2026年の双子誕作品です。『聖闘士星矢』の二次創作小説。
カノンが「サガの双子の妹」として生まれちゃった世界の話で、夢オチです。
カノンが「妹」なので、サガも「私の代わりに双子座の聖闘士として戦え!」ではなく「妹カノンは私が守る!」になってるし、悪霊レムールもサガの妹愛の重さに押し負けて沈黙しちゃった平和な?世界ですw
海界の設定はマイオリジナル設定を前提にしてますが(『ポセイドニア・コモーディア』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3455689などを参照)、気にしなくても読めると思います。
昨年の双子誕作品はこちら。『極北の初夏』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24907372
『双子座の兄妹』
ある夜、教皇の間に呼ばれた射手座のアイオロスと双子座のサガは、教皇シオンから新たなる聖戦の時が迫っていることを知らされて、こう告げられた。
「仁・智・勇を兼ね備えた双子座のサガ。これよりはお前に教皇の座を任せることにする」
それに対し、サガは教皇に頭を下げたまま、丁重にこう答えた。
「恐れ多いことですが、このサガ、辞退させていただきます」
「なに?」
いぶかる教皇シオンに、辞退の理由をサガが説明した。
「私が教皇となれば、双子座には妹のカノンが就くことになります。しかし女のカノンを戦場へなど送れません!私が双子座の黄金聖闘士として聖戦を戦い抜きますので、教皇の座はどうかアイオロスにお譲りください!」
「え、ええええーっ!?」
突然に話を振られたアイオロスは素っ頓狂な声を上げて驚き、教皇シオンはサガの重すぎる妹愛に玉座の上でぽかーんと口を開いたのだった。
そう、これはカノンがサガの双子の弟ではなく、双子の妹として生まれちゃった世界の話。
「…で、教皇になる話を断ったと」
「うむ」
「バッカじゃねーの!?」
翌日、双児宮で兄のサガから話を聞いたカノンは、大いにあきれてこう言ったのだった。
「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは」
「え〜、だって教皇の地位だぜ?」
「何であれ、妹のお前より大切なものなどない!」
自分に瓜二つの双子の妹を溺愛しているサガは、大真面目で言っている。だが誰からも次の教皇と目されていた兄サガが聖域で最高の地位に就く機会を逃したことを知ったカノンは、少し残念そうであった。
「う〜ん…でも兄さんの教皇姿、見たかった気もするけどなぁ…」
あの教皇の法衣姿は、ストイックな双子の兄にはさぞかし良く似合うだろう…と、何だかんだで兄のことが好きなカノンは、兄の晴れ姿を想像して惜しがった。
顔をしかめるカノンに、サガはやはり真面目な顔で答えた。
「しかし私が教皇になれば、カノン、お前が双子座の黄金聖闘士として聖戦を戦うことになってしまう。女のお前を危険な戦場になどやれるものか!」
「いや、おれも結構強いし、大丈夫だと思うけど?」
「強さの問題ではない!」
そして巨大ガス惑星並みに妹愛が重い兄は、カノンを強く抱きしめて顔にすりすりと頬ずりをするのだった。
「カノーン、可愛い妹のお前を危険にさらしたりはしないぞ!この兄がお前を一生守ってやるからな!」
「ああ、うん…」
そして自分と同じ顔をずりずりと擦り付けてくる双子の兄に、少し鬱陶しそうな表情になるカノンであった。
なおカノンは女性であるが、女聖闘士が着用を義務付けられる仮面は着けていない。
「女のカノンを聖闘士として戦場になど送れるか!カノンを聖闘士にはせん!」
