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2026年02月25日21:42

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ネイチャー・ドキュメンタリー作品「武蔵野の大地に生きる里山の小さな狩人モズ 知られざる姿」

 今回は、NHKが2001年4月2日から2006年3月13日まで5年余り放送した「地球!ふしぎ大自然」のベストセレクションである。同番組は月曜午後8時から8時45分まで、45分にわたり日本を越えて世界の豊かな自然に生きる動物達をテーマにした。2006年4月から日曜午後7時30分から8時まで放送される後継の「ダーウィンが来た!」へと受け継がれている。本日の主役は、我々の暮らしに身近なスズメ目モズ科のモズである。公園の街路樹から時に庭先にも現れる。スズメと代わらない大きさながら、獲物を駆るハンターの一面を持つ。秋の縄張り宣言から冬場を経て春先の子育てを見つめていく。


 必 写真の出展先:NHK 地球不思議!大自然 2005年6月6日放送 人里の小さな狩人 モズ 武蔵野の四季 より

 
      <地球不思議大自然 モズ 武蔵野の里山に生きる>

 目次
第1章 モズの高鳴き
第2章 モズの早贄
第3章  モズの子育て
  
 スズメ目モズ科のモズは、秋から春先まで里山から住宅地まで現れる身近な鳥である。古くから人の生活圏に暮らしながら、詳しく観察されたことはなかった。柔らかい日差しが降り注ぐ春一番に、田植えと共に、子育てを始め、冬眠から目覚めたばかりのトカゲや昆虫などを雛に与え、およそ2週間で育て上げていた。ものまねが得意で、高い木の梢にとまり、ヒバリ、ホオジロ、コジュケイによく似た声を出していた。秋には、甲高い鳴き声を響かせて縄張りを主張し、木の枝に獲物を串刺しにする行動も目撃される。古くから人々は、枝に串刺しにされて干からびた昆虫やトカゲはモズの仕業だと気づいていた。古代日本人の生贄の儀式にちなみ、「モズの早贄」と名づけていたが、串刺しにする目的までは明らかにされていなかった。今日は人里に出没する不思議の多いモズの一年を紹介する。
                第1章 モズの高鳴き
 
 舞台は埼玉県の雑木林が残る武蔵野の大地である。なだらかな丘に建てられた住宅街のところどころで、こんもりと緑が生い茂った小さな森が残されていた。平坦な土地には田んぼや畑が開墾され、春先になると、苗を植える準備を始める。地元で育った動物カメラマンの嶋田忠さんは、小さい頃からモズに興味を抱いていた。彼が高校時代に初めて撮影した写真もモズだった。嶋田さんは、人の身近なところで暮らしながら、謎が多いモズの生態を調べようと、丘陵地の麓の田園地帯にカメラを設置した。

フォトフォト

畑と藪が入り混じる環境にしばしモズは出没する。幹から張り出した枝先に止まり、藪の中を見下ろしている。トカゲや小さなヘビを捕らえるため、嘴は猛禽類のように鉤状に曲がっていた。一目見ただけでは性別の区別はつきにくく、ポイントを抑えれば見分けることができる。オスは翼の縁に白い斑点があり、目の下は黒ずんでいる。メスの方は、オスと毛並みはそっくりだが、目の下が薄茶色に染まっていた。大きさは、性別にかかわらずほぼ同じくらいである。



 秋にオスは、高い木の天辺で鳴き声をあげて、縄張りを主張する。一連の行動を「モズの高鳴き」という。嶋田さんは、鳴き声を調べるため、藁をかぶせたスピーカーを用意し、木の枝先にモズの模型を取り付けた。スピーカーから録音していた鳴き声を流して、周辺のオス達の反応をうかがった。

フォトフォト

スピーカーから流れる声に一羽のモズが反応し、頭から背中の毛が逆立ち、鋭い鳴き声をあげて、威嚇した。模型のモズは、ピクリとも動かず、スピーカーから鳴き声が流れ続けている。一羽のモズは、縄張りを荒らすライバルと判断し、枝を蹴って飛び立ち、翼を広げたまま、足を突き出して、模型のモズの頭部に攻撃を加えた。模型のモズは全く動かず、反応を示さない。攻撃を加えたモズは方向を変え、再び足を突き出して、襲い掛かる。細くて短い足を使わず、体を前に乗り出し、嘴で模型のモズの頭を叩き、2度、3度と攻撃を加えた。

