YouTubeの「森の歌」は、1974年10月21日、NHKホールでの演奏だった。ソビエト交響楽団、指揮エフゲーニ・スヴェトラーノフ。ソリストはバスのアレクセイ・マスレンニコフとテノールのアレクサンドル・ベジュールニコフ、合唱はモスクワ放送合唱団と荒川少年少女合唱隊である。
https://youtu.be/lcbv0Yriu2Q
画面の解像度が低いので正確な人数は分からないが、合唱の並びが面白い。前2段に児童合唱約60人、3・4段に女声約40人、そして最後の5段に男声約22人。つまり、男声が一番後ろにまとまっている。その男声が豊かな声で、女声と児童合唱を後ろから支えているように聞こえる。
この並び、いいなと思った。
10月14日の「森の歌」(石川県立音楽堂コンサートホール)では、東京混声合唱団16人、児童合唱団16人、そしてOEK合唱団が50人弱(女声36人、男声14人ほど)である。現在は普通のSATB、つまりソプラノ、アルト、テノール、バスの並びで練習している。
昨日の合唱団の指揮者(ソプラノ、声楽家)は、「森の歌」の合唱指導の副指揮者でもある。そこで、練習前に聞いてみた。
「森の歌の並び、なんとかなりませんかね。男声を真ん中にするとか。第一曲は男声合唱だし」
「山田さん(本番指揮)が何も言ってこないから」
本当なら、YouTubeで見た演奏のように、男声を一列に並べて最後列に置くのがいいと思う。ただ、これは難しい。男声が後ろに並べば、当然、前にいる女声や児童合唱、オケに負けない声を出さなければならない。一人ひとりの声がきちんと前へ飛ばなければ、男声がただ遠くにいるだけになってしまう。
東京混声合唱団のメンバーなら、こういう配置にも慣れているだろう。だが、アマチュアの合唱団では、20人程度のアンサンブルならともかく、50人規模で男女をこの配置にしているのはあまり見ない。
だから、現在のSATB配置は安全策なのだろう。隣の声を聴きながら歌えるし、音程やアンサンブルも作りやすい。しかし、それでは「森の歌」に必要な響きが十分に出るのか、という疑問も残る。そもそも、他の人の声に支えられなければ歌えないのでは、大人数の合唱では限界がある。隣の声を頼りにしていると、50人の中に自分の声が埋もれてしまう。
逆に言えば、他人の声に惑わされず、自分の声をきちんと前へ飛ばせるようになれば、配置の自由度も増す。「男声を最後列に置いてほしい」というのは、単なる配置の好みではない。その配置でも成立するだけの声を出せる合唱になっているか、という問題でもある。
もちろん、1974年のソ連の合唱団と、今回の日本のアマチュア合唱団を同じように考えることはできない。人数も発声も、合唱団そのものの力量も違う。それでも、あの映像を聴いていると、男声が最後列から全体を支える響きには魅力がある。
問題は「どこに並ぶか」ではない。どこに並んでも自分の声をきちんと飛ばせるか、そこに行き着くのだと思う。
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