発言小町(読売新聞)に「香りの強いお茶を職場で飲む人」というトピックが立っていた。
職場で水筒に入れたアールグレーなどの香りの強いお茶を飲む同僚がいて、その匂いがどうしても我慢できない。やめてほしいと伝えたが、「ごめん」と言うだけで飲むのをやめてくれない、という内容である。
読んでいてまず驚いたのは、「やめてくれ」と言うところまで話が進むのか、ということだった。もちろん匂いに敏感な人はいるし、体質的な理由で苦痛を感じる場合もあるだろう。しかし匂いの問題を言い出せば、コーヒーもある。前日のニンニク料理の残り香もある。香水や整髪料、化粧品の香りもある。どこまでが許容され、どこからが迷惑行為になるのか、その線引きはなかなか難しい。
アラブ諸国やヨーロッパでは、香水をつけることが身だしなみやエチケットの一部と考えられている地域もある。実際、海外を旅行していると、すれ違った人の香水で思わずむせたことが何度もあった。文化の違いもあるだろうし、入浴習慣の違いなども影響しているのかもしれない。
発言小町では定期的に職場の体臭問題についてのトピックも立つ。隣の席の同僚の体臭がきついがどうしたらいいか、という相談である。コメント欄には「席を替えてもらう」「それとなく制汗剤を勧める」といった意見が並ぶ。
ただ、体臭とアールグレーの香りは同じようでいて少し違う。体臭は本人の努力だけではどうにもならない部分があるが、お茶や香水は本人の嗜好による面が大きい。だからこそ、かえって厄介なのかもしれない。
もっとも、人間関係にもよるだろう。まさか一日中ひっきりなしに飲んでいるわけでもあるまいし、水筒のハーブティーが無限に湧いてくるわけでもない。香りが漂うのはせいぜい短い時間だろう。その程度なら少し我慢すれば済む話ではないか、とも思う。一方で、本人にとっては「少しの匂い」でも、苦手な人にとっては耐え難い場合もある。そう考えると、単純に我慢しろとも言い切れない。
結局のところ、この問題に明快な解答はないのだろう。職場という共同空間では、自分の快適さと他人への配慮の間で折り合いをつけるしかない。
さて、自分は加齢臭でいじめられている老人である。そう考えると、この手の話は決して他人事ではない。アールグレーの香りをめぐる議論を読みながら、いつの間にか「人はどこまで他人の匂いに寛容であるべきなのか」という、もう少し大きな問題について考えてしまったのである。
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