  写真=模型のモズ
フォト

 嶋田さんは、モズの気性の荒さを実感し、田畑一体に暮らす個体の行動を調べ、縄張りを特定した。雑木林と田畑が広がる区域に縄張りを持つ5羽のうち力の強い2羽が激しく戦っていた。嶋田さんは、戦国時代の武将織田信長と武田信玄になぞらえ、2羽の個体をそれぞれノブナガとシンゲンと名づけた。嶋田さんが観察したところ、意気盛んな若者のノブナガに対し、シンゲンの方は成熟した古強者だという。
 両者の縄張りの境界付近には栗の木がそびえている。ノブナガは、栗の木から飛び立ち、シンゲンの縄張り内を飛行し、低い木の枝にとまった。シンゲンにもノブナガの姿が見えて、高鳴きを始めた。ノブナガは、シンゲンを挑発するように再び田んぼの上を飛行して、栗の木に戻った。シンゲンの方はノブナガを警戒し、様子をうかがう。大胆にもノブナガは、翼を広げ、再び空を切るようにシンゲンの縄張りを飛行した。挑戦状を叩きつけるかのように、シンゲンの縄張りの中心にある木の梢にとまった。じっと様子を見ていたシンゲンは、口を大きく開けて、真っ直ぐノブナガのほうへ向かっていく。ノブナガは、シンゲンとの接触を避けて、一端は自分の縄張り内に戻り、姿を隠した。隙をうかがって、再度シンゲンの縄張り内に姿を現し、木から木へと飛んでいった。

写真=実際のモズ
フォト

シンゲンは、金切り声を上げながら、挑発行為をするノブナガに対して、立ち向かっていく。両者は30分間けん制した末、シンゲンの方に疲れが見えた。ノブナガを追うことができず、中心部を防御した。いわゆる守りの姿勢に入ったのである。対照的に攻めの姿勢を貫いたノブナガは、シンゲンの縄張りの外側を奪い取った。持久戦に持ち込んだノブナガの作戦は効を奏した。

 モズは秋に里山で繁殖行動を活動を行う。厳しい冬を越え、2月中旬には他の鳥に先んじて巣作りを始める。子供が春先旅立つと、夏の間は高原に移動し、暑さをやり過ごす。秋に里山に飛来すると、再びオス同士縄張りをめぐる攻防を繰り広げる。モズが夏の間住宅地や里山で姿を消すことを多くの人は気づいていない。翌年の秋にもノブナガとシンゲンの再戦が待っている。
                 