という兄サガの意向で、カノンの立場は「黄金聖闘士級の戦闘能力を持つが、聖闘士ですらなく、ただの一般人」ということになっている。
「『黄金級の戦闘力を持つ一般人』ってどうよ…」と疑問を呈する者たちもいたが、そう言った連中はサガに軒並み一睨みされ、その眼光の剣呑さに全員が沈黙した。
そんなわけで「黄金聖闘士並みの戦闘力を持つが聖域在住の一般人女性」なカノンは仮面もかぶっていないし、しかし男社会な聖域で育ったせいで、見た目は兄サガに瓜二つの可憐な美少女なのに口調は乱暴な男言葉という、アンバランスな仕上がりになっている。
「でも兄さん、それだと教皇ではなく一聖闘士として兄さんが前線で戦うことになるだろ?なら聖戦で死ぬ可能性が高くなるんじゃ…」
不安を示す妹に、サガは即座に断言した。
「不吉なことを言うな!私はお前の花嫁姿を見るまでは絶対に死なんぞ!死んでなるものか!」
「ああ、そう…」
そして滝涙を流す勢いで再び自分を抱きしめてくる兄の重い愛に、適当に相槌を打つしかないカノンであった。
「う〜ん、確かにサガはカノンを守るためなら、冥王軍を一人で片づけるくらいはしちゃいそうなんだよねぇ」
のんきそうな口調で言いながら上の人馬宮から降りてきたのは、昨夜、サガの一方的な辞退によって次期教皇に決まってしまった射手座のアイオロスであった。
「あ、アイオロス、おはよう」
挨拶をしたカノンに、アイオロスも軽く挨拶を返した。
「おはよう、カノン。今日も綺麗だね。そしておれと結婚しよう!」
「断る」
「またまた〜」
「アイオロス、いくら親友のお前でもカノンは嫁にはやらんぞ!」
「またまた〜」
三人にとっては、これがいつもの挨拶であった。
サガ、カノン、アイオロスの三人は、ともに学び、ともに競いながら育った幼馴染みである。そして初対面の時にカノンの美少女ぶりに一目惚れして面食いであることが判明したアイオロスは、その場でカノンに求婚して、カノン本人にも兄のサガにも断られた。それでもアイオロスはあきらめずにカノンと会うたびにプロポーズし、また兄妹二人そろって断られ、しかし三人ともに親友として付き合っている…という何とも変な関係なのだった。
「でもさあ、サガ、おれでもカノンは嫁にやれないって…、だったらどんな男ならカノンの結婚相手として認めるの?」
アイオロスの問いに、サガは大真面目な顔で答えた。
「もちろん、カノンを一生守っていくのだから、私より強いのは最低条件だ。その上で私より賢くて、私より優しくて、私以上にカノンを大切にしてくれて…」
「多分、最初の『私より強い』の時点で、その条件に適う男はこの世にはいないと思うよ」
つらつらと「妹カノンの結婚相手」に望む条件を述べる親友に、のんびりとアイオロスが突っ込む。
「うむ、ならばやはりカノンは誰にも嫁にはやれん。私が兄として一生守っていく!」
「…お前、おれの花嫁姿を見たいのか見たくないのか、どっちだよ…」
またしても妹を抱きしめて頬ずりしてくる双子の兄の矛盾した言葉に、カノンはため息交じりに言うのだった。
「うう…カノンの花嫁姿は見たい。さぞかし美しかろう…。しかし不本意な相手に嫁がせるわけには…、そしてお前を残して死ぬわけにも…」
「だからそこは妥協して。条件を下げて。そしてさあカノン、おれと結婚しよう!」
「断る!」
「妥協はしないぞ、アイオロス!してたまるものか!カノンには世界一幸せな花嫁になってもらうのだ!」
即座にカノンとサガがアイオロスに言い返した。
「というかさ…アイオロス、おれと結婚しようって…。お前は教皇になるんだろ?教皇って結婚できるのか?」
自然なカノンの疑問に、アイオロスは胸を張って答えた。
「ふふん、教皇になればおれが聖域の法だ!教皇は妻帯不可と言われたら、妻帯可能なように法を変えるだけだ!」
