酒人好乃衆コミュの日本酒コラム「夏にはぬるめの燗がいい」

残暑お見舞い申し上げます。
暦の上では立秋（８月７日）を過ぎ、もう秋ということになっておりますが、
実感的にはいよいよ夏本番という感じです。
今年の盆休みは世界的な不景気のせいなのか、旅行を控えて自宅で過ごす方や、
実家に帰省する方が増えると予想されています。実家への帰省といえば、
何年か前のクレジットカードのコマーシャルで、お父さんへのお土産で
地酒を買っていくというシーンが出ていたのが思い出されます。

さて、暑い時期になるとつい冷たいものが喉にうれしいので、日本酒も冷酒
に手が伸びるのですが、実はかなりぬるめの燗酒がおいしく飲める時期でも
あります。汗をたくさんかいたときに冷たいお酒を飲むと胃への刺激が強す
ぎるのです。冬だとぬるすぎると思えるくらいのぬる燗を試してみてはいか
がでしょうか。

さらに発展させると３割程度水を加えてから燗にするという方法もありま
す。これも根拠のないことではなく、江戸時代に飲まれていたお酒は、この
程度の強さが多かったと推定されるからです。というのも江戸時代に行われ
ていた酒合戦（団体戦でどちらのチームが酒をたくさん飲めるかを競うも
の）の記録を見ると一人で10升以上飲んでいる方がざらにいるのです。いく
らお酒に強くても今のアルコール分が１５度もある日本酒を10升も飲んでは
普通ではいられません。

当時は、問屋や酒屋が自分で酒を調合したり割り水したりしていたので、落
語に出てくる金魚酒程度の薄い酒が主に飲まれていたのではないでしょう
か。そんな時代に想いを馳せて、団扇片手に風流にぬる燗をとろとろと飲む
のはいかがでしょう。なるべくクーラーも使わずにエコな生活を目指すと
き、そこに似合うお酒は断然日本酒の冷や（常温のこと）か、ぬる燗だと思
いませんか。
（日本酒で乾杯推進会議運営委員/酒文化研究所代表　狩野卓也）