第2章 モズの早贄
 
モズの高鳴きは、体の大きさの割には抑揚がある、。ウグイスやキジの鳴き声を聞くと、音程はほとんど変わらない。対照的にモズの鳴き声は、メリハリが付いている分、インパクトが強い。鳥類学者によると、タカ鳴きの役割について、姿の見えない相手に居場所を知らせるためだという。モズは小さい体ながら縄張りが広く、パトロールには限界がある。深い藪の中だと、ライバルの存在が確認できず、鳴き声を大きくする必要があった。直接ライバルと戦わずにして、縄張り争いを解決した。秋の一時期縄張り合戦を行い、決着をつけると、秋の終わりには冬に備えて狩りに専念する。見晴らしのよい木の梢にとまり、下界を見下ろし、草原に潜む昆虫を捕らえる。祖先のスズメ時代から足の大きさは変わらず、獲物を捕らえる武器にはならない。猛禽類さながらの先端が鉤型に曲がった嘴を使って狩をする。木の上から急降下して、嘴でトカゲを掴んで持ち上げ、木の枝に止まる。嘴でトカゲをくわえたまま、辺りをうかがい、枝に差し込んで固定すると、嘴の先端部分でちぎって飲み込んだ。草のわずかな動きを探知し、ネズミの居場所も突き止める。草の間からネズミが顔を出した瞬間、一気に飛び降り、嘴を突き出して、がっちりと掴む。ネズミが抵抗できないように、首筋を噛んで再び木の枝に着地した。開けた田んぼと雑木林が入り混じる環境は、ネズミや昆虫が多く、モズの格好の住処となった。嶋田さんは、モズを観察した結果、人の暮らしを最大限に利用している鳥だと実感したという。田んぼに引く水路も、モズの狩場となる。稲刈りが終える秋、水量が減り、湿った土にドジョウが張り付いている。モズは、昆虫やトカゲのハンティングと同じく、羽を広げて飛び立ち、空中でしっかりと標的を見定める。獲物のドジョウに向かって急降下すると、地面に激突する寸前に急ブレーキをかける。ドジョウを嘴にくわえて持ち上げ、近くの木の枝にとまった。獲物を食べることをせず、ドジョウを棘に突き刺した。風で振り落とされないように、ドジョウが棘に貫通するまで差し込んでいく。ドジョウの他にも、エンマコオロギやカマキリ、トカゲなども串刺しにしていた。昆虫やトカゲより体が大きいネズミさえも、枝に突き刺すのだった。ネズミは、刺されて数日経っているのか、毛並みの艶がなくなり、枝から手足がぶら下がっている。枯れ木に胴体を貫かれた獲物は、神にささげる「生贄」を彷彿とさせた。捕まえた獲物を枝に差し込んで放置する鳥は確認されていない。人々の間でも串刺しにされた獲物をモズの仕業だと気付くようになった。いつしか、「モズの早贄」と呼ぶにいたった。

フォトフォト

 モズは、捕らえた獲物の大きさに応じて、突き刺す枝や棘も選んでいた。足で獲物をつかめない分、生きた獲物を枝に差し込んで、息の根を止めてから、食事をする必要があった。枝や刺に差し込んだ獲物をその場で食べることもあれば、貯蔵することもある。嶋田さんによると、モズは狩りの本能が芽生え、獲物を見つけると、飛びつく性質があるという。お腹が一杯だった場合、獲物を食べることをせず、小枝に突き刺したまま置いておく。狩りに失敗すれば、数日前に串刺しにした獲物を食べることもある。狩りが成功続きだった場合には、串刺しにして数日経過した獲物をほったらかしにする。獲物は干からびて、栄養価が低くなり、食べることはなかった。モズの串刺しにする行為は、縄張りを主張するためか、あるいは一種の本能とも考えられる。
  

 

12月、寒さが厳しくなり、明け方は植物の葉に霜が付着した。水生昆虫のザリガニは眠りに付き、ネズミも巣穴で冬眠する。モズは、食糧不足を解消するため、地上に降りて、ムカデや天道虫、蜘蛛などをついばむが、お腹が一杯になることはない。嶋田さんのカメラに写ったメスは、早贄になったドジョウやカエルを小枝から引き抜き、ゆっくりと飲み込んだ。生きたままの新鮮な獲物を好むモズだが、冬の季節は干からびた獲物で耐え忍ぶ。
 1月、本格的に雪が降り始め、武蔵野の里山は一面真っ白に染まった。蓄えが利かないモズは、雪の日でも食べる必要があり、秋に木の枝や棘に刺した獲物を調達する。冬に南国へ渡りをせずに里山にとどまるため、天候が悪化すれば、体力は消耗する。早贄を食べて飢えを凌ぎ、たった一羽で鳴き声を立てずに、静かに春を待ち続けていた。
                  
 古くから日本人は、モズを見つめ続けていた。戦国時代に生きた宮本武蔵は、水墨画を嗜む芸術家としての顔を持つ。彼が描いた絵を見ると、枯枝に止まる一羽のモズが、下界の様子をうかがっていた。彼は、秋に高鳴きをするモズが単独で行動することを知り、その勇ましくりりしい姿が、戦勝続きの自分自身と重なり、共感を持ったのかもしれない。明治時代の俳人正岡子規もモズを詠んだ俳句を残していた。その一章「モズ鳴くや一番高い木の先に」宮本武蔵と同じく、正岡子規も高鳴きする様子を捉えていた。もう一章「モズ鳴くや夕日に帰る松葉掻き」
この句は、落ち葉を掃く人々の周辺に集まるモズを描いている。民謡にも登場するモズは、時代が移り変わっても人の生活環境に溶け込んでいた。
                 

