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2023年01月31日23:57

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境町アートプロジェクトのお話…地方からの文化・芸術発信についての一案

 このアートプロジェクトの大成功を願うと同時に,それをさらに充実した形で実現するためにどうしたら良いのか,僕なりに考えてみました。

 僕が青春時代を過ごした茨城県猿島郡境町こそが自らにとっての故郷であると強く感じていること,その境町は生活にも便利な上に近年は交通の便も良くなっていることなどは,以前にも何度か申し上げたとおりです。また近年では充実した子育て支援などが注目を集め,北関東エリアにおける「住みたい田舎」ランキングの上位を獲得したこともつい先日お話させて頂きましたね。それ以外にも「ふるさと納税」において全国トップクラスの人気を誇るなど,境町行政の秀逸さは広く知られ高く評価されているところです。

 その境町が最近は文化行政においても着々と成果を上げていることは,僕も既に耳にしておりました。僕が住んでいたころの境町には美術に触れる場が存在しませんでしたが,今や世界的建築家である隈研吾氏による建築物が6つも建設され,現在も新たな建物が1つ建設中です。そしてその隈建築の一つは境町で晩年を過ごした画家・粛粲寶の作品を収蔵した美術館であり,境町は今や優れた建築と絵画を鑑賞出来る美術の町としても発展しつつあると言えるでしょう。
 今回こちらの記事では,そうした動きをさらに発展させ充実させる「境町アートプロジェクト」が紹介されています。卯野和宏氏と内海聖史氏というお2人の画家,そして境町の地域おこし協力隊員であるアートプロデューサーである藤原敏雄氏の主導する取組です。卯野・内海両氏は境町のご出身ですが「芸術を鑑賞できる環境が十分でないことに物足りなさを感じていた」ということで,これは両氏と同世代の僕なども「当時の境町はそうだったろうな」と大いに納得するところです。このプロジェクト構想はその両氏が2021(令和3)年頃に橋本正裕境町長と出会ったことを切っ掛けに生まれたもので,それを成功させるために招聘されたのが藤原敏雄氏です。この記事によると卯野・内海両氏は「東京でなく地方から文化・芸術を発信する。町には隈さんの建築というハード面が整っているが、(芸術作品という)ソフト面をいかに充実させるかが課題だ」と意気込んでおられるとのことで実に心強い限りです。具体的な取組としては町内のカフェにおける両氏の作品の展覧会,また先述の隈氏設計の美術館で2月26日まで開催中の「世界のこどもたちの絵画展−同時開催−遠藤彰子展」が既に行われているということで,今後もそうした取組が定期的に行われていくのだろうと思われます。

 この「地方から文化・芸術を発信する」ことを目標とするという境町アートプロジェクトの意義は実に大きなものであり,僕は大成功を心の底から願っています。そして僕としては,このプロジェクトの課題として掲げられている「(芸術作品という)ソフト面をいかに充実させるか」という課題について「学生を含む若手美術家の力を借りる形で解決してはどうだろうか」という思い付きを抱いてしまいました。
 日本には数多くの美術大学や専門学校(以下「美術学校」と総称します)がありますが,そうした学校は通常の大学・専門学校と違って「既に高度な技術を持っていないと入学すら出来ない」という。少々特殊な存在です。他の学部であれば,たとえどれほど難関大学であっても医学知識ゼロで医学部に,また法律知識ゼロで法学部に入学可能ですが,美術学校ではそうしたことは有り得ません。そのためそうした学校の学生さん(以下「美術学生」と総称します)たちは学生でありながら既に高い技術を持った専門家です。他の分野で言えば,既に医師免許を持ち臨床医としての技術を習得済みの大学院医学研究科の学生に近い存在と言えるでしょう。僕はしばしば美術学生による美術作品の鑑賞に赴きますが,そうした作品の中には美術館に収蔵されている歴史的傑作に引けを取らない優れたものも少なくありません。素人の僕が言うことでは信用出来ないとお考えの方もおられるでしょうか。しかし現に美術大学で学んだ経歴をお持ちの卯野・内海両氏にお尋ねになればご両者ともきっと「打越の言うとおり」と仰ることでしょう。
 しかし専門家であるにも拘らず,美術学生たちが日々制作している作品の市場価値は驚くほど低い。展覧会には展示作品販売を兼ねたものも少なくありませんが,そこで美術学生による作品につけられた値段を見ると「これでは材料費にも満たないのではないか」と感じさせられることが頻繁です。ごくごく例外的な存在を別にすると学生の作品には殆ど値段がつかないらしく,僕は実際に美術学生の方たちから「奨学金を受賞した優秀作が誰からも買い取ってもらえず,美術学校裏手のゴミ捨て場に投棄されているのを見た」などというお話を何度か耳にしています。
 では,境町アートプロジェクトにおいて美術学生作品のコンクールを兼ねた展覧会を開催し優れたものについて積極的な買上を行い,或いは入賞者に新作を発注してそうした作品を機会に応じて町内で展示してはどうか。現状の安値ではなく正当な対価を支払ったとしても,かなりリーズナブルに美術作品というソフトを充実させることが可能です。そこで買い上げた作品を活用して展覧会を頻繁に開催し色々な作品を展示することが可能になりますが,その意義はそれに留まるものではありません。美術学生の中には先輩の作品を観て参考にしたいと考えている方も少なくありません。もし「境町に行けば鑑賞出来る」ということになれば,彼らは頻繁に境町に足を運んでくれることになるでしょう。そうした美術学生の中から将来の境町アートプロジェクトを担う人材をヘッドハンティングすることも一案ですね。更に言えば「境町買上」というのは美術学生にとっては正当な報酬とともに名誉な肩書にもなり,有望な若手美術家への支援としても機能するに違いありません。
 無論,そうした形で支援対象にすべきは美術学生だけに限りません。世の中には独学で,或いは大学等では別分野を学びつつ個人的に学ぶという形で美術学生に匹敵する力量を身に着けた人も居るし,また美術学校卒業間も無しの若手社会人美術家も居られます。そうした方たちの作品についても取り扱っていくことは,この取組の更なる充実に資することでしょう。

 僕の故郷のお話,また美術に関連するお話ということで,思わず夢が広がってしまいました。無論,これは素人の思い付きでしかありません。しかし僕としてはこのプロジェクトの大成功で境町が全国から大勢に注目されること,そして美術というものが更に盛んになっていくことを僕は願っています。その際に僕の思い付いたアイデアが役に立つことも有り得ないとまでは断言出来ず,このような形で文章に書かせて頂きました。
 そんな将来の夢を抱きながらまずは実際に「境町アートプロジェクト」で行われている取組に足を運び,故郷における優れた取り組みについてこの目でしっかりと観て参りたい。僕は今,そのように思っています。



隈研吾さんの建築×室内アート 文化と芸術 境から発信 「地元の環境不十分」内海・卯野さんら主導
https://www.tokyo-np.co.jp/article/226553
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