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2007年05月13日20:04

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母なるもののこと。

今日は母の日です。
皆様いかがお過ごしでしょうか?
私はほうれん草入りオムレツと浅野屋のレーズン入りパンを食べながら、亡き母の思い出に耽っておりました。
母が私に初めて読んでくれた本は何だったかな・・・
そうそう、確かババールだった・・・小象のサクセスストーリーのいかがわしさに、幼いながらも反発したんだっけ・・・でも、ピエロのココはなぜか好感が持てた・・・
とか。
ババールのココになぜ好感を持てたのかというと、多分、唯一、サクセスストーリーとは無縁の存在だったからでしょう。
母は私の反応で、私が出世欲とは無縁なのかもしれないと思ったフシがあったらしく、次には「三匹のこぶた」を読んでくれました。
今度は大いに喜んだらしく、その反応で昔あったおもちゃの、手回しスコープ(中に八ミリが内蔵されていて、ハンドルを回しながら覗くと、映像が再生されるというもの。逆回しも出来て、映像の逆再生も出来た)の「三匹のこぶた」は私が物心ついてからの初めてのクリスマスプレゼントになったものです。
思えば。
「三匹のこぶた」は生き抜くための知恵がメインで、私には至極必要なものとして受け入れられたのかもしれません。

・・・・・・

母は私が生まれた時、一緒に生まれるはずだった双子の「姉」が鬼胎となって私の中に吸収されたことで、私の頭の中には脳みそが二つあると本気で思っていたそうです。
当時。
昭和四十年代はサリドマイドによる異常出産が深刻な社会問題になっていたため、かの三島由紀夫も我が子が産まれた時、ちゃんと手足の指が五本ずつあるかどうかチェックしたように、母も私が二目と見られぬ恐ろしい奇形児となって生まれるのではないかという不安と恐怖に、元々たくましかった想像力をこれでもかと膨らませ続けていたようです。
幸い、難聴のみで無事に産まれてきましたが、母の異常なまでの想像力はそのまま受け継ぎました。
で。
たくましい想像力ゆえに、母は自分が社会不適応者だと思い込んでいて、私には同じ道を歩ませたくないと、ババールをチョイスしたのですが、蛙の子は蛙てえやつで、私も生まれた時からお化けだの妖怪だの、悪魔だのと思いっきり社会不適応者まっしぐらでした。
でも、母と全く異なる点がありました。
それは、立場。
母のそれは、あくまでも「憧れ」であった。自分がこうであればいいなという。
しかし、私は例えば、鬼太郎や猫目小僧を見ても、憧れることなく、ゲゲゲハウスを作って木の実や山菜を食べて暮らせばいいとか、誰かんちの屋根裏に棲みつけばいいとか、生活の手段を学んでいました。
これも生き抜くための知恵なんですよね。
周囲は母の子だからと、夢想家だと思っていましたけれど、意外と、私はどうやって生きていくか、そればっかり考えていたんです。その・・・文字通り、お化け、妖怪、悪魔として。

・・・・・・

立場の違いからか、母と私は長らく馬が合いませんでしたが、映画「エイリアン2」が公開されてから・・・
テレビでも頻繁に放映されるようになり・・・
シガニー・ウィーバー演じるリプリーが発見した女の子ニュートを初めて観た時、母は頭を雷に打たれたようなショックを受けたと言いました。
ニュートに私を見たと言うのです。
初めて、私が理解出来たと。
当時、突っ込んだ理由を説明してくれなかったので、私はただへーと受け流して、ニヤッと笑ったものですが。
後に、漫画家の六田登の「F」という作品の中で、母性愛を語る材料として、映画「エイリアン2」のニュートが引用されているのを読んで、これだったのかと母の真意を理解しました。
ニュートは襲い掛かる未曾有の恐怖に対処するために、人形を抱きかかえて逃げ回るのですが、あれは少女ゆえの子供っぽさではなく、「人形を我が子として守るために」、わざわざ人形を抱きかかえているのだと。
つまり、母の強さを自ら作り出して、生き抜いているのだと。
これまた生き抜くための知恵です・・・

・・・・・・

私は。
母に言わせると、男性的なものに憧れ続けた母自身と比べて、女性的なものに自ら飛び込んでたくましく生き延びている、母の強さそのものなのだそうです。
そこに、人間としての生命力の差があるとも言っていました。

男は常に場所を求めて生きる。だけど、女は自らのうちに場所を持っている。あんたは男の子だけれど、もう場所を持っているのね。父親にして母親そのものよ・・・

母なるもの。

・・・・・・

私が唯一憧れる母なるもの。
それはやっぱり、子供を産むことです。
ゲイとかが憧れるそれ(愛する人の子を産むこと自体)ではなく、生命を新たに産み出す神秘そのものです。
つまり、その体内において、神話を再現することそのもの。
私一人ではどう頑張っても出来ませんからね。


確か、アンブローズ・ビアスは「誕生」ついて、「数ある災難の中で、最初に訪れる最も恐ろしい災難である」と書いています。
だからこそ、産まれ出ること自体が、最も恐ろしいまでのエネルギーなんですよね。
そういう意味で、私は世の中の子を産むすべての「母」に尊敬と畏敬の念を抱きます。


我が母の思い出に。
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