       第3章 モズの子育て
 
 2月中旬、節分の日を越え、寒さも少しずつ和らぎ、梅の花が咲き、武蔵野に一足早く春が訪れた。秋に縄張りを確保したオスは、枯れ枝に止まり、ウグイスにそっくりな鳴き声を出して、メスを誘った。メスは、特定の縄張りを持たず、少し離れたところからオスの様子を見つめている。オスは、鳴き声を上げながら、辺りをうかがい、メスを見つけると、一目散に飛んでいく。メスは、木の枝から動かず、オスを見て見ないふりをする。オスは、枝を伝ってメスに近寄り、尾羽の動きに合わせながら、リズムよく首を左右に振った。メスは、オスから視線をそらしながらも、時々振り向いて、オスの身のこなしをチェックする。オスは、高い枝に飛び移り、メスを見下ろすと、急に飛び立った。メスは、オスを見失わないように、即座に羽を広げ、後を追いかけた。オスは、昆虫を捕まえ、口移しでメスに渡すことで、求愛に成功する。餌によるアプローチ方法を「求愛給餌」という。他の鳥に先立って繁殖活動を行い、田植えが始まったばかりの4月、田んぼの傍らの小さな茂みに巣を作り、子育てを始めた。

フォトフォト

周辺の雑木林や藪の中から小枝をかき集めて、すり鉢状の形をした巣の土台を作る。羽ばたきのさいに落ちた羽毛を敷いて、柔らかいふかふかのベッドを拵え、卵を5つ産み落とした。孵化するまでの2週間、オスとメスが交互に見張り、お腹で卵を覆い、冷たい外気から守る。親鳥の努力のかいがあり、雛が産まれると、食料探しで大忙しになる。春の暖かい日差しを感じて、冬眠から目覚めたばかりのトカゲを縄張り内で捕らえ、雛の元へせっせと運んでいく。親鳥はおよそ2週間で巣立つ雛のことを考え、自分の食べる分を削って餌を与え続ける。秋に縄張りを拡大したノブナガとシンゲンは、食糧確保が楽になった。

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稲刈りが終わったばかりの秋の田んぼで、これまで知られていないモズの行動が次々と明らかになった。雑木林と田んぼが入り混じる環境を好み、農作業する人々のそばで暮らしていた。オスは見晴らしのよい木の梢でタカ鳴きをすると、縄張りの境界線で、ライバルのオスと追いかけあいをしていた。スズメの仲間から肉食性に進化したモズは、足の発達が遅れた分、猛禽類と同じように鉤状の嘴を獲得した。昆虫より体が大きいネズミでもフックのような嘴に引っ掛け、翼を羽ばたいて持ち上げ、木の枝や棘に串刺しにしたのである。田畑を荒らすネズミが取り除かれ、農作物の被害が抑えられた。武蔵野一体の地域は、環境保護が進み、休日を通して、炭焼き体験や林業体験を行い、昭和初期の暮らしを現代の人々に伝えていた。人里に生きるモズは、今日もどこかで変わりゆく人々の暮らしを見つめている。


 過去の作品

2026年1月19日 「都市の身近な自然!三浦半島の小網代の森に生きるアカテガニ」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1991466089&owner_id=32437106&from=list_diary_title


2026年1月13日(火曜日)「オランダの大地を駆ける野生馬コニックの一年」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1991431033&owner_id=32437106

2025年8月10日 NHKダーウィンが来た!ベストセレクション スナドリネ
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990495441&owner_id=32437106

2025年5月29日付 NHK ダーウィンが来た!ワイルドライフ ベストセレクション「世界遺産北海道知床半島のカワガラスの一年」2014年放送
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990057234&owner_id=32437106

・2025年4月28日付 オーストラリアのコアラ
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1989865779&owner_id=32437106

・2025年4月24日付 オーストラリアのディンゴ
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1989841093&owner_id=32437106







トルコのアマチュアリーグで珍事…低空飛行のカモメにボール直撃、選手が心肺蘇生で救命
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=138&from=diary&id=8684599 
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