13日 10:08

　『銀のボンボニエール』　秩父宮妃勢津子／著
　　　　　　　　　　　　　主婦の友社（平成３年６月）2000円

皇室の方が書かれた自伝・回想録は初めてでした。きっかけは、先日ご紹介した『八重と新島襄』の中で、会津藩の松平容保公を祖父にもつ秩父宮妃節子様とその御著書ついて書かれていたことでした。会津のことをもっと知りたい、という思いもあって読んでみようと思いました。

　幼年時代から少女時代、アメリカでの青春時代と、著者の喜怒哀楽が率直に語られ、生き生きした生身の人間像が浮かび上がってきて、とても惹きつけられました。
　勢津子様のお父様（松平容保の6男松平恒雄）は、華族の籍を賜ろうとしたとき、旧会津藩士であるために出世の道を阻まれている人々に相すまぬとのお考えから、弟の保男様にご家督も爵位も譲られ、一平民として外交官の道を選ばれました。会津藩出身であるため、国内での就職が厳しかったと書かれています。
　
　勢津子様兄妹の養育係となった、高橋たかさんという女性のことが、たびたび出てきます。旧会津藩士の家に生まれ、漢文、国語、礼法、裁縫を学び、日露戦争のときは従軍看護婦として、また戦争後は小学校教師としても務めたという経歴の持ち主です。見るからに素朴で無骨なおばさんタイプで、顔もいかついが、実の子以上ともいえるほど愛情を注いでくれ、叱るときも容赦はなかった、とあります。文中では、このたかさんのさまざまなエピソードが生きいきと語られています。

　さて、第５章「嫁ぐ日まで」には、19歳の時、たってと望まれ、「バスタオルが涙でぐちゃぐちゃになる」ほど一晩中泣き明かされ、皇室に入る決心をされたこと。「会津魂」が支えてくれたことなどが書かれていて、感銘を受けました。

ご結婚されてからは、多忙な秩父宮さまを支え、喜びも苦労もともにされる日々が続きます。
　当時の宮さまは、ご公務とともに陸軍大学の勉強、軍事訓練などで多忙をきわめ、ご体調の悪い時も、それを押してつとめられていたということです。「自分はめぐまれているのだから、頑張らなくては申し訳ない」と、厳しい訓練も先頭に立って実践されていたとあります。
　宮さまは、登山、スポーツなどご趣味も多く、スポーツはボクシング以外なら何でもOKでした。

　また、宮さまは、御殿場での結核の長いご闘病生活の中で、戦時中でもあり、野菜を作ったり、緬羊や山羊、豚を飼い、いろいろ創意工夫もされ、近所の人たちから「宮さまの農事試験場」と言われたことなど、すべてに前向きで、せいいっぱい出来ることをされていたことが伺え、感銘を受けました。

本書と出会い、多くの発見がありました。戦時中の皇族の方々が、どのような思いを持ってどんな暮らしをされていたか、その一端を知ることができたことも、その一つです。

　インターネットの書き込みには、「秩父宮妃として入内する前の話が長すぎる」というようなものもありましたが、私はむしろ、こちらの方が興味深かったです。
　皇室に入られてからの勢津子様を支えたものは、それまでの全人生であり、その生い立ちを知らなくては、全体の人間像が見えてこないのではないでしょうか。
　
　皇族であれ平民であれ、与えられた境遇の中で精一杯生きる、皆一人の人間なのだと思います。

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