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2023年02月06日23:02
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ZARDの坂井泉水とバブル経済 3部作(中篇）2月6日は坂井泉水の56回目の誕生日、高度経済成長期、バブルの始まり
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2/6(月）
サッカーの本日本代表の本田圭佑氏のツィート「日本のラーメンは安い」が話題になっている。米国では、日本食ブームの影響により、大皿一杯で日本円換算で2000円も珍しくないという。諸外国の人々からは、１杯１０００円以下は「安い」と感じるという。https:/
今回、２月６日に生誕５６年を迎えたZARD坂井泉水の人生と共に、第２次世界大戦後からバブル期までの日本経済を見つめていく。
写真 掲載元 Memory〜ZARD/坂井泉水さん〜
止まっていた時間が動き出した 2014年2月7日
http://
前回の日記 前編 2023年2月5日付け
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本題 ZARDの坂井泉水とバブル経済 3部作（中編）坂井泉水５６回目の誕生日、日本の戦後復興からバブル経済、東京オリンピック特需、プラザ合意、ブラックマンデー、
目次
・第4章 日本経済 戦後復興の好景気 不動産業界で2年間働く坂井泉水
・第5章 第二次大戦後の景気の波
・第6章 東京オリンピック特需発生 成長を続ける経済
・第7章 ブラックマンデー 国内の過剰投資、
・第8章 バブル期の弊害、そして崩壊へ
第4章 日本経済 戦後復興後の好景気 不動産業界で2年間働く坂井泉水
1985年9月22日のプラザ合意に基づき、G5の政府が市場に協調介入に乗り出すと、円高不況が懸念された。為替差損の発生により、海外に投資していた日本企業の業績は悪化した。政府は対策を練り、内需拡大に踏み切った。ルーブル合意が行われた1987年2月まで日本銀行は、5段階にわたり、公定歩合を5％から2,5％まで引き下げた。低金利政策により、企業はお金を借りやすくなり、設備投資を行う。東京の湾岸地域を中心に、新規開発事業が始まった。為替レートの影響がない、国内投資が活気を帯びた。対象となったのは、「土地」や「株」だった。最も恩恵を受けたのは、不動産市場である。
詳細 PICTECT 2020年8月14日付 実践的基礎知識 金融／経済史編（ 8 ）＜バブル景気�◆�
山手線の内側の土地の値段で、アメリカ全土が購入できるとの「土地神話」が広がり始めた。1987年3月に短大を卒業した坂井泉水が選んだ進路は、不動産業界の就職だった。バブル期、新卒の若者は、大挙して就職できる引く手あまたの時代だった。彼女1987年4月から1989年3月までの2年にわたったOL生活については、生前語っていない。売り手市場のバブル期、人員を確保するべく、企業は給料水準を上げた。1987年、一時的にバブル景気に水を差す出来事が起こった。10月19日（月）の米・ニューヨーク株式市場で株価が大暴落したのである。曜日名から「ブラックマンデー」という。東京市場でも、売り注文が殺到した。翌20日火曜日に日経平均は3836円、率にして14.9％急落した。この日の終値は2万1910円。1日の値下がり率14.9％は過去最大の幅となり、2023年現在でも塗り替えられていない。1953年3月5日のいわゆるスターリン暴落の記録（下落率10.0％）を34年ぶりに更新した。
詳細 ブラックマンデー 日経平均を読む知る https:/
第5章 第二次大戦後の景気の波
バブル経済の原点は、戦後間もない頃の日本の政治体制そのものにある。旧ソヴィエト連邦の指導者スターリンの死去による発生した株価暴落のきっかけは、「朝鮮戦争」が終結すると予想したからである。朝鮮戦争は、日本経済再生の起爆剤になっていた。戦争の黒幕は、共産主義勢力拡大を狙うスターリンだったといわれている。スターリンがいなくなれば、アメリカが支援する大韓民国とソ連が後押しする北朝鮮との間で停戦協議が進みやすい。1953年7月27日に発布された朝鮮戦争の休戦協定の条約の一つとして、南北の軍事境界線（現在北緯38度線）を設定することで、合意に達した。朝鮮戦争の勃発は、日本も無縁ではなかった。
先の二次大戦で敗戦した日本は、戦費の増加による借金に苦しみ、未曾有のインフレ状態だった。国民総生産は戦前の６割、鉱工業生産は３割、繊維生産は1割まで落ち込んだ。政府は、物資の不足により、緊縮財政を敷いた。カンフル剤となったのは、1950年6月に勃発した朝鮮戦争だったのである。当時日本国を統治下に置いていた米軍が、現在の大韓民国を支援するべく、大量の軍事物質を必要としていた。地理的に朝鮮半島と程近い日本は、軍事物質の調達を担う。朝鮮半島に出兵した米軍への補給物資の支援、戦車や戦闘機の修理請負などの特需（朝鮮特需）によって輸出や貿易外受取が増加した。商品市況が大幅に上昇したことにより、日本経済は第二次世界大戦前の水準まで回復したのである。
スターリンの暴落について 掲載元 日経新聞 2010年8月17日記事 「復興」襲ったスターリン暴落 日経平均で読む株式市場（16）https:/
朝鮮戦争特需について 掲載元 カブドットコム証券 https:/
朝鮮戦争特需の終焉により、アメリカ軍からの仕事の受注がなく、一転して不況になることが予想された。
当時は二次大戦終結からわずか8年、焼け野原からの復興期にあたる。経済的には1945年を基準にすると、2年後の47年にはインフレ率2,25倍、4年後の1949年には70倍に達していた。アメリカの統治下にある日本は、物資の不足に苦しんだ。1949年に日本に駐留するアメリカの政府GHQの意向により、経済の建て直しを図る。デトロイト銀行の頭取であるヨゼフ・ドッジ氏が舵取りを任され、超均衡財政を立案した。
