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2023年11月27日00:09

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尾鷲・熊野本宮紀行７　熊野古道センター

　10月７日土曜日は尾鷲駅からタクシーで三重県立熊野古道センターへ赴きました。
https://www.google.co.jp/maps/place/%E4%B8%89%E9%87%8D%E7%9C%8C%E7%AB%8B%E7%86%8A%E9%87%8E%E5%8F%A4%E9%81%93%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC/@34.0617925,136.2154098,19z/data=!4m6!3m5!1s0x6005d590eb49439b:0xdbbf8fe92d191f23!8m2!3d34.0617414!4d136.2149753!16s%2Fg%2F11rvb86jh2?entry=ttu

　熊野古道センターは熊野古道伊勢路〔史跡〕とその周辺の自然・歴史・文化に関する情報を発信するビジターセンターです。当地は、熊野古道の中でも最難所とされる八鬼山(ﾔｷﾔﾏ)峠の東約１km地点にに当たり、UNESCO世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の東の入り口としての役割を担っています。入館は無料です。

　主要な施設は展示棟と交流棟ですが、どちらも尾鷲檜を多用した日本最大級の木造建築物になります。建築設計は建築研究所アーキヴィジョン、構造設計は梅沢建築構造研究所、展示棟・交流棟の施工は奥村・東建特定建設工事共同企業体、研究収蔵棟の施工はセルフ舎建設が担当しました。木造軸組構法をヒントにした角材とステンレス製リングの組み合わせによる新たな木構造が採用されていますが、これは木と金属のハイブリッドをしたかった訳では無く、無垢材を使った「木造らしい木造」を造りたかったための構法でした。同じ断面の木材を組み合わせた熊野古道センターの構法は「等断面集積木材構法」と命名されており、トラスも集成材も使わずに柱間10.5m・軒高6.7mを実現したのは「歴史的木造大空間を凌ぐ空間」と評されています。また、展示棟から交流棟までの全長は98.6m、両棟の間隔は7.4mですが、両棟の対称的配置と直線的な造形により、建物の象徴性と力強さが表現されています。直線的になっているのは、周囲が棚田で、棚田から海へと広がる水平性に協調するためで、山々や木々の垂直性との対比を創出したそうです。

　平成18(2006)年に竣工し、翌年開館しましたが、総事業費は約21億円、建築面積は3366.82㎡、延床面積は2439.69㎡です。柱から梁、壁に至るまで全て尾鷲檜が用いられていますが、環境負荷を軽減するために特定の森でなく広域から少しずつ切り出され、使用された6549本の尾鷲檜には１本１本に産地証明書が付いています。当初は150mm角の木材を四本束ねる構想でしたが、150㎜角の尾鷲桧は樹齢100年以上となり入手が難しい事が判明したため、135mm角という地元で広く流通している木材規格に変更されまし。135mm角材を活用した事による日本国産の小中径木材の利用拡大の可能性を示した点、熊野古道の景観を構成する木を使って熊野古道センターを建設した点が意義深いとされています。木材の組み上げには、１棟は７日、もう１棟は10日しかかからず、建築設計者を驚かせました。天井板には熊野杉が用いられています。

　この結果、建築物としても高い評価を受け、平成20(2008)年には第49回BCS賞、平成21(2009)年には日本建築学会作品選奨、平成24(2012)年には公共建築賞を受賞しています。ただ、木造建築の悲しさで、早くも経年劣化が顕在化してきており、修繕の必要が生じていますが、設計段階から部材の交換が容易となる様に構法の単純化が図られているのです。