地元在住のプロの声楽家やピアニストを中心に活動している「サルーテ」という音楽団体がある。これまで毎年、さまざまなオペラを公演してきた。代表は長澤さん。愛知県立芸術大学の声楽出身で、なかなかバイタリティのある女性である。我が師匠も出演している関係で、自分もこれまでいくつかのオペラで合唱パートを歌わせてもらった。
とはいっても、サルーテはフルオーケストラを使うような大規模なオペラをやっているわけではない。自分が歌った「トゥーランドット」や「カルメン」、「椿姫」、「ラ・ボエーム」などの大曲になると、オーケストラを入れるだけでも相当な費用がかかるのだろう。1000万円くらいかかるのかな。知らんけど。
それでも、特別なバックアップがあるわけでもなく、地元の音楽家を中心に毎年オペラを続けているのだから、大したものである。
3年前からは「オペラの学校」という講座も始めた。師匠が副校長を務めている。地元の音大卒業生などに声をかけ、東京から演出家や声楽家を講師として招き、一年間かけて勉強する。そして最後に、その成果発表としてオペラを公演するという仕組みである。
始めた頃に師匠から「やらないか」と誘われたが自分は断った。オペラは無理である。歌だけならまだしも、演技まで入る。歌いながら演技をするなんて、到底無理だ。
今年の春には、「オペラの学校」の受講生にプロも加わって「コジ・ファン・トゥッテ」を公演した。そして来年1月には「魔笛」を上演することになっている。「魔笛」は、自分も以前、門下生コンサートでバスのアリアを歌ったのでかなり勉強したのでよく知っている。
これまでは講座の途中で発表する機会はなく、今回は初めて中間発表が行われた。22人の受講生のうち14人が出演し、「魔笛」の場面を抜粋して演じた。語りの日本語以外はドイツ語で歌う。しかも、一人が複数の役を兼ねている。
プロの演出家、指揮者、コレペティトールも加わっているので、単なる発表会というより、かなり本格的なオペラ形式になっていた。ミュンヘン在住のプロや地元のプロに加えて、師匠の門下からも3人が出演している。
会場はホールではなく、音楽室の狭い空間である。客席も20人ほどしかない。そのため、出演者がすぐ目の前で演技をしながら歌うことになる。これがなかなか面白かった。
ホールで歌うように無理に声を飛ばす必要がないので、声そのものが実にいい。そして、何より表情がいい。目の前で歌い、演じているから、声だけでなく顔の表情や身体の動きまでよく分かる。「ああ、オペラというのはこういうものなのか」と、改めて思った。
もちろん本番では大きな舞台になるから、今回と同じようにはいかないだろう。それでも、まだ勉強中の歌い手たちが、歌だけでなく演技まで含めて一つの場面を作っていくのを見るのは面白い。
そして、見ていて思った。やっぱり自分にはできない。歌うだけでもいろいろ考えなければならないのに、そこへ演技まで加わったら、とてもじゃないが無理である。自分には、あんな表現力はない。
「魔笛」に続いて、さらにメジャーな作品にも取り組むのだろう。自分は出演する側にはなれないが、こういうものを見るのは楽しい。まあ、自分は応援団である。
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