写真＝ドッジ夫妻を迎え入れる池田大蔵勇人蔵相 掲載元 ブログ 自由と人権 2017年9月19日付 https:/
ただちに実行に移され、緊縮財政を敷いたことにより、戦後復興の足かせになった。ヨゼフ・ドッジの政策による、インフレ抑制を「ドッジライン」という。
不況は1年で終わり、翌1950年に朝鮮戦争の勃発に伴う、特需が発生したことにより、日本の経済は上向いたのである。
写真 掲載元 戦後五年間の歩み https:/
さて1953年7月27日に、朝鮮戦争は停戦状態になり、2022年のいまなお、決着をついていない。日本は、1951年に第一次合理化計画から、設備投資が盛んになり、鉄鋼業が発達する。若い働き手が多く、2020年代のように、福祉予算は少なくてすむ。アメリカに日本の防衛面を任せたことにより、経済面に資金を投資する余裕があったのである。特需効果の終了により、景気は一時腰折れしたものの、54年から目覚しく成長を遂げる。一般に1954年12月から1957年6月まで発生した好景気を「神武景気」という。日本の初代天皇神武天皇の名にちなむ。初代天皇即位時以来の好景気に沸いたことに由来する。
1956年の経済白書には、「もはや戦後ではない」の言葉が記された。家計の所得の増加に従い、耐久消費財ブームが発生する。続く東京オリンピック（1964年10月開催）の招致成功により、1958年から始まった高度経済成長期、三種の神器（冷蔵庫・洗濯機・白黒テレビ）が普及した。高度経済成長期の初め、1958年7月から61年12月までの3年5ヶ月を「岩戸景気」という。神武景気を上回るほどの経済成長を遂げた。名称は、初代神武天皇が祀る日本神話に登場する「天照大神（あまてらすおおみかみ）」に由来する。天照大神が、天の神門に隠して以来の好景気の意味から、「岩戸」と名づけた。
第6章 東京オリンピック特需発生 成長を続ける経済
日本経済は、1957年7月から58年6月に、設備の過剰な投資を抑制するべく、日銀の金融引き締め策により、「神武景気」が止まった。経済成長率が横ばいになる。前の神武景気、後の岩戸景気の成長率の波と比較して、後に「なべ底不況」という。日銀の公定歩合の引き下げにより、内需拡大が相まって、岩戸景気に移行したのである。
岩戸景気に沸く1960年12月、池田隼内閣が「国民所得倍増計画」を発表した。輸出続伸による外貨獲得を主要な手段とする。輸出産業の利益が上がれば、国に収める税収も増える。国は、税金を使って、公共投資を行いながら、インフラ整備を行う。道路・港湾・都市計画・下水・住宅等の社会資本の拡充により、失業者を出さずに、社会保障・福祉の向上等を目指した。翌61年から10年間かけて、実質国民総生産を26兆円まで倍増する目安を立てた。政府が目標に掲げた数値以上に、日本はGDPを大きく増やしたのである。年功序列型の「完全雇用」、弱った人に救助を差し伸べる「福祉国家」としての地位を確立した。
写真 掲載元 政治経済塾 19時間目 日本経済史 http://
64年後半から65年に、東京オリンピック特需の終了により、一時的に「証券不況」が起きる。オリンピックに向けて、交通インフラが大幅に整備され、公共投資が盛んに行われていた。「銀行よサヨナラ、証券よこんにちは」のフレーズがはやったとおり、一般の人々は、低利率の銀行よりも、高利率の証券会社にお金を預けるようになった。
東京オリンピックの閉幕により、インフラ整備を終えた今、公共事業がストップすることが懸念された。特需効果に水を差したのは、日銀の金融引き締め策である。大手証券会社の資金繰りが悪化して、倒産した。
1965年5月に、山一證券（1997年倒産し、社会問題になる）が、日銀特融の対象になり、7月には戦後初である赤字国債の発行を決めた。これまで、税収でやりくりしていた政府は、不況時の設備投資の分を国債で賄うようになる。日銀特融とは、日本政府からの要請に基づき、資金不足に陥った銀行に対する無担保・無利子で貸し出す制度である。金融機関の倒産により、財産を失う人々を出さないように考えられた法律である。バブル崩壊後、木津信用組合、コスモ信用組合、兵庫銀行、山一證券、北海道拓殖銀行の破綻の際にも発動された（旧日本銀行法第25条による特別融資）。
1965年にはじまった国債の発行は常態化し、毎年膨らみ続け、将来不安を煽った。国と地方の借金は1200兆円、赤字国債発行は、東京オリンピックの閉幕まで遡る。
以下 引用 Jr時事通信 2022年12月23日付 国債発行総額、２０５．８兆円＝減額は２年連続―来年度計画
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財務省は2022年12月23日、2023年度の国債発行計画を発表した。発行総額は２２年度当初比９兆2577億円減の205兆7803億円と、当初段階では２年連続の減額となった。新規発行額も２年連続で減少し、35兆6230億円だった。
過去に発行した国債の償還に充てる借換債は、４兆６１０９億円増の１５７兆５５１３億円と全体の７割超を占める。財政投融資事業の財源となる財投債は１２兆円で１３兆円減額した。東日本大震災からの復興費用を賄う復興債は９９８億円だった。
脱炭素社会実現のため発行する「ＧＸ（グリーントランスフォーメーション）経済移行債」（仮称）の当初計画時点の発行額は５０６１億円。２３年度の発行額は計約１．６兆円になる。
市場関係者が注目する入札方式による定期的な国債発行額（カレンダーベース市中発行額）は、８兆３０００億円減の１９０兆３０００億円だった。
＜引用終わり＞
