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2006年01月19日00:13

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「耽奇館主人の日記」自選其の十五

2003年10月05日(日)
インセクト・フェティシズムのこと。

私は昆虫が大好きである。
この夏も、いい年をして、セミの幼虫のぬけがらをいくつ集められるか熱中していた。
小学生の頃は百個以上集めたことがあり、教室の後ろのロッカーの上にずらりと並べて、個人のコレクションとして悦に入っていたものだ。
カブトムシ、クワガタ、アゲハチョウ、ガ、バッタ、トンボなどなど。
昆虫標本は私の少年時代の夏休みの定番の自由研究のテーマだった。
一体、昆虫の何がそんなに私を魅了するのかというと、いわゆる「変態」という変身ぶりがたまらないのである。
幼虫がさなぎになり、さなぎの中で、幼虫だった頃とは全く違う、別のものになるというところが。
ところで、私は爬虫類の生命力を自分のものにするために、蛇やトカゲをさんざん食べてきたが、昆虫も、その変身能力を自分のものにするためにかなり口の中に入れてきた。
一番最初に食べた昆虫は、よく覚えている。
幼稚園の時に、幼稚園の庭で土いじりをしていて、ヘビイチゴと一緒にカブトムシの幼虫を土くれと一緒に食べたのだ。
ヘビイチゴはその美味しそうな赤い色合いからは想像も出来ないくらい、ひどい不味さだったが、カブトムシの幼虫は味のしないミルクに浸したしらたきをゼラチンに包んで、プチュッと噛みしめるという、不思議な心地よい味わいがあった。
それ以来、幼虫には、食欲とある種のエロティシズムを感じるようになった。
例えば、ハチノコを手のひらに乗せた時。
皮膚の上でのたうち、蠢き回る、白くてつやつやしたそれは、ダイレクトに全裸の女を想像させる。
祖母は、戦時中は、食糧不足を乗り越えるために、自分や子供たちのために食べていい昆虫と食べてはいけない昆虫の図表を製作して、家の壁に貼っていたそうだが、食べてはいけない昆虫のトップに上がっていたのはハンミョウだった。猛毒なのだ。
その影響で、ハンミョウやカミキリムシは、私の中では欲望の対象にはなりえない、男性的なものになり、幼虫から成虫になる、完全変態の系列の昆虫は全て欲望の対象になりえる女性的なものになった。
そんな私の昆虫好きぶりを聞いた友人は、首だけ思いっきり後ろに引いてみせ、落ち着きを取り戻すと、好奇心を剥き出しにして質問してきた。
「人にすすめられる昆虫ってあるのかい?」
「んー、そうだね。さなぎの中身かな。蝶でも蛾でもいいんだけど、とにかくさなぎを見たら、これ幸いと中身を口の中に入れないと損するよ。それくらい…」
「うまいの?」
「いや、あんまり。不思議な感覚に浸れるんだ。ヤクをキメたみたいに」
「味はどんな感じ?」
「味がないミルクバターみたいな感じだね」
これはほんとうだ。どんな種類であっても、さなぎの中身は衛生的にも一番安全に食べられるのだ。そして、不思議な味わいに、きっとあなたは生命の神秘をまざまざと感じることが出来るだろう。
今日はここまで。
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