予告で使う「胸いっぱいの愛(Whole Lotta Love)」 *1 の選曲は、どうやらいつわりないようだ。仲間、友情、宝物に怪物、泣き、笑い、そうして最後にダメパーティーはヒーローにかわる。
本作は、原作への敬意と同時に、観客をたのしませようとするサービス精神の塊だ。小難しい部分は一切なし。原作の知識? 必要ない。 *2 さあたのしめ!
妻を失い投獄されることになった盗賊エドガンは、相棒の女戦士ホルガと一緒に脱獄をはたす。目的は妻をよみがえらせる魔法の石板を手に入れ、愛娘を取り戻す事。
だが、かつての仲間でいまや悪徳領主となったフォージの陰謀で、あれよあれよ、世界の運命をおびやかす魔女と対決する。
魔法に自信がない魔術師のサイモン。
人間を信用してないドルイドのドリック。
無双の剣の使い手だが超真面目すぎてもはやへんな聖騎士ゼンク。
ファンタジー世界の芳醇な映像の中で、エドガンと仲間は力を合わせ、魔女の刺客と戦い、デブドラゴンから逃げ回り、アリーナのデス・ゲームで様々な怪物と渡り合う。 *3
本作が秀逸な部分は“失敗”の肯定だ。
自身を「失敗のチャンピオン」と語るエドガンをはじめ、仲間は過去の“失敗”をくいる。だが、エドガンは語る。失敗しなくなることが一番ダメなのだと。*4
その言葉どおりに仲間は過去を越え、迫力のラストバトルで魔女と戦う。そのときアウトローはもういない。いるのは世界を守るヒーローだ。
もう一度。さあたのしめ!
※1
https://www.youtube.com/watch?v=HibBnC6SVk8
※2 あればなおよし。現役の『ダンジョンズ & ドラゴンズ』のプレイヤー/ゲームマスターの自分は、忠実なTRPG要素の再現に感心しきりだった。もっとも、それ以上に自身が感心したのは、その予備知識の必要をなくし、映画を理解させようと工夫をしている制作スタッフの努力だ。
※3 様々な動物へと変身可能なドリックが、鼠、鷹、猫、鹿に変身して逃げ出す長回しの場面はまさにファンタジー。また、最後の魔女との対決はまるでアメコミヒーロー映画のクライマックスバトルのようで興奮する。以外な決着の付け方も大変よい。その最後をふくめ、ヒーロー/ヴィランともムダなキャラクターがいない。なかなかできない。
※4 失敗を恐れ、あきらめてしまうのが一番よくない。ならどんどん失敗しろ、前へ進め! と語るエドガンがマジでパーティーの精神的支柱。エドガンの職業は、盗賊(ローグ)ではなく吟遊詩人(バード)。ゲームでも吟遊詩人は仲間のキャラクターを鼓舞して強化することができる。
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