1965年、政府の財政出動により、高度経済成長期は続く。1965年11月から1970年7月まで「いざなき景気」という。日本神話で天つ神の命をうけ日本列島をつくったとされる男神「伊弉諾尊（いざなぎのみこと）」の名に由来する。1966年に、政府は第二次補正予算案で、初めて建設国債を発行した。当時の住宅不足に対応し、建設ラッシュが進む。
ZARDの坂井泉水が生まれた1967年2月6日は、いざなき景気の真っ只中、東京オリンピック特需は終ったものの、政府が発行する国債によって、公共事情費が支えられた。
日本経済は、1970年に、八幡製鐵と富士製鐵の合併による新日本製鐵（新日鉄）が誕生し、より大規模化して、国際競争力を上げる。エアコン（クーラー）、カラーテレビ、自動車の新3種の神器が普及した。国際収支は、1965年半ば以降黒字化が定着する。政府は、行き過ぎた設備投資と、物価上昇を抑えるため、日銀と協力して、公定歩合を6,5％まで引き上げた。国際競争力が高まった日本の起業は、金利が上がっても、影響は最小限にとどまった。1970年の公定歩合の引き上げにより、経済成長率はやや鈍化したものの、1973年のオイル・ショック時までは、上昇を続けた。朝鮮半島特需が終了後の1954年から1973年までの19年間、景気には波がありながら、一環して、プラス成長をとげている。大戦前の昭和大恐慌を踏まえ、行き過ぎた投資を抑えるべく、度々利上げを行った。「神武景気」、「岩戸景気」、「いざなぎ景気」の狭間の経済停滞期は、利上げによる、企業の資金繰りの悪化で、事業規模の縮小に転じていた。
以下 内閣府 第3節 景気回復持続のメカニズムより引用
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「神武景気」、と「岩戸景気」では「国際収支の天井」が制約となって景気が後退局面入りしたが、「国際収支の天井」が制約になるとは如何なる状況だったのだろうか。
1950年代後半から60年代前半にかけて日本経済が経験した「神武景気」や「岩戸景気」は、設備投資や消費といった国内需要の高い伸びに支えられた景気拡張であった。そのため好景気が続くと輸入が増加し、国際収支が赤字化するという構造を持っていた。
当時の為替相場は１ドル＝360円の固定相場制が採られていたが、こうした下では国際収支の赤字が続くと外貨準備が減少する。さら国際収支の赤字が続けば外貨準備が枯渇し、円から他通貨への交換に応じることができなくなる可能性が高まる。このように、固定相場を維持するために国際収支の赤字を放置できなくなることを「国際収支の天井」といった。「神武景気」や「岩戸景気」においては、こうした理由から外貨準備の減少を阻止するために金融引締め等の景気調整策がとられ、これが原因となって設備投資、在庫投資が停滞し、景気が後退局面へと転じることとなった。
なお、「いざなぎ景気」を含む60年代後半以降は、日本製品の国際競争力が強まったことから輸出が高い伸びを示すようになった。このため、好景気が続く中でも国際収支が黒字基調で推移するようになり、「国際収支の天井」が制約となって景気が後退するという状況はみられなくなった。
＜終わり＞
第7章 ブラックマンデー 国内の過剰投資、
過去これまで、オイルショックを含め、外的要因で不況に陥った日本は、若い働き手に支えられ、日銀の利下げ政策にも助けられた。企業がお金を借りて、設備投資を行うと、雇用が創出される。当時は若い働き手により、少ない老齢者の年金を含め、福祉予算が支えられていた。バブル期に襲ったブラックマンデーへの対応も冷静だった。そもそもアメリカの短期的な大幅な株価の下落を意味するブラックマンデーの原因は、ルーブル合意の成果が得られなかったことにある。レーガノミックスの一つの柱である、貿易収支の赤字を改善できず、投資家は不安になり、株券を手放したことが始まりだった。レーガンは、福祉予算を含め、社会保障費を削減したものの、軍事費を増額させたことにより、財政面は悪化していた。足りない資金は、国債で埋め合わせる。国債は発行額が多くなるにつれ、中央銀行の介入により、金利を調整する。中央銀行側は、金融の安定のため、国債の購入を最小限にとどめ、金利上昇を容認した。アメリカを発端に世界同時株安を招いたものの、いち早く回復基調に乗ったのは日本だった。
日銀による低金利政策に支えられ、国内の余剰資金が投資されることにより、株価が支えられたのである。1988年4月に、日経平均株価は、ブラックマンデー前の水準に戻した。
写真 掲載元 THE SANKEI NEWS 2020年7月29日 プラザ合意後「2度目の敗戦」外圧が生んだバブル経済 https:/
当時、銀行側は、審査を簡略して、不動産を購入する人々に積極的に融資していた。土地の売買が盛んに行われた時代、仲介手数料により、不動産業界はますます活気付いた。国土庁が発表する公示地価（毎年1月1日時点）によると、全国の商業地の平均価格は1986年が前年比+5.1％だった。バブル期に突入する1987年には+13.4％、1988年には+21.9％に達する。受容がある首都圏の商業地は、さらに高騰する。1986年は+12.5％、1987年は+48.2％、1988年は+61.1％に達した。活気付く不動産業界で働いていた坂井泉水だが、学生時代から抱いていた歌手になる夢が、ふつふつと沸き起こり、決断を下す。将来をモデル事務所からの路上スカウトをきっかけに、89年3月には退社し、モデルとして活動する。同年４月には、好景気に水を差かねない消費税が始めて導入された。当時の内閣総理大臣を務めた竹下登（1924年2月26日―2000年6月19日）が、「高齢化への対応」と「財政健全」を掲げて、導入に踏み切ったのである。当初は3％からスタートした。竹下登といえば、大蔵大臣として、プラザ合意をこぎつけた会議に参加した張本人である。日本と米国の間では、秘密裏に事が進められていた。出席した竹下登本人は、経済界の反発を避けるため、会議が行われること事態伏せていたのである。問題は、政治記者である。追跡取材する記者を交すため、芝居を売った。自宅からゴルフクラブを抱えて、外に出る。向った先は、成田空港に程近いゴルフ場だった。記者の目をひきつけておいて、ひそかにゴルフ場から脱出して、成田空港に直行し、日空機を避けて、米国の航空機に乗り、出発したのである。プラザ合意は、米国の借金経済を支えるため、日本が犠牲を負ったのである。
