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2007年05月09日05:35

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笑う新仏のこと。

昨晩、臨時メイドのサラさんとお化けの話に熱中してて、お互いの「新仏(新しく仏様になった人のこと、即ち死にたての人)」に関する体験談を語り合ったところで、これでもかというくらい盛り上がった。
こればっかりは、決して「気のせい」ではない、目の前で実際に起きたことである。
まず。
サラさんの体験談。
大町の梨園の主人が亡くなった時、収穫期の忙しい時期で家中梨だらけでお通夜の支度が出来ないから、お寺でやることになって、遺体を布団ごと本堂に運び込んであれやこれやと右往左往しているうちに。
まだ小学生だったサラさんは、主人の顔に被せた白い布がふわっふわっと浮かび上がるのを見たのだそうである。
それを見たサラさんは、(呼吸をしているから)まだ生きていると思い込んで、布を取って・・・
「人間の顔ってあんなに長くなるなんて夢にも思いませんでしたよ」とサラさん。
「大口開けてたのかい?」と私。
「ええ、目もこんなに伸びて、まるで・・・」
ここでサラさんは私の部屋に飾ってある鬼のお面をちらと見た。
「ちょうどあんな感じで笑ってるようでしたよ」
そして、住職の父と遺族のみんなで、一生懸命、目と口を閉じて、固まって動かなくなるまでみんなで押さえつけていたと。

私の体験談。
亀戸の檀家のおじいちゃんが亡くなった時、当時寄る年波で歩くのも辛かった祖父のつきそいで自宅へ伺って、お経を唱えてる祖父の横からおじいちゃんの様子を眺めているうちに、おなかが布団越しに震えているのが分かって、こりゃたまげた、まだ生きてるのかなと。
そしたら、出し抜けに、おじいちゃんの顔がこちらをガクッと向いて、口から舌をだらりと垂らしてね。
祖父以外のみんなはもう、大騒ぎ。
化けて出やがったとか誰かが叫んだのをはっきり覚えてるよ。
それからどうしたか。
祖父の指示で、私も手伝ったんだけど、舌を口ん中に押し込んで、やっぱり、顔と口、首を固めて、動かなくなるまで押さえつけてたね。

おまけとして、祖父の話。
東京大空襲で焼け野原になった街に戻って、真っ黒焦げになった死体や、半焦げ、生焼けの死体をリヤカーでお寺に運び込んで、荼毘にしていた時。
生焼けの死体がね、いきなり飛び起きて、カーッと叫んだって言うんだよ。
そのまま燃えてしまったそうだけど。

・・・・・・

察しのいい賢明な読者ならすでにお分かりのことだろう。
これらは怪奇現象でも何でもなく、新仏のおなかに溜まったガスが口から出ただけのことなのである。
個人差はあるだろうけど、いきなり口から何か出ちゃあ、誰だって驚くわな。
だいぶ前になるけど、檀家のおばさんが、亡くなった旦那さんが何かブツブツ言ってるから早くお経あげに来てくれって駆け込んできたことがあったよ。
ま、そういうこと。
分かってみればどうってことない。
だから、誰かが亡くなって、布団の中で笑ってみたり、舌を出したり、ブツブツ言ったりしても慌てず騒がず、ガスが抜け切るまで待って、口をがっちり閉じて、固まるまで押さえつけることだね。
「分かっちゃいるけど、そういうの、やっぱりみんな嫌がるだろ?」
「そうなんだよねー。ほんとは血筋のものがやることなんだけど、たいてい怖がって、あたしたちにやってくれって言うんだよねー」
「それが人間の性(さが)ってやつなのさ。原始時代から決して拭い去れない原始的な感情なんだ。つまり恐怖だよ」
そうなのである。
この私にしてからが、死んだオヤジの口をこじあけて、入れ歯をはめてやってる間、しきりに私の指をオヤジの舌がねろねろと舐めているような感触があって、気が気でならなかった。
気のせいだとは分かっていたのだが。

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