年に1回、この時期に3日間集中してバッハの曲を歌い、最後に修了発表会を行うセミナーがある。指導は佐々木正利氏である。
以前、OEK合唱団の合唱指導者として盛岡から金沢に通い、バッハの「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」「ロ短調ミサ」、モーツァルトなどを指導されて自分も歌った。我が師匠によれば「日本のバッハ研究の第一人者」だそうである。
佐々木氏がOEK合唱団の指導を辞めた後、もう少しバッハを習いたいというメンバーが自費で招いて勉強会を始めた。それが次第にセミナーとして一般にも開かれるようになった。
今回の参加者は、プログラムによるとソプラノ32人、アルト11人、テノール5人、バス7人。女声には知っている名前が多い。これにピアノ、オーボエ、ヴァイオリン、キーボードが加わる。
昨年は金沢市民芸術村(客席100席)で開催された。今回は白山市の聖興寺である。千代尼ゆかりの大きなお寺で、住職とはよく知った間柄だ。今もラムジカなどの合唱団で歌っている、いい声のバスである。もっとも今回は袈裟を着て、観客に毛布を配っていた。
会場は本堂。ここではよくコンサートが開かれ、我が師匠も歌ったことがある。ただ、客席はぎりぎり並べても40席ほどだろう。
演奏曲はカンタータ4番、45番、187番。それぞれ30分程度で、毎年3曲取り組んでいるそうだ。昨年も感じたことだが、やはり曲数が多い。3日間でこれだけの曲を仕上げるのは難しいと思う。春から声楽家で指揮者の表まり子さんの指導もあったようだが、それでも個人的にはカンタータなら2曲で十分ではないかと思う。あれもこれもと欲張りすぎではないか。
ソリストは参加者の中からオーディションで選ばれる。春に金沢バッハの会でカンタータ4番を歌い、そのときプロのソリストの演奏も聴いているので、今回は少し物足りなさを感じた。もっとも、こちらはセミナーの発表会である。1年間練習し、プロも加わった演奏と同じ水準を求めるのは違うだろう。
セミナーといえば、以前、八ヶ岳ミュージックセミナーに何年か通ったことがある。長野県川上村で3泊4日の合宿を行い、最後に修了コンサートを開く。主催は栗友会。栗山昭宏、片山ひろみ、新実徳英、西村朗、藤井宏樹、寺嶋陸也といった、そうそうたる講師が毎回顔をそろえていた。参加者も大学生や若手が多く、皆いい声だった。
そこで初めて、参加者が持参した譜面台を使って練習しているのを見た。それから自分も常に使うようになった。大阪に通うようになってからは、費用のこともあって参加しなくなった。
合宿形式は今の時代には難しいのかもしれない。それでも、1年のうち3日間、日常を離れてバッハの世界にどっぷり浸かるというのは羨ましい。曲をいくつ仕上げたかだけではなく、そういう時間を持てること自体に価値があるのだろう。
それにしても寒かった。膝に毛布をかけていたが、それでも震えた。外に出ると、気持ちのよい青空が広がっていた。
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