詳細 竹下登 プラザ合意について 毎日新聞 余禄 2020年9月22日付け
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第8章 バブル期の弊害、そして崩壊へ
日本経済は、ブラックマンデーで一端株価が下落に転じながら、その後はうなぎのぼりに上昇する。消費増税の影響は、小さく、上がり続ける給料により、人々の購買意欲は高まったのである。1989年末に過去最高の3万8915円に達した。プラザ合意前の1985年初頭と比べて、株価の上昇率3,5倍、東京の商業地の公示地価は3,7倍も上昇した。
ひとたび投資が過熱すると、価格コントロールが難しくなる。足元では、円高が進行したことにより、輸入価格が抑えられ、生活必需品の上昇は起こらなかった。1986年から89年までの物価上昇率は年率プラス0,6％、消費税3％が導入された89年でも、プラス1,4％にとどまっていた。土地や株価の異常な高騰により、大きな社会問題が起こった。再開発に必要なまとまった土地を確保するために「地上げ」行為が横行した。地価の高騰による固定資産税の上昇により、支払いに苦しむ人々は後を絶たなかった。地上げ屋は、土地の管理・維持に困った人々から、買い上げ、さらに高い価格にて転売して、利益を上げたのである。同1988年には、政治の不祥事が起こった。1988年夏ごろに発覚した「リクルート事件」に、政治家が関わっていたのである。当時未公開のリクルート・コスモス株を巡る贈収賄の容疑で、リクルートの江副浩正会長、NTTの真藤恒会長、中曽根内閣の藤波孝生官房長官が起訴されたのである。当時の宮沢大蔵大臣の辞任に始まり、竹下内閣が崩壊したのである。
写真 掲載元 ツギノジダイ 6月18日は何の日 34年前、リクルート事件が発覚 2022年6月18日付け https:/
異常な地価高騰に対しては、1987年に「監視区域制度（届出制）」が創設された。一定程度の面積の土地を買収する際、都道府県知事の認可を得なければならなくなったのである。都道府県知事は、取引価格が不適切と判断すれば「勧告」を行える権限を持つ。自由取引の観点から、都道府県知事は、強制的に中止させることはできなかった。
土地売買の不十分な規制では、銀行の過剰な融資は止まらなかった。本腰を入れて、金融の制度改革と共に、法改正が必要だったのである。日本政府は、ついに奥の手を使って、地価高騰を抑え込んだ。1990年3月27日に、総量規制を敷き、大蔵省を通して、金融機関に行政指導をした。つまり、行き過ぎた投資をしないように、警告を発したのである。年収などを基準に、その3分の1を超える貸付けが原則禁止された。1991年12月に解除されるまで、1年9ヶ月間続く。法には抜け穴があり、住宅金融専門会社（住専）と農協系金融機関は対象外だった。規制から外された2つの金融機関を通して、不動産に資金が流入したのである。後の不良債権は、2つの金融機関が多く抱え込んでいた。さらに政府は、価格高騰対策として、日銀と協力し、1990年8月に公定歩合を６%まで引き上げた。高い金利により、設備投資や不動産市場が停滞したのである。1991年には、所有している土地に課せられる「地価税法」も施行され、いよいよ不動産市場は下落に転じる。税金逃れのために、神話を信じて購入された土地がいっせいに売却された。売り手市場から買い手市場に変わり、販売価格が下がり続けたのである。銀行の方は、自己破産をした債務者から担保にしていた土地を抑えても、価値の低下により、貸した資金を回収できない事態が起きた。いわゆる不良債権の発生である。総額150兆円から200兆円といわれている。日経平均株価は、1990年10月1日には、一時2万円台を割り込んだ。全国の地価は、日経平均株価に遅れること、1992年から下落をした。商業地の全国平均地価は、1992年が-4.0％、1993年が-11.4％、1994年が-11.3％にも達し、同じく東京圏では1992年-6.9％、1993年-19.0％、1994年-18.3％である。
詳細 地価下落表について man@bow 2005年12月21日
1980年代の日本はなぜバブル景気になったのですか？そしてなぜバブルは崩壊したのですか？（その5）https:/
1993年1月に、銀行、生保、損保を含め162の金融機関が、共同出資を行い、不良債権買取機構CCPCを設立した。出資金融機関から不動産担保付きの不良債権を査定し、買い取り額を決める。出資先機関が応じれば、売買成立である。不良債権を回収し、元より高い価格で転売することにより、利益を得ていた。
土地価格の暴落により、大量の不良債権を抱え込む金融機関は、CCPCに安い値段で買い取られていた。金融機関の資金繰りの悪化により、企業は融資を受けられず、事業規模を縮小せざるを得ない。人件費コストを見直すため、新規採用人数を抑え込みながら、リストラを敢行した。バブル崩壊の後遺症は今なお残り、日本は先進国で唯一賃金は上がっていない。企業は、利益分を労働者に還元せず、売上金を蓄えるようになった。2021年9月1日時点で、企業の内部留保額は過去最高の516兆4,750億円に達した。強い経済を取り戻すべく、政策の転換が求められている。
バブル崩壊は、規制が導入された1991年から1993年までの景気後退期を差す。人々が実感したのは、1993年頃ともいわれている。
