3月15日(土)から20日(木)にかけて第3回新潟国際アニメーション映画祭(NIAFF2025)が行われ、今回も多くのプログラムで賑わった。
コンペをはじめ上映作品の質も高く、また、話を聞く機会も稀な多くのゲストの来場もあり、国際映画祭ならではの魅力を満喫した。まずは開催にお礼申したい。
前回は、市民プラザ、日報ホール、だいしほくえつホール、シネ・ウインドの4つの会場が上映のメインだったが、今回は、だいしほくえつホールが外れ(スクリーンに難があったか?)、市民プラザ、日報ホール、シネ・ウインドにT・ジョイ新潟万代が加わった。T・ジョイはシネコンなので鑑賞環境的にはアップしたと言える。
上映以外のイベント等を含めると全部で8つの会場になるそうだ。
以下、今回のプログラムをまとめてみる。
■長編コンペ(全12本、順不同)
『バレンティス』イタリア、72分
『クラリスの夢』ブラジル、83分
『化け猫あんずちゃん』日本&フランス、92分
『リビング・ラージ』チェコ、79分
『ルックバック』日本、58分
『かたつむりのメモワール』オーストラリア、94分
『オリビアと雲』ドミニカ、81分
『ペーパーカット:インディー作家の僕の人生』アメリカ、87分
『ペリカン・ブルー』ハンガリー、80分
『口蹄疫から生きのびた豚』韓国、105分
『ワールズ・ディバイド』アメリカ、116分
『ボサノヴァ〜撃たれたピアニスト』スペイン&フランス&オランダ&ポルトガル、103分
■世界の潮流「近年の見るべき作品集」
・戦争と平和
『サリーム』、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に)』
・新潟とアニメーション
『プロジェクト『REKKA』の現在地2025』、『空の青さを知る人よ』、『アイの歌声を聴かせて』、『銀河英雄伝説 激突第一章』
・アジアの風
『ラーマーヤナ ラーマ王子伝説』、『傘少女―精霊たちの物語―』、『雄獅少年/ライオン少年』、トークイベント「幻の日印合作映画はいかに制作されたのか」
・ロトスコープの現在
『ロック・ボトム』、『音楽』、『花とアリス殺人事件』
■レトロスペクティブ「今敏」
『妄想代理人』『千年女優』『パーフェクトブルー』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』『走れメロス』『機動警察パトレイバー2』『MEMORIES』『老人Z』、アニメーター・美術・脚本・プロデューサー各トークあり。
■イベント
オープニングイベント『イノセンス』、『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』、『カウボーイビバップ 天国の扉』、新潟スタジオが語る魅力『銀河英雄伝説』、アニメスタジオと映画の半世紀、『The BONES:25』、アニメーター川本利浩、『ニュータイプ』40周年記念、審査員トーク、短編特集・台湾の民話と神話、ドワーフ特集、ファンタジア映画祭プロデューサートーク、渋谷パイロットin新潟、片渕須直監督新作トーク
■オールナイト「日本のアニメCGの転換点」
『FINAL FANTASY』『劇場版シドニアの騎士』『ミニパト』『アップルシード』『青の6号』
■フォーラム「特集CHINA NOW」
スン・シュン監督短編集、『落凡塵』、『アートカレッジ1991』、リー・ジァジァ監督制作中作品、スン・シュン監督制作中作品
■他にシンポジウム、アニメーション・キャンプ、国際学会、研究発表、等。
■最終日には、大川博賞・蕗谷虹児賞授賞式、コンペティション部門授賞式、グランプリ作品上映が行われた。
以上。書いていても驚くプログラムの多さだ。
上記4つのメイン会場で連日15前後のプログラムが行われ、全体では90を超す。
上映前後にトークが行われた回も多く、スケジュールは入り組んで、全部でいったい何本の作品が上映されたのか、どんなゲストが新潟を訪れたのか、全貌を把握するのは困難とも思える。
肝心と思われる長編コンペでさえ全作品を観られた人は案外多くはなかったのではないか。私も全部は無理だった。
NIAFFは初回から上映会場が毎回変動している。プログラムの多さもあるが、広島や新千歳のようにここに居さえすればという決定的な会場に欠けるのが痛いところ。
天候が安定しない中で信濃川を挟んで往復移動するのは結構厳しい。
スケジュールも1つの会場ならプログラム間の余裕はあるが、全体で見るとかなりの立て込み具合で、複数会場を横断しようとすると時間的に厳しい場合もある。
果たしてここまで多くのプログラムが必要なのかという根本からの疑問も湧くほど。
中心とされる長編コンペも全12本。これをしっかり観るだけでもかなりの力を要するが、その他のプログラムが今回は特に多かった印象。
映画祭企画として思いつくもの、可能なものを全部入れ込んだ感もするくらい。
長編コンペの集客が相変わらず少ない中、歴史的な作品やアニメ界の有名スタッフを新潟に集め、そちらで集客を図ろうとしたのではないかとも思ってしまう。
チケットは1プログラムが大人1,000円〜2,000円、学生500〜1,500円。
5回、10回、15回の回数券も販売され、便利だった。席は全自由席になったが事前予約が必要。入場の基本はスマホのQRコード認証。
自由席は本当にありがたかった。是非続けてほしい。
会場運営は目覚ましい有能ぶりだった前回、前々回からやや後退した印象。スタッフの数も少なく見えた。
会場準備の方に手を取られたか、ホール外に待機客があふれていても整列を促すこともなく、ちょっと心配になるほどだった。
前2回は臨機応変で柔軟な対応がされ、列が長くなると開場前にスタッフ自らが読み取り機を持って歩き、先に受付けを済ませるなど、感心したものだったが。
入退場の導線の作り方なども以前のノウハウが生かされていないように思えた。
これだけ大量のプログラムをスケジュール通りに運営する困難は重々理解するし応援しているつもりだが、今回は残念な部分があったと言わざるを得ない。
映画祭は本当に生ものだ。新潟の運営は日本一といつまでも信じていたいので。次回のつつがない開催を願っている。
公式サイトはこちら。
https://niigata-iaff.net/
観た作品やプログラムの感想はまた別に記そうと思う。
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