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2023年08月16日04:02

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8月15日 「ミツバチのささやき」「人生は四十二から」見る

今日は、久しぶりにスペインの1973年の名作をどうしても見たくて、配信では見つけられなかったので、DVDを借りて見ました。
ビクトル・エリセという寡作なのに、傑作を生みだす映画史に残る映画監督の映画ですが。
昔、見た時は、可愛い子供のヒューマンストーリーぐらいで考えていたのですが。
今見ると、深い社会背景の意味が分かるようになりました。
映画監督が知識人であれば、文学の隠喩や暗示などの技術を知っているはずなので。
インテリの映画監督であれば、映画の中に隠喩を忍び込ませてきます。
この映画が作られたスペインは、フランコ独裁政権が続いており、スペインの知識人は、周りの国が民主化しているのに、スペインだけが軍事独裁政権であったことに賛成していたとは思えません。
知識人であれば、フランコ独裁政権に反対し、その暗示を必ず映画に入れてくると想像できます。
映画の中でも、少女の父は養蜂家の設定で、家も蜂の巣のように美しいです。
そんな父がミツバチについて書いている描写から、”ミツバチ”という記号は、考えることなくずっと働かされるスペインの労働者を暗示しているのでしょう。
会話の無い冷めた両親は、スペインの内戦による左派と右派の対立の結果であり、政治的な停滞を暗示しているようです。
アート映画なんですが、最後にフランケンシュタインが出てくる怪物映画という全然違う別ジャンルの映画へのオマージュで、映画愛が感じられます。
ささやくような可愛い映画なのですが、フランコ独裁政権の暗い影を狭間見ることができる映画です。
是非、スペインを代表する映画を見たい方にはお勧めの映画だと思います。

続いて、アメリカの名匠・レオ・マッケリー監督の名作をDVDで見ました。
フランク・キャプラみたいな、アメリカのヒューマニズムを謳いあげた名監督の映画です。
レオ・マッケリーは、ドタバタ・コメディから監督のキャリアをスタートさせたのですが、この映画が転機となってヒューマニズムをセンチメンタルに描くようになり、アカデミーの監督賞を二回も取るほどの名匠となりました。
貴族社会のイギリスで執事だった男が、主人だった貴族がアメリカの西部の大金持ちにポーカーに負けて、賭けの対象とされたため、アメリカに移住することになります。
実際は、”執事”は”奴隷”ではないので、本人には職業選択の自由や、拒否権はあるのですが。インディアンと戦っている野蛮と思われる土地を恐れながらも、新しい主人となったアメリカ人とアメリカに移住することにします。この西部の男は気さくで召使への接し方を知らずに友達のように扱い、西部では気さくな人ばかりで、本人もアメリカの建国の精神である”人間の平等”を有難く感じるようになり。
最後は、召使から解放されて、独り立ちするという、ヒューマニズム溢れる映画でした。
映画批評家の中には、長年に渡って執事として生きてきた男が、自立して生きていく心境の変化が弱いのではないか。42歳になって、民主主義を謳歌する本を読んだだけでは、変われないんじゃないかという指摘がありましたが。
映画では、アメリカで相思相愛になる彼女が初めてできるので、その力もあって自立を決心したのだと解釈しました。
実際は、彼女に従属から自立への解放を促されるシーンがあった方が分かりやすかったかもしれませんが。
でも良くできた映画でした。
レオ・マッケリーの傑作を見たい方にはお勧めの映画だと思いました。

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