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2023年02月14日16:41

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勝新の出世作『不知火検校』

サブ市の市やんは、皆さん後存じの大スタア勝新太郎の座頭市がモデルになっている。
座頭市シリーズは皆さん後存じのはずなので、今回は座頭市の二年前の作品で勝新太郎の大出世作となったピカレスクものを紹介する。


〇『不知火検校』(1960/森一生)――脚本:犬塚稔。原作:宇野信夫。白黒。91分。
物語は――、
【生まれついての盲目である杉の市(勝新太郎)は盲人であることを逆手にとって幼少時から人を陥れては金を盗み、長じてからは強盗殺人、強請に手籠めと、悪の限りを尽くす。
ついに自分の師匠まで手にかけて大金を奪い、盲人の最高位である不知火検校の座まで上り詰める。いよいよ将軍様にお目通りできるというとき、強盗仲間への裏切りからすべての悪事が露見する。】
情け無用のピカレスクもの。
森一生監督は人間性やドラマを深く掘り下げるタイプではないので、サラッと終わる。それでいい。
これが白塗りの二枚目ではいまいちパッとしなかった勝新太郎の大出世作となった。これが座頭市のキャラにつながった。
強請られ脅され貞操を奪われ怯える武士の妻役の中村玉緒が名演技。品があって色っぽい。
原作は新作歌舞伎の戯曲「沖津浪闇不知火」。歌舞伎では父親が按摩を殺し、その親の因果が子に報いた事になっている。
映画では戯曲と違い、親の因果説はカットされ、ラストで取り囲む町人たちに、「目明きのくせに面白い目一つも見ずに死んでいく!」と罵る部分もカットされている。強盗殺人が「面白いこと」とは。もう更生しようがない。

当時の映画評では、杉の市の人間性も社会性も掘り下げていないと批判されている。おそらく評論家たちは「世の中が悪い!」と映画に言ってもらいたいようだ。
しかしこの作品を見る限り、盲人だから悪に走ったのではなく、悪人がたまたま盲人だっただけの話だ。いまどきの闇バイトと同じで金のために簡単に人を殺す人間はいつの時代にもいる。いや、人を殺すことで世間一般の人たちの上に立てたと思う人間がいるのだろう。
一見の価値ある作品。
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