「うっわー、教皇になる前からもう暴君じみたこと言い出したよ、こいつ」
堂々と独裁宣言をするアイオロスにあきれた顔になるカノンであった。
「アイオロス、やはりお前にもカノンはやれん!よし、私は何としてでも聖戦を生き残るぞ!冥闘士も冥界三巨頭も双子神も冥王ハーデスも、全て私が片づける!そして平和になった世界でカノンが幸せになるのを見届けるのだ!」
「…うん。サガならやれるかもね」
そしてなぜか天猛星の冥闘士は特に念入りにサガに殺されそうな気がする…と第六感で思ったアイオロスだった。
何やら悲壮な顔で聖戦に対しての決意を述べている親友に、アイオロスはサガとは対照的に明るくのんきそうな表情で言った。
「まあ、もし親友のお前に何かあっても、残されたカノンはおれが責任をもって嫁として面倒見るから。後顧の憂いなく、安心して戦ってくれ、サガ」
「安心できるか!」
どこかつかみどころのない射手座の黄金聖闘士、そして未来の教皇猊下は、さらにこう続けた。
「何なら、サガもカノンと一緒におれの嫁?というか愛人?になる?」
「…え?」
「…え?」
疑問符をはもった双子の兄妹に、のほほんとアイオロスが続ける。
「いや、おれたちってこれまで勉強も訓練も任務も、ずっと三人一緒で過ごしてきただろ?なら結婚生活が三人一緒でもいいと思うんだよね。カノンが正妻で、サガが愛妾で…って、なに二人して両腕を交差させてるの!?冗談だって!だからダブルギャラはやめてぇぇぇーっ!!!!」
そして双児宮で二つの銀河が爆発した。
「…はっ!」
突然、夢が終わり覚醒したカノンは、布団を跳ねのけて跳び起きた。
「な、何だったんだ、今の夢…?」
奇妙な夢の内容を思い出しながら、カノンの心臓はばくばくと動悸を打っていた。
「う〜ん…カノン、どうした?」
カノンの横に寝ていたサガが眠そうに目を覚ます。
そう、今日は五月三十日の双子の誕生日だった。普段は海界で生活しているカノンは、誕生日に兄サガを海界の中心都市ポセイドニアに招待した。そして一緒に舟遊びをしたり、演劇を楽しんだり、街歩きをしたり、ちょっと豪華な夕食を取ったり、たっぷりと時間をかけてともに入浴したり…と二人きりで誕生日を楽しんで、仲良く同じ寝台に入って、あれこれと語り合いながら眠りについたのだった。
「まだ暗いではないか。どうしたのだ?」
ふわわ〜とあくびをして身を起こしたサガに、カノンが尋ねた。
「サガ…もしおれが双子の弟じゃなくて双子の妹だったら、どうする?」
「…はぁ?」
「いや、だから、おれが妹だったら?自分の代わりに双子座の聖闘士として戦えって…言った?」
「はあ?何を馬鹿なことを…」
弟の疑問に、サガは眠そうに寝ぼけ眼をこすりながら言った。
「お前が妹なら、双子座として戦えなどと言うわけないではないか。女性を戦場に送るなど…」
「うん、まあ、お前ならそう言うよね…」
ごく自然に「男は女を守るものだ」という古典的なジェンダー観を身に着けているサガとしては、当然の感想だった。
「馬鹿なことを言っていないで…。まだこんな時間ではないか。早く寝なさい」
時計を確認してまだ真夜中であることを知ったサガは、再び布団にもぐってさっさと再眠してしまった。
「…おれ、もしかして女に生まれてた方が幸せになれてた…?」
兄にならって布団にもぐって横になりつつも、「自分が女として生まれていた世界線」を想像して悶々とするカノンであった。
<FIN>
【小説一覧�◆�
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990974332&owner_id=4632969&from=edit_diary_finish
ログインしてコメントを確認・投稿する