富山での練習会場には、いつも他の演奏会のチラシや案内が置いてある。練習の合間に「どれどれ」と覗いてみると、「ドイツ・レクイエム&第九コンサート」の団員募集チラシがあった。まるで「たまごカツサンド」のようなタイトルだが。
ドイツ・レクイエムなら歌ってみたいな、と手に取ってみると、ドイツ・レクイエムは抜粋のようだ。2028年6月、黒部市で開催。会費3万円(2年間)、月2、3回の練習とある。
隣にいたバスの団員に言った。
「ドイツ・レクイエムは面白そうだけど、抜粋だし。黒部はちょっと遠いですね」
「富山の人間でもそう思いますね」
黒部は富山県の東端、新潟県寄りにある。富山市から車で1時間ほど、金沢からだと2時間半くらいはかかる。
同じことを、隣にいた代表兼指揮者にも話した。すると、「ここも同じ年に全曲やりますよ。楽譜はここにあります」と、カバンから楽譜を取り出した。
オーケストラ・アンサンブル金沢と今年はカール・ジェンキンス、来年はドブゴロスを演奏するが、その次はドイツ・レクイエムの予定だそうだ。来年の練習は10月から始まるというのに、そのさらに先の楽譜をもう持っている。気が早い。
「今年は大阪で、このレクイエムが4回演奏されるようです。別々に」
「何か生誕何年とかあるんでしょうかね」
「わからないけど、山下先生が10月に振るんだそうです」
ドイツ・レクイエムは、若い頃に金沢で一度聴いたことがある。どこの合唱団の演奏だったかは覚えていない。コンクールの候補曲として一曲だけ譜読みしたこともあるが、結局、選ばれなかった。面白そうなので楽譜だけは買ったものの、もう歌う機会はないだろうと思っていた。それが何十年も経って、突然目の前に現れた。
2028年か。その頃、自分はまだ歌っているだろうか。わからない。でも、目標はできた。
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