Jホラーの金字塔「呪怨」を知らない人にはちっともピンと来ないかもしれませんが、すでにホラーファンにはお馴染みの映画ですから、これに例えさせてください。
恐怖以外のすべてを削ぎ落とした、ウルトラソリッドなオカルト映画。
映像、音楽、演出、すべては恐怖シーンを盛り上げるための要素としてのみ存在し、それ以外のドラマは一切描かない。
これは、まさに「呪怨」と同じだと思ったのです。
「呪怨」のスタイルについては他のレビュー、例えば「呪怨」のアメリカ版である「ザ・グラッジ」でも書きましたが、改めて簡単に書きたいと思います。
前述の通り、「呪怨」は恐怖シーンのための映画です。
短い章によって区切られ、それぞれのクライマックスは恐怖シーンとなり、そこが終わると別の人間の視点による新たな章が始まります。
時系列もバラバラで、これはより怖いシーンを後に配置するためです。
登場人物の背景も詳しく描かれず、恐怖シーン後の顛末もしっかり描かれない。
ここまでクールにドラマ性を排除したホラー映画はなかなか画期的だと思います。
また、呪いの存在も独特です。
通常、呪いは恨みの起源となる人物、例えば自分を殺したとか、苦痛を与えた人間にのみ向かうものですが、「呪怨」ではまったく無関係の人間も呪われます。
「呪怨」の呪いは感染病の様なもので、その場所に行った人間、そしてその人間に係わった者にまで影響するのです。
非常に不条理な話ですが、この方が怖いのは間違いありません。
古典的なホラー映画では、幽霊や悪魔といった存在に対抗する神父や霊媒師が登場し、対決するのが基本です。
あるいは、呪いから逃れる解決法を探るといった物語になっていきます。
そして、真摯に向き合った人間は何かしら報われるものです。
でも、その部分はもう恐怖シーンとは別の話です。
ですから、「呪怨」にはそういった展開も存在しません。
とにかく邪悪で容赦の無い呪いに、すべては黒く塗りつぶされるのです。
「呪怨」についてばかり書いてきましたが、これらのほとんどは同様に「ダーク・アンド・ウィケッド」の説明にもなっているのです。
時系列をバラバラにする手法は取り入れられていませんが、「月曜日」から始まる一日ごとが章立てになっており、クライマックスは当然恐怖シーンです。
序盤は比較的静かですが(しかし、おぞましい事は突然起きます)、終盤は恐怖の密度がグッと増していきます。
こういうオカルト映画で鼻白みがちな、いかにも悪魔的な化け物が「どうも、俺です」と登場したりもしません。
アメリカのオカルトホラーにおいては、なかなか画期的だと思います。
また、この映画で起きる恐怖シーン自体も、Jホラーで起きるものに近いと感じました。
不条理で、邪悪で、嫌らしい。
不快で胸糞。
ただ、呪怨の様なインフレ化、つまり、ちょっと笑ってしまうレベルの恐怖シーンについては抑えられていると感じました。
この映画の評価は当然ながら分かれていますが、「どうしてこうなったのか」「その後どうなったのか」といった興味に何も応えてくれない点について、多く批判されていました。
その点を踏まえての、今回のレビューとなりました。
勢いのあった頃のJホラーを思わせる作風ですので、かつてのJホラーファンには是非挑戦していただきたい作品です。
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