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2023年04月05日14:23

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水戸・偕楽園の施設整備についてのお話

 茨城県水戸市の偕楽園に,幾つかの実に興味深い施設が整備されているようです。

 偕楽園は金沢の兼六園・岡山の後楽園と並ぶ日本三大名園の一つに数えられていますね。個人的にはそれらに匹敵する庭園は他にも数多く存在すると思うのでこの呼び方には全く賛同出来ませんが,日本でも指折りの大変優れた庭園の一つであるという評価自体には僕も異存はありません。

 その庭園についての「美術の一ジャンルであり,絵画や彫刻・或いは建築などと同様に鑑賞の対象にすべきである」という僕の考え方は,既に何度か述べさせて頂きました。この考え方の妥当性に僕は強い自信を持っています。しかし「庭園の存在価値はそれだけとは言えないのではないか」とお考えの方も多いことでしょう。秀でた環境や風景に囲まれて英気を養ったり,或いは楽しい一時を過ごすこともまた庭園の存在価値なのではないか,と。僕に言わせればそれもまた鑑賞の一形態であり「庭園は鑑賞の対象になる美術作品である」という考え方と矛盾するようなものではないと思いますが,滞在して英気を養ったり楽しい一時を過ごしたりすることもまた庭園の正しい活用法であるという指摘自体は全くその通りだと考えます。したがって庭園というのは美しいだけでは不充分であり,滞在する者が快適に過ごせる場所でもなければならないし,そのための施設を備えてこそはじめて完全な庭園と言えるのではないかとも。無論,庭園が美術作品であり施設もその一構成要素になる以上,そうした施設についても美しさや庭園全体との調和が不可欠であることは当然のお話です。
 これは近年に造園された庭園のみに限られた指摘ではありません。どれほど長い歴史を持つ庭園であっても,それが現役として人々の鑑賞に供せられている庭園である以上は滞在中の鑑賞者が快適に過ごせることは絶対的に必要であり,仮にそのための施設が欠落ないし不足しているのであれば補わなければなりません。これは「どれほど骨董品としての価値のある茶碗であっても,茶碗として実用に供する以上は底に穴が開いていたり水漏れしたりするようなことは許されない」というのと同じ話です。庭園であれ茶碗であれ,どれほど歴史ある存在であっても既に実用に供することの出来ない状態になっているならば,それは壊れてしまった美術品の残骸というべきものでしかないでしょう。せっかくの名園がそのような状態にあるのはあまりにも惜しいことで,仮にそのような状態にあるならば茶碗を繕うのと同じように庭園にも施設整備を行うべきだと言えるのではないか。無論,先にも述べたとおりそうした施設も庭園全体の美を損なったり不調和を見せてしまったりすることは許されず,仮に「現状の美しさを保つためには,そこに何かを加えることが極めて難しい」というのであれば,隣接地に既存庭園と調和する外見の施設を整備するのも一つのアイデアでしょう。

 この点,水戸の偕楽園は近年になってそうした「補修」が積極的に行われていると高く評価することが可能だと言えるのではないか。同園にはもともと好文亭という東屋があってこれも元々は庭園鑑賞者が園内滞在中に快適に過ごすことを目的に建てられたものには違いありませんが,現在ではその好文亭は歴史的施設の一つとして展示に供されており,来場者が実際にそこで寛ぐことは殆ど想定されていません。しかし近年,令和の好文亭をコンセプトとする「ときわ邸 M-GARDEN」が同園の隣接地に,そして今回「The迎賓館 偕楽園 別邸」が同園の拡張部(近年になってから偕楽園の一部として整備された区域)に建設されました。いずれもセミナーや宴会などが挙行可能である他,レストランも備わっていて偕楽園を鑑賞しながら西洋料理を頂くことが可能です。これらは偕楽園の来園者にとっての滞在・鑑賞時の快適さを大いに増進するものであり,同園の魅力を大いに増進させる有益な存在と評価出来るものです。
 これらの施設整備は,他の庭園にとっても参考になるものと言えるでしょう。先ほども申したように,たとえ古い時代に整備されたものであっても現役の庭園である以上はこうした施設は不可欠であり,整備を怠ることは許されません。しかもそうした施設もまた美術品たる庭園を構成する存在であり,庭園全体の美や調和を崩すことも許されません。このように申し上げれば「具体的にはどのようにすれば良いのか」という疑問を持つ向きもあることでしょうが,これら「ときわ邸 M-GARDEN」・「The迎賓館 偕楽園 別邸」は他の庭園における施設整備の絶好の参考事例になることは疑い有りません。よく知られたとおり同園は江戸時代後期に整備された歴史的存在であり,不用意におかしな施設を設ければその庭園の美術性を損なってしまいかねませんが,これらの施設はむしろ偕楽園を今までよりも更に美しくするのにも資するものと言うことが出来るのですから。無論,歴史ある庭園に限らず,比較的新しい庭園であっても「美術性を損なわずむしろ増進させる施設の整備」という点で大いに参考になるのは当然です。

 僕も帰省の折,実際に偕楽園及び「ときわ邸 M-GARDEN」・「The迎賓館 偕楽園 別邸」の鑑賞に赴き,これらの施設が同園の庭園としての価値を増進させると同時に偕楽園を以前よりも更に美しくしたさまについて実際にこの目でしっかり確認して来ようと思っているところです。



水戸・偕楽園 「迎賓館」7日開業へ 結婚式や国際的な会合 茨城県内初、パークPFI活用
https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=16803483071716

ときわ邸 M-GARDEN
https://www.m-garden.jp/index.html
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