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2023年11月19日22:36

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じじいが金塊をうばうナチスをころす。以上 「SISU シス 不死身の男」

二次大戦の真っ只中、フィンランドの荒野で寡黙な老人が金を掘る。そうして老人は莫大な金塊を発見する。*1

だが、故郷を焼き、女を攫い、虐殺のかぎりをつくしたナチスドイツが老人から金を奪う。心が怒り、プリミティブな肉体から湯気を吐き、拳を固く握り絞め、老人はつるはしを両手に抱く――。*2

皆殺しの時間だ。

最近国内でも上映されることが多くなってきたフィンランド映画。本作は元・特殊部隊の寡黙な老兵が、金塊をうばったナチスを殺しに殺す。R15のアクションシーンはグロゴア満載。手が飛び、脚が飛び、頭を割り、喉を切り裂く。

約90分の短い上映時間はただの一点――「老兵が金塊を取り戻す目的でナチスにケンカを売る」に集約する。そのすがすがしさ。じつにムダがない。

手を変え、品を変え、豊富かつ奇想天外な絵面でみせる老人の殺陣も独特だ。

切り裂いた敵兵の喉から空気を吸い水中で呼吸する。首吊りの防止に自ら肉体を柱に刺し落下を押し留める。従来にはない発想が光る。

章立て構成や、助けた女が一列に並び登場。銃を手に兵士を撃ち殺す姿は初期のタランティーノ作品もほうふつとさせる。*3 彼女らがナチの兵士に言う。

「SISU」は負けない破れない、と――。

ナチスを殺す不死身の老人「SISU」。

困難に立ち向かう勇敢さや忍耐を表す精神の「SISU」。

その言葉が二次大戦当時の状況を生き抜いた祖国への想いにかかわっているのが、このバイオレンス作品に少々歴史を感覚する部分だ。*4


※1 つまりは金を含む鉱石なのだが、絵面では金の岩そのものがででくる。

※2 老兵アアタミ(ヨルマ・トンミラ)は、本当に最後の瞬間まで一切台詞をしゃべらない。寡黙を徹底し、肉体と表情と演技で90分を渡り切る。その脇を埋めるアアタミの愛犬ウッコがかわいい。

※3 搾取される囚われの立場から一転、銃を握り、女性上位に。逆転なしのウーマンパワーたぎる勇姿は、もはやビッチである。

※4 同盟関係に複雑な背景があったにせよ「継続戦争」をふくめソビエトの侵攻を2度防衛し、そのソビエトと同盟を秘密にむすんだナチスドイツにも交戦・反抗。自治を最後まで死守したフィンランド。その記憶は自国の人々に鮮明なはずだ。
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