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2022年06月26日14:02

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巨星堕つ(Reprise)

僕もリアルタイムには知り得ない事だが、
1970年頃の日本のヒーローと云えば、誰だったか想像がつくだろうか?

あるアンケートでは、
3位が伊丹一三(のち十三)、
1位が断トツで三島由紀夫と
作家でアーチスト的な人物が選ばれる中、
2位が石原慎太郎だった。石原は既に作家として名を成し、国会議員になっていた。

マルチタレントという呼称は余りにも軽薄で彼らにはそぐわないかも知れないが、
敢えて誤解を恐れずに言わせて貰えば、
「◯◯で◯◯の、作家◯◯さん」と云う紹介になってしまう“マルチタレント”が持て囃された時代だったと言えるだろう。

同年、戦後復興の象徴の一つである大阪万博があり、
首都復興の象徴に過ぎなかった東京五輪に加えて、
文化的精神的国際的に近代化を国内外に普遍的に誇示する
万博が果たした役割は大きい。
正直、「それがナンボのもんじゃ」と言いたくなるイベントだと
現代に生きる我々は批判できるが、
不正確であったとしても未来予想を具現化し、
宇宙や電波や国際的協調などそれまで体感できなかった未来思考を当時の国民に与え、
ずっと継続していた「戦後」に一つの区切りをつけた事実は大きい。

三島はしかし、敗戦という心の傷とも呼べる挫折感を
戦中からのエリートの矜持を保ちながら政治活動を続け、
遂に社会に直訴して自決した。
国民の多くは、というより旧体制と新体制の両方を知る国民の一定数の人は、
もうどこにもない筈の大和魂や天皇中心の社会を訴えるヒーローに
ある種の喝采を浴びせたのである。

時同じくして活躍していた文壇の寵児だった石原は、
日和見というには余りにも勢いがあり、
思想家の側面を見せながら内容は移ろいやすく、
彼自身が体制批判をしていた自民党に与するなどして、
後に大臣まで務め、
最後は下手な小国より規模と権限が大きいとされる
都知事にまでなった男である。
彼が人気した理由は奥ゆかしかった日本人から
堂々とした姿勢を取り戻したからであって
思想や主張に同調したわけでは無い。
その頃には国民はイデオロギーや宗教、ナショナリズムというものに対して
強いアレルギーを持ち始めていたから
主義主張より人物に支持するようになっていたのである。
石原の思想や主張は彼を支持してから
その内容として受け入れられた側面が強いのである。

その代表格である「石原裕次郎」は、
本人にも高い魅力があったのは間違いないが、
兄である石原が売り出した希代の偶像である。
自身の小説を映画化する時に、主役に抜擢したに過ぎない。
まさか後世に語り継がれる超が付くスーパースターになり、
自分より早く鬼籍に入り半ば神聖化される程とは
当時は予測しなかっただろう。
その裕次郎に対しても「俺の方がハンサムだ」と嘯く程に石原はスター性があった。

僕が幼い頃に、父親に散髪屋に連れられて行った時、決まって父は
「慎太郎カットにしてやってくれたまえ」
と理髪師に注文していた。
担当する理髪師が代わる度にその仕上がりが区々だったので、
幼かった僕は父に都度尋ねた。
「慎太郎カットって、どういう事なん?」
「そうかあ、知らないかあ。石原慎太郎を。格好良い髪型の事さ」
いつも父はそうやって僕の質問の答えにならないような答えで返して来て
最後まで理解不能だった。
帰宅すると母親が不満げに
「また、そんな髪型にして」
と父親に決まって文句を言うのである。

つまり、父親は「何となく石原を支持」しており、
母親は「何となく石原は嫌い」だったのである。
僕は成長するにつれ、彼の人格は認められなくなるが
言動や思想については指示できる部分がある事にも気づいた。
勿論、差別主義的な部分は感覚的には嫌悪したし、
問題発言は問題発言だと理解していたが
実現に向けた強引さなどには感心した部分はあるし、
帝都の帝都たる矜持については彼クラスの図太さがないと
維持も出来ず、形作る事は出来なかっただろう。

もっと言えば、いちいち弁明したり主張したりしないで
醜いところはコソコソっと済ませている権力者は
他に山ほど居るのに、彼は滅茶苦茶な理屈を振りかざしながら
ずっと胸を張っていたじゃないか。

彼が反共で国粋主義だという人もあるかも知れないが
本当は国民の心の奥底にもっている部分を
「歯に衣着せず」口にしているだけだったのではないか。
だから、支持されたのである。
彼の書籍は何冊か読んだが、評判よりは大した事は無かった。
そう思うのである。

■ジャーナリスト・斎藤貴男「あえていま、石原慎太郎を批判する」
(AERA dot. - 06月22日 11:00)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=173&from=diary&id=7005344
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