次回後編では、バブル崩壊時に登場した坂井泉水の行方、また私自身が2023年1月29日（日）に彼女の故郷神奈川県秦野市を旅した様子のレポートである。
サッカーの本日本代表の本田圭佑氏のツィート「日本のラーメンは安い」が話題になっている。米国では、日本食ブームの影響により、大皿一杯で日本円換算で2000円も珍しくないという。諸外国の人々からは、１杯１０００円以下は「安い」と感じるという。https:/
今回、２月６日に生誕５６年を迎えたZARD坂井泉水の人生と共に、第２次世界大戦後からバブル期までの日本経済を見つめていく。
写真 掲載元 Memory〜ZARD/坂井泉水さん〜
止まっていた時間が動き出した 2014年2月7日
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前回の日記 前編 2023年2月5日付け
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本題 ZARDの坂井泉水とバブル経済 3部作（中編）坂井泉水５６回目の誕生日、日本の戦後復興からバブル経済、東京オリンピック特需、プラザ合意、ブラックマンデー、
目次
・第4章 日本経済 戦後復興の好景気 不動産業界で2年間働く坂井泉水
・第5章 第二次大戦後の景気の波
・第6章 東京オリンピック特需発生 成長を続ける経済
・第7章 ブラックマンデー 国内の過剰投資、
・第8章 バブル期の弊害、そして崩壊へ
第4章 日本経済 戦後復興後の好景気 不動産業界で2年間働く坂井泉水
1985年9月22日のプラザ合意に基づき、G5の政府が市場に協調介入に乗り出すと、円高不況が懸念された。為替差損の発生により、海外に投資していた日本企業の業績は悪化した。政府は対策を練り、内需拡大に踏み切った。ルーブル合意が行われた1987年2月まで日本銀行は、5段階にわたり、公定歩合を5％から2,5％まで引き下げた。低金利政策により、企業はお金を借りやすくなり、設備投資を行う。東京の湾岸地域を中心に、新規開発事業が始まった。為替レートの影響がない、国内投資が活気を帯びた。対象となったのは、「土地」や「株」だった。最も恩恵を受けたのは、不動産市場である。
詳細 PICTECT 2020年8月14日付 実践的基礎知識 金融／経済史編（ 8 ）＜バブル景気�◆�
山手線の内側の土地の値段で、アメリカ全土が購入できるとの「土地神話」が広がり始めた。1987年3月に短大を卒業した坂井泉水が選んだ進路は、不動産業界の就職だった。バブル期、新卒の若者は、大挙して就職できる引く手あまたの時代だった。彼女1987年4月から1989年3月までの2年にわたったOL生活については、生前語っていない。売り手市場のバブル期、人員を確保するべく、企業は給料水準を上げた。1987年、一時的にバブル景気に水を差す出来事が起こった。10月19日（月）の米・ニューヨーク株式市場で株価が大暴落したのである。曜日名から「ブラックマンデー」という。東京市場でも、売り注文が殺到した。翌20日火曜日に日経平均は3836円、率にして14.9％急落した。この日の終値は2万1910円。1日の値下がり率14.9％は過去最大の幅となり、2023年現在でも塗り替えられていない。1953年3月5日のいわゆるスターリン暴落の記録（下落率10.0％）を34年ぶりに更新した。
詳細 ブラックマンデー 日経平均を読む知る https:/
第5章 第二次大戦後の景気の波
バブル経済の原点は、戦後間もない頃の日本の政治体制そのものにある。旧ソヴィエト連邦の指導者スターリンの死去による発生した株価暴落のきっかけは、「朝鮮戦争」が終結すると予想したからである。朝鮮戦争は、日本経済再生の起爆剤になっていた。戦争の黒幕は、共産主義勢力拡大を狙うスターリンだったといわれている。スターリンがいなくなれば、アメリカが支援する大韓民国とソ連が後押しする北朝鮮との間で停戦協議が進みやすい。1953年7月27日に発布された朝鮮戦争の休戦協定の条約の一つとして、南北の軍事境界線（現在北緯38度線）を設定することで、合意に達した。朝鮮戦争の勃発は、日本も無縁ではなかった。
先の二次大戦で敗戦した日本は、戦費の増加による借金に苦しみ、未曾有のインフレ状態だった。国民総生産は戦前の６割、鉱工業生産は３割、繊維生産は1割まで落ち込んだ。政府は、物資の不足により、緊縮財政を敷いた。カンフル剤となったのは、1950年6月に勃発した朝鮮戦争だったのである。当時日本国を統治下に置いていた米軍が、現在の大韓民国を支援するべく、大量の軍事物質を必要としていた。地理的に朝鮮半島と程近い日本は、軍事物質の調達を担う。朝鮮半島に出兵した米軍への補給物資の支援、戦車や戦闘機の修理請負などの特需（朝鮮特需）によって輸出や貿易外受取が増加した。商品市況が大幅に上昇したことにより、日本経済は第二次世界大戦前の水準まで回復したのである。
スターリンの暴落について 掲載元 日経新聞 2010年8月17日記事 「復興」襲ったスターリン暴落 日経平均で読む株式市場（16）https:/
朝鮮戦争特需について 掲載元 カブドットコム証券 https:/
朝鮮戦争特需の終焉により、アメリカ軍からの仕事の受注がなく、一転して不況になることが予想された。
当時は二次大戦終結からわずか8年、焼け野原からの復興期にあたる。経済的には1945年を基準にすると、2年後の47年にはインフレ率2,25倍、4年後の1949年には70倍に達していた。アメリカの統治下にある日本は、物資の不足に苦しんだ。1949年に日本に駐留するアメリカの政府GHQの意向により、経済の建て直しを図る。デトロイト銀行の頭取であるヨゼフ・ドッジ氏が舵取りを任され、超均衡財政を立案した。
写真＝ドッジ夫妻を迎え入れる池田大蔵勇人蔵相 掲載元 ブログ 自由と人権 2017年9月19日付 https:/
