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2006年01月09日21:55

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「耽奇館主人の日記」自選其の五

2003年06月22日(日)
世田谷ドラッグパーティーのこと。

今日は三軒茶屋で昔からの映画仲間と会った。今はカメラなどの機材を後輩に譲って、ガーデニング店を経営して気ままな暮らしをしている。彼は撮影技術は確かなもので、私と同じくドイツのヴェルナー・ヘルツォーク監督の大ファンだ。今度私が何かをする時はいつでも呼んでくれと言われていたので、今回は挨拶として会ったわけである。
「久しぶり、頭剃っちゃったのか」
「うん、暑いもんでね」
「昔は腰まで伸ばしてたのに。髭も伸ばしてたよね。あまりにもキタナイからみんなしてラモスって呼んでたっけ」
「あれほど痩せてたわけじゃないのにな」
昔の二十代前半の私は、二年と半ほど、床屋に全く行かずに伸ばし放題にしていたことがある。着るものはベトナム戦争時の迷彩の軍服にぼろいジーパンのみという格好だった。ヒッピーそのものだった。その格好で建設途中の新宿都庁の現場に寝てて、警察に連れて行かれたことは思い出のひとつだが、一番の思い出は上馬の友人の家でドラッグパーティーを開いたことだった。私が口の中に入れたものは、大麻とかコカインとかそういうありふれたものではなく、薬屋から買ってきた風邪薬とか睡眠薬とかエチルアルコールとかそういうものばかりだった。「ドラッグストア・カウボーイ」という映画があり、薬屋を襲撃して手当たり次第薬をパクっては飲んでラリるという内容そのままを実行していたのだ。調達だけは合法的だったが。
薬というものは規定の量を超えると、劇薬とされる成分の量も多くなるわけで、比例的に身体に影響を与える。風邪薬は一箱全部飲んでみたが、アッパー系とも何ともつかぬ奇妙な昂揚感が続き、涙と鼻水と涎が止まらなかった。睡眠薬は飲み過ぎるとシャレにならないので、ブレンドという形で飲んだ。目薬や胃薬と一緒に飲むのだ。すると、急激に背中が寒くなり、内臓に鉛を注入されたような感覚に襲われ、憂鬱な気分がずっと続く。眠くなりつつ、目が冴えてしまうというのが断続的に発生し、そういう時に幻覚を見た。私が見たのは、友人たちの顔が細長くなったり、横に広がったり、丸く膨らんだりする光景だった。まるで果心居士の幻術だなと思ったものだ。
主催者の友人は大麻から覚醒剤まで何でも試したという男で、警察と刑務所には何度も世話になっている。そんな彼が合法的にトリップすることを考え続け、「ドラッグストア・カウボーイ」をきっかけに、こうしたドラッグパーティーを始めたというわけだった。これは大麻に似てるとか、あれは覚醒剤の幻覚そのものだとか色々説明してくれるので、私は全部一通り試してみた。一番強烈だったのは、風邪薬の錠剤をエチルアルコールで溶かしつつ、その液体を静脈に注射しながら、ペニスに塗り薬のヴェラポップを塗りたくって同じくヴェラポップまみれの女に挿入した時だった。そのまま死んでしまうんじゃないかというくらい多彩な刺激と興奮を味わった。気がつくと高笑いしながら外の道路のアスファルトの上にヴェラポップでゼリー状になった吐瀉物を激しく嘔吐していた。後で聞くと、女もゼリーのゲロを吐きながら、吉祥寺へ帰って行ったらしい。
「そんなこともあったな、所々記憶が飛んじゃってるけど」
「君は途中から参加したから、キンカンの太田胃酸割りしか味わえなかったけど、おれたちはこんなの飲んだら死ぬだろと思うものまで飲んだんだぜ」
「よく胃がもったなあ」
「回りはみんな胃潰瘍になっちまった。ならなかったのはおれだけ」
「君はほら、水族館に入るべき生き物だからさ、別に驚かないけど。おれは一回やってひどい下痢になったからそれ以来やめたけどね」
麻薬はダイレクトにトリップへと誘ってくれるというが、私たちは普通の薬を大量に摂取したり、色々な組み合わせで飲んだりして、ブレーキの全く効かない、コントロール不能のトリップへとジャンプした。まだ飲んでみたことがないというものも試したからだ。そういう意味ではバロウズが描く滑稽で奇々怪々なジャンキーと同レベルだった。
体験者の私が読者にすすめられるのは、おとなしい方では、頭痛薬のバファリンを10錠くらい生ビールかコーラで一気に飲み下すことだ。全身がふわふわしつつ、タイミングがあえば幻覚も見える。ハードな方では友人も試したキンカンを一瓶、太田胃酸を大さじで五杯くらい一緒に飲むというもの。涙、涎、嘔吐、下痢という形で体液を一気に噴射するという危険な快楽に襲われる。
こうしたドラッグの一番いいところは、麻薬のように溺れないというところだ。もしかすると、ひとつの経験として区切りがつけられる健康的なドラッグ体験と言えるのかもしれない。今日はここまで。
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