5月20日(金)。博多座で公演中の舞台『千と千尋の神隠し』を観劇。
約3時間(途中休憩1回)。全席使用、補助椅子も出て大入り満員。
翻案・演出はジョン・ケアード(英)。
観たのは千尋=上白石萌音版。他の配役は以下の通り。
ハク=醍醐虎汰朗(『天気の子』の主人公・帆高の声)
カオナシ=辻本知彦、リン(千尋の母と二役)=妃海 風(ひなみ ふう)
釜爺=田口トモロオ、湯婆婆=朴璐美
千尋役のWキャストの一人、橋本環奈さんがコロナ陽性で前日まで博多座は休演。
状況次第ではこの日の開演も危ぶまれる中を無事に観劇出来て良かったです。
開場前の博多座周辺。写真の外は既に熱気でいっぱい。
お洒落な赤絨毯の階段。
グッズも様々。博多座限定のお土産も。
舞台は原作である映画に忠実な展開で、更に舞台ならではの演出を加えた作り。
どうやるのだろうと思っていた冒頭の車で走る場面は車のセットの両側に過ぎ去る風景の映像をプロジェクションマッピングで流す仕組み。
映像はこのくらいで積極的には使わず、極力アナログな技法を選択している印象。
例えば、千尋が花の咲き乱れる中を走り抜ける、映画ではデジタルを使って印象的に仕上げていた場面も、舞台では花々の衣装を着た役者たちが千尋を取り囲むという表現にするなど。
千尋が湯婆婆の魔力で部屋に引き寄せられる場面も、幾つもの部屋の扉を小道具で作り、千尋のTシャツに仕掛けをして胸の服地がピンと張る形にして、扉を次々と通り抜けるという風に。
ハクと千尋が空を飛ぶ雄大な場面も二人を黒衣(くろこ)たちが人力でリフトして空中飛行を表現。
よく考えられています。
パペットも多用していて、青蛙やススワタリ、坊ネズミなどはパペットを人が操る仕組み。青蛙を終始中腰で操る、おばたのお兄さんの体力がすごい。
釜爺の長い腕も作り物で、役の田口さんを入れて全部で5人が演じる。
ハクの白竜も作り物で竜踊り風に棒で操演。
一方、大根のような姿の神様や坊は着ぐるみ風。湯婆婆の部屋にいる頭だけの三人組は一人の役者が自分の顔と左右の手にそれぞれ顔をつけて一人で演じる。
すごいマンパワーの舞台です。
オクサレ様、実は河の神様を首尾よく送り出した湯屋一同が喜び踊る場面はもう舞台の生の迫力で圧巻。ラストで千尋を送る祝祭感も格別だ。
特に舞台ならではの演出があったのが、千尋たちが電車で銭婆の元へ向かう場面。
実際に乗り降り出来る車内のセットを組み、座席に座る。
千尋たち以外の影の乗客は黒いベールを被った姿。
映画ではホームに一人佇む少女が印象的だったが、舞台では電車から降りるのを躊躇う少女を設定、先に降りた女性客が手を差し伸べて促すという風に脚色、映画の持つもの哀しさ、この世ならぬ場所へ向かっていることを感じ取らせて見事だった。
千尋役の萌音さんは終始力一杯の好演。おにぎりを食べながら泣く場面など10歳の女の子にしか見えず、思わずもらい泣き。
舞台中央に更に回り舞台が作られ、そこを湯屋や湯婆婆の部屋に見立てる仕組み。
そこに真っすぐに立てかけられた梯子が湯屋の階段や通路に見立てられ、そこを何回も昇り降りする千尋の足取りが、最初はか弱くおぼつかないそれから次第に力強さをつけてくる様を表現、この運動量と熱演に頭が下がる。
フィナーレの挨拶ではダダダ…とその場かけ足する無尽蔵なパワフルさを見た。
ハクは映画から抜け出たような美しさと凛々しさ。動作の端々に人間ではないと思わせるポーズが入って抜群。
映画から抜け出たと言えばリンさんが正にそれで、見た目も雰囲気も声の調子も映画そのもの。千尋の母と二役というので驚く。
そして湯婆婆。映画の声も務めた夏木マリさんでも観たいと思ったのだが、どうして、さすが朴璐美さん。声に力があってすごい迫力。メイクも映画にすごく寄せていて、そのものに見える。
カオナシの表現も面白かった。黒い本体に映画そのままの仮面、体に黒い網状のものを纏って、怪しいダンスを踊る場面では何かヤバイものが来た感がすごい。
青蛙や兄役を飲み込んで肥大化していく場面は黒い衣装に何人もの役者さんが入って中から膨らませる。舞台ならではの工夫が凝らされて見応えがあった。
筋立ては映画に忠実、ほぼ全ての場面を舞台上に再現。映画と同じ感慨がある上に、目の前で人の力で演じられることのパワーが伝わってきて満足感も高い。
登場人物の見事な再現も仮装大会に終わらず原作映画へのリスペクトが伝わってくる。
最後の挨拶で舞台後方が開き、実はオーケストラの生演奏と知ってびっくりと同時に感激。豪華な体験だった。音楽は久石譲さんのものをベースにアレンジ。
この舞台、東宝創立40周年記念作品とのことで、ナウシカ歌舞伎のように映画への転換も期待したい。
博多座のロビーにもいろいろ。

ログインしてコメントを確認・投稿する