ただちに実行に移され、緊縮財政を敷いたことにより、戦後復興の足かせになった。ヨゼフ・ドッジの政策による、インフレ抑制を「ドッジライン」という。
不況は1年で終わり、翌1950年に朝鮮戦争の勃発に伴う、特需が発生したことにより、日本の経済は上向いたのである。
写真 掲載元 戦後五年間の歩み https:/
さて1953年7月27日に、朝鮮戦争は停戦状態になり、2022年のいまなお、決着をついていない。日本は、1951年に第一次合理化計画から、設備投資が盛んになり、鉄鋼業が発達する。若い働き手が多く、2020年代のように、福祉予算は少なくてすむ。アメリカに日本の防衛面を任せたことにより、経済面に資金を投資する余裕があったのである。特需効果の終了により、景気は一時腰折れしたものの、54年から目覚しく成長を遂げる。一般に1954年12月から1957年6月まで発生した好景気を「神武景気」という。日本の初代天皇神武天皇の名にちなむ。初代天皇即位時以来の好景気に沸いたことに由来する。
1956年の経済白書には、「もはや戦後ではない」の言葉が記された。家計の所得の増加に従い、耐久消費財ブームが発生する。続く東京オリンピック（1964年10月開催）の招致成功により、1958年から始まった高度経済成長期、三種の神器（冷蔵庫・洗濯機・白黒テレビ）が普及した。高度経済成長期の初め、1958年7月から61年12月までの3年5ヶ月を「岩戸景気」という。神武景気を上回るほどの経済成長を遂げた。名称は、初代神武天皇が祀る日本神話に登場する「天照大神（あまてらすおおみかみ）」に由来する。天照大神が、天の神門に隠して以来の好景気の意味から、「岩戸」と名づけた。
第6章 東京オリンピック特需発生 成長を続ける経済
日本経済は、1957年7月から58年6月に、設備の過剰な投資を抑制するべく、日銀の金融引き締め策により、「神武景気」が止まった。経済成長率が横ばいになる。前の神武景気、後の岩戸景気の成長率の波と比較して、後に「なべ底不況」という。日銀の公定歩合の引き下げにより、内需拡大が相まって、岩戸景気に移行したのである。
岩戸景気に沸く1960年12月、池田隼内閣が「国民所得倍増計画」を発表した。輸出続伸による外貨獲得を主要な手段とする。輸出産業の利益が上がれば、国に収める税収も増える。国は、税金を使って、公共投資を行いながら、インフラ整備を行う。道路・港湾・都市計画・下水・住宅等の社会資本の拡充により、失業者を出さずに、社会保障・福祉の向上等を目指した。翌61年から10年間かけて、実質国民総生産を26兆円まで倍増する目安を立てた。政府が目標に掲げた数値以上に、日本はGDPを大きく増やしたのである。年功序列型の「完全雇用」、弱った人に救助を差し伸べる「福祉国家」としての地位を確立した。
写真 掲載元 政治経済塾 19時間目 日本経済史 http://
64年後半から65年に、東京オリンピック特需の終了により、一時的に「証券不況」が起きる。オリンピックに向けて、交通インフラが大幅に整備され、公共投資が盛んに行われていた。「銀行よサヨナラ、証券よこんにちは」のフレーズがはやったとおり、一般の人々は、低利率の銀行よりも、高利率の証券会社にお金を預けるようになった。
東京オリンピックの閉幕により、インフラ整備を終えた今、公共事業がストップすることが懸念された。特需効果に水を差したのは、日銀の金融引き締め策である。大手証券会社の資金繰りが悪化して、倒産した。
1965年5月に、山一證券（1997年倒産し、社会問題になる）が、日銀特融の対象になり、7月には戦後初である赤字国債の発行を決めた。これまで、税収でやりくりしていた政府は、不況時の設備投資の分を国債で賄うようになる。日銀特融とは、日本政府からの要請に基づき、資金不足に陥った銀行に対する無担保・無利子で貸し出す制度である。金融機関の倒産により、財産を失う人々を出さないように考えられた法律である。バブル崩壊後、木津信用組合、コスモ信用組合、兵庫銀行、山一證券、北海道拓殖銀行の破綻の際にも発動された（旧日本銀行法第25条による特別融資）。
1965年にはじまった国債の発行は常態化し、毎年膨らみ続け、将来不安を煽った。国と地方の借金は1200兆円、赤字国債発行は、東京オリンピックの閉幕まで遡る。
以下 引用 Jr時事通信 2022年12月23日付 国債発行総額、２０５．８兆円＝減額は２年連続―来年度計画
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財務省は2022年12月23日、2023年度の国債発行計画を発表した。発行総額は２２年度当初比９兆2577億円減の205兆7803億円と、当初段階では２年連続の減額となった。新規発行額も２年連続で減少し、35兆6230億円だった。
過去に発行した国債の償還に充てる借換債は、４兆６１０９億円増の１５７兆５５１３億円と全体の７割超を占める。財政投融資事業の財源となる財投債は１２兆円で１３兆円減額した。東日本大震災からの復興費用を賄う復興債は９９８億円だった。
脱炭素社会実現のため発行する「ＧＸ（グリーントランスフォーメーション）経済移行債」（仮称）の当初計画時点の発行額は５０６１億円。２３年度の発行額は計約１．６兆円になる。
市場関係者が注目する入札方式による定期的な国債発行額（カレンダーベース市中発行額）は、８兆３０００億円減の１９０兆３０００億円だった。
＜引用終わり＞
1965年、政府の財政出動により、高度経済成長期は続く。1965年11月から1970年7月まで「いざなき景気」という。日本神話で天つ神の命をうけ日本列島をつくったとされる男神「伊弉諾尊（いざなぎのみこと）」の名に由来する。1966年に、政府は第二次補正予算案で、初めて建設国債を発行した。当時の住宅不足に対応し、建設ラッシュが進む。
