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2008年08月15日23:51

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陛下より賜りし歩兵銃。

本日は終戦記念日。
我が家も父方、母方ともに、戦没者がいるので、敬意を込めて黙祷。
ケンタは久しぶりに檀家たちを前に法話を展開。
ミスラ君は寺男の木村さんとともに参拝客たちと応対。
よしこさんは木村さんの奥さんと一緒にお茶くみ。
そして、私は、老人ホームにて百歳近くになる檀家と対面。
戦時中は陸軍の輸送部隊にいて、物資運搬に従事していたとのこと。
私が中学生の時は頭がはっきりしていて、色々話を聞かせてくれたものだが、今は認知症で、一人では何も出来ない状態だ。
家族はさんざん手を焼いたらしく、面倒を見るのはおろか、面会にもこない。
それで、中学時代から親しくしている私が代わって面倒を見ているのである。
今日は珍しく、孫息子が見舞いに来ていた。
見ると、何ということか、三八式歩兵銃を持ってきている。
聞けば、タナカのモデルガンとのこと。

「ボケても、コレを持たせると、意識がハッキリするんだ。オレが誰だか分かるくらいにね」と孫息子。
「操作出来るのか?」と私。
「うん、こないだはしっかり構えてたよ」
で、目の前で実際に持たせると・・・
それまで儚げに宙をさまよっていた手が、急に筋張って、くわっと三八式を握り締め、ベッドの上でピシッと直立不動になった。

私は話に聞いていた。

陛下より賜りし歩兵銃・・・

自分の生命よりも大事にすることを徹底的に叩き込まれる。
ちょっとでも汚し、傷つけようものなら、上官の鉄拳、スリッパが飛ぶ。
個人は滅殺され、大日本帝国の一部として忠誠を誓わされる「印」。

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でも、そこまでしないと、戦場では役に立たないのだ。
こちらがしっかり撃たないと、身体のどこかに風穴が開くことになる・・・
戦場に出る以上は、歩兵銃にすべてを預けるのは当たり前だ。

ここまで生命ながらえて、なお、歩兵銃に反応する老人の姿。
私は喉から熱いかたまりが這い出てくるような感触を覚えた。

戦争を忌まわしい記憶として片付けるのは簡単である。
記憶が修正、捏造されたりするのもまた簡単。
過去の出来事は過去のものでしかない。

しかし。
現在でも、老人にとっては戦争はまだ終わっていないのだ。
つまり、リアルに第二次世界大戦はいまだ続行中なのである。
そういう事実を前に、私は今上陛下、福田首相がもったいぶって、平和への誓いを口にするのを苦々しく思ってしまう。

戦争はまだ終わっていないのに、なぜ、すべてが終わったかのようにふるまうのか?

私は老人の手に優しく触れた。
と、その瞬間、喉に銃口を強く押しつけられ、私は硬直してしまった。
「それ、オレもやられたよ。ほら、オレたち、ガタイがデケエじゃん。反射的にアメ公だと思っちゃうんだとさ。よかったよ、銃剣つけてなくて。つけてたら作り物とはいえ、グッサリだかんな」
笑う孫息子を見やり、私は静かに喉元から銃口を離した。
「こんなになってまで三八式を持たせて、戦争を思い出させようとするなんてと、世間様は非難するだろう」と私。「だが、オレは非難しねえ。じいちゃんは赤紙もらって出兵したんじゃなく、職業軍人だからな。軍人である以上は、ボケて死ぬより、戦って死ぬのが理想さ。だから、こうしてモデルガンとはいえ、三八式を持たせるおめえの機転には賛成するぜ。心からな・・・」

実際。
歩兵銃を握っている時の檀家は、意識がしっかりしていた。
孫息子だけじゃなく、私が誰か分かっていた。
その分かる自分自身に、檀家はにっこり微笑んでいた。
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