ZARDの坂井泉水が生まれた1967年2月6日は、いざなき景気の真っ只中、東京オリンピック特需は終ったものの、政府が発行する国債によって、公共事情費が支えられた。
日本経済は、1970年に、八幡製鐵と富士製鐵の合併による新日本製鐵（新日鉄）が誕生し、より大規模化して、国際競争力を上げる。エアコン（クーラー）、カラーテレビ、自動車の新3種の神器が普及した。国際収支は、1965年半ば以降黒字化が定着する。政府は、行き過ぎた設備投資と、物価上昇を抑えるため、日銀と協力して、公定歩合を6,5％まで引き上げた。国際競争力が高まった日本の起業は、金利が上がっても、影響は最小限にとどまった。1970年の公定歩合の引き上げにより、経済成長率はやや鈍化したものの、1973年のオイル・ショック時までは、上昇を続けた。朝鮮半島特需が終了後の1954年から1973年までの19年間、景気には波がありながら、一環して、プラス成長をとげている。大戦前の昭和大恐慌を踏まえ、行き過ぎた投資を抑えるべく、度々利上げを行った。「神武景気」、「岩戸景気」、「いざなぎ景気」の狭間の経済停滞期は、利上げによる、企業の資金繰りの悪化で、事業規模の縮小に転じていた。
以下 内閣府 第3節 景気回復持続のメカニズムより引用
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「神武景気」、と「岩戸景気」では「国際収支の天井」が制約となって景気が後退局面入りしたが、「国際収支の天井」が制約になるとは如何なる状況だったのだろうか。
1950年代後半から60年代前半にかけて日本経済が経験した「神武景気」や「岩戸景気」は、設備投資や消費といった国内需要の高い伸びに支えられた景気拡張であった。そのため好景気が続くと輸入が増加し、国際収支が赤字化するという構造を持っていた。
当時の為替相場は１ドル＝360円の固定相場制が採られていたが、こうした下では国際収支の赤字が続くと外貨準備が減少する。さら国際収支の赤字が続けば外貨準備が枯渇し、円から他通貨への交換に応じることができなくなる可能性が高まる。このように、固定相場を維持するために国際収支の赤字を放置できなくなることを「国際収支の天井」といった。「神武景気」や「岩戸景気」においては、こうした理由から外貨準備の減少を阻止するために金融引締め等の景気調整策がとられ、これが原因となって設備投資、在庫投資が停滞し、景気が後退局面へと転じることとなった。
なお、「いざなぎ景気」を含む60年代後半以降は、日本製品の国際競争力が強まったことから輸出が高い伸びを示すようになった。このため、好景気が続く中でも国際収支が黒字基調で推移するようになり、「国際収支の天井」が制約となって景気が後退するという状況はみられなくなった。
＜終わり＞
第7章 ブラックマンデー 国内の過剰投資、
過去これまで、オイルショックを含め、外的要因で不況に陥った日本は、若い働き手に支えられ、日銀の利下げ政策にも助けられた。企業がお金を借りて、設備投資を行うと、雇用が創出される。当時は若い働き手により、少ない老齢者の年金を含め、福祉予算が支えられていた。バブル期に襲ったブラックマンデーへの対応も冷静だった。そもそもアメリカの短期的な大幅な株価の下落を意味するブラックマンデーの原因は、ルーブル合意の成果が得られなかったことにある。レーガノミックスの一つの柱である、貿易収支の赤字を改善できず、投資家は不安になり、株券を手放したことが始まりだった。レーガンは、福祉予算を含め、社会保障費を削減したものの、軍事費を増額させたことにより、財政面は悪化していた。足りない資金は、国債で埋め合わせる。国債は発行額が多くなるにつれ、中央銀行の介入により、金利を調整する。中央銀行側は、金融の安定のため、国債の購入を最小限にとどめ、金利上昇を容認した。アメリカを発端に世界同時株安を招いたものの、いち早く回復基調に乗ったのは日本だった。
日銀による低金利政策に支えられ、国内の余剰資金が投資されることにより、株価が支えられたのである。1988年4月に、日経平均株価は、ブラックマンデー前の水準に戻した。
写真 掲載元 THE SANKEI NEWS 2020年7月29日 プラザ合意後「2度目の敗戦」外圧が生んだバブル経済 https:/
当時、銀行側は、審査を簡略して、不動産を購入する人々に積極的に融資していた。土地の売買が盛んに行われた時代、仲介手数料により、不動産業界はますます活気付いた。国土庁が発表する公示地価（毎年1月1日時点）によると、全国の商業地の平均価格は1986年が前年比+5.1％だった。バブル期に突入する1987年には+13.4％、1988年には+21.9％に達する。受容がある首都圏の商業地は、さらに高騰する。1986年は+12.5％、1987年は+48.2％、1988年は+61.1％に達した。活気付く不動産業界で働いていた坂井泉水だが、学生時代から抱いていた歌手になる夢が、ふつふつと沸き起こり、決断を下す。将来をモデル事務所からの路上スカウトをきっかけに、89年3月には退社し、モデルとして活動する。同年４月には、好景気に水を差かねない消費税が始めて導入された。当時の内閣総理大臣を務めた竹下登（1924年2月26日―2000年6月19日）が、「高齢化への対応」と「財政健全」を掲げて、導入に踏み切ったのである。当初は3％からスタートした。竹下登といえば、大蔵大臣として、プラザ合意をこぎつけた会議に参加した張本人である。日本と米国の間では、秘密裏に事が進められていた。出席した竹下登本人は、経済界の反発を避けるため、会議が行われること事態伏せていたのである。問題は、政治記者である。追跡取材する記者を交すため、芝居を売った。自宅からゴルフクラブを抱えて、外に出る。向った先は、成田空港に程近いゴルフ場だった。記者の目をひきつけておいて、ひそかにゴルフ場から脱出して、成田空港に直行し、日空機を避けて、米国の航空機に乗り、出発したのである。プラザ合意は、米国の借金経済を支えるため、日本が犠牲を負ったのである。
詳細 竹下登 プラザ合意について 毎日新聞 余禄 2020年9月22日付け
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第8章 バブル期の弊害、そして崩壊へ
日本経済は、ブラックマンデーで一端株価が下落に転じながら、その後はうなぎのぼりに上昇する。消費増税の影響は、小さく、上がり続ける給料により、人々の購買意欲は高まったのである。1989年末に過去最高の3万8915円に達した。プラザ合意前の1985年初頭と比べて、株価の上昇率3,5倍、東京の商業地の公示地価は3,7倍も上昇した。
ひとたび投資が過熱すると、価格コントロールが難しくなる。足元では、円高が進行したことにより、輸入価格が抑えられ、生活必需品の上昇は起こらなかった。1986年から89年までの物価上昇率は年率プラス0,6％、消費税3％が導入された89年でも、プラス1,4％にとどまっていた。土地や株価の異常な高騰により、大きな社会問題が起こった。再開発に必要なまとまった土地を確保するために「地上げ」行為が横行した。地価の高騰による固定資産税の上昇により、支払いに苦しむ人々は後を絶たなかった。地上げ屋は、土地の管理・維持に困った人々から、買い上げ、さらに高い価格にて転売して、利益を上げたのである。同1988年には、政治の不祥事が起こった。1988年夏ごろに発覚した「リクルート事件」に、政治家が関わっていたのである。当時未公開のリクルート・コスモス株を巡る贈収賄の容疑で、リクルートの江副浩正会長、NTTの真藤恒会長、中曽根内閣の藤波孝生官房長官が起訴されたのである。当時の宮沢大蔵大臣の辞任に始まり、竹下内閣が崩壊したのである。
写真 掲載元 ツギノジダイ 6月18日は何の日 34年前、リクルート事件が発覚 2022年6月18日付け https:/
異常な地価高騰に対しては、1987年に「監視区域制度（届出制）」が創設された。一定程度の面積の土地を買収する際、都道府県知事の認可を得なければならなくなったのである。都道府県知事は、取引価格が不適切と判断すれば「勧告」を行える権限を持つ。自由取引の観点から、都道府県知事は、強制的に中止させることはできなかった。
土地売買の不十分な規制では、銀行の過剰な融資は止まらなかった。本腰を入れて、金融の制度改革と共に、法改正が必要だったのである。日本政府は、ついに奥の手を使って、地価高騰を抑え込んだ。1990年3月27日に、総量規制を敷き、大蔵省を通して、金融機関に行政指導をした。つまり、行き過ぎた投資をしないように、警告を発したのである。年収などを基準に、その3分の1を超える貸付けが原則禁止された。1991年12月に解除されるまで、1年9ヶ月間続く。法には抜け穴があり、住宅金融専門会社（住専）と農協系金融機関は対象外だった。規制から外された2つの金融機関を通して、不動産に資金が流入したのである。後の不良債権は、2つの金融機関が多く抱え込んでいた。さらに政府は、価格高騰対策として、日銀と協力し、1990年8月に公定歩合を６%まで引き上げた。高い金利により、設備投資や不動産市場が停滞したのである。1991年には、所有している土地に課せられる「地価税法」も施行され、いよいよ不動産市場は下落に転じる。税金逃れのために、神話を信じて購入された土地がいっせいに売却された。売り手市場から買い手市場に変わり、販売価格が下がり続けたのである。銀行の方は、自己破産をした債務者から担保にしていた土地を抑えても、価値の低下により、貸した資金を回収できない事態が起きた。いわゆる不良債権の発生である。総額150兆円から200兆円といわれている。日経平均株価は、1990年10月1日には、一時2万円台を割り込んだ。全国の地価は、日経平均株価に遅れること、1992年から下落をした。商業地の全国平均地価は、1992年が-4.0％、1993年が-11.4％、1994年が-11.3％にも達し、同じく東京圏では1992年-6.9％、1993年-19.0％、1994年-18.3％である。
詳細 地価下落表について man@bow 2005年12月21日
1980年代の日本はなぜバブル景気になったのですか？そしてなぜバブルは崩壊したのですか？（その5）https:/
1993年1月に、銀行、生保、損保を含め162の金融機関が、共同出資を行い、不良債権買取機構CCPCを設立した。出資金融機関から不動産担保付きの不良債権を査定し、買い取り額を決める。出資先機関が応じれば、売買成立である。不良債権を回収し、元より高い価格で転売することにより、利益を得ていた。
土地価格の暴落により、大量の不良債権を抱え込む金融機関は、CCPCに安い値段で買い取られていた。金融機関の資金繰りの悪化により、企業は融資を受けられず、事業規模を縮小せざるを得ない。人件費コストを見直すため、新規採用人数を抑え込みながら、リストラを敢行した。バブル崩壊の後遺症は今なお残り、日本は先進国で唯一賃金は上がっていない。企業は、利益分を労働者に還元せず、売上金を蓄えるようになった。2021年9月1日時点で、企業の内部留保額は過去最高の516兆4,750億円に達した。強い経済を取り戻すべく、政策の転換が求められている。
バブル崩壊は、規制が導入された1991年から1993年までの景気後退期を差す。人々が実感したのは、1993年頃ともいわれている。
次回後編では、バブル崩壊時に登場した坂井泉水の行方、また私自身が2023年1月29日（日）に彼女の故郷神奈川県秦野市を旅した様子のレポートである。
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