mixiユーザー(id:6231411)

2022年05月25日01:10

78 view

棋界を憂う僕

無双かと思われがちな藤井五冠だが、
この番勝負の随所に危うい部分が散見されたが
彼は見事にこれを乗り越えて全て勝利に持ち込んだ。

本項で度々触れたからお気付きかも知れないが、
当方は趣味の一つに「将棋」があり、
変な話だが「観る将」の癖に棋界にはあまり詳しくない。
しかも何の因果か仕事でも深く携わる事になってしまったため、
業務を通じて知った事はここで詳らかにする事も出来ない。

近年は「藤井聡太」の登場で俄にブームめいた状況にある棋界だが、
当方は冬の時代も真冬の時代も氷河期すらも知る身であり、
実はこれを手放しに喜べない。
否、待望の「新世代のヒーロー」登場は万歳三唱したい気持ちだが、
それとは別に彼の登場で危うくなった部分もある。
それは古き伝統の権化とも呼ぶべきタイトル戦の在り方、である。

今から少し前になるが、名人位と並び棋界最高峰のタイトルである竜王位に
三浦弘行九段が挑戦者に決定した時、彼にあらぬ嫌疑が掛けられたのである。
それは「ソフト指し」と呼ばれる、AIを利用したチート行為である。
結果的に彼の不正を示す証拠のようなものは一切見付からず、
その上、タイトル挑戦権は剥奪され、
その後身分回復等あらゆるリカバリーが図られたが
三浦九段の再挑戦は未だかなわず、
結果論になるが、
彼にとって最後の、千載一遇のチャンスを失ったと言っても過言ではない
悲しい冤罪被害となった。
彼の身の潔白が証明された(或いは嫌疑が晴らされた)のを受け、
時の連盟の会長だった、かつてのスーパースターで「光速の寄せ」で知られる谷川浩司九段は、休養し会長職を辞任した。

それくらいの腹切りがないと、三浦が気の毒である。
谷川が会長に就任した時は既に棋界は真冬であった。
同年代の「チャイルドブランド」と呼ばれる棋士とともに、
20代半ばの羽生はまだ若手の部類にあった谷川からヘゲモニーを奪取し
2018年まで四半世紀以上何れかのタイトルを保持し、
前人未到の「永世7冠」の地位を得る。
それは羽生の絶対王者を意味していたが、
同時に中堅棋士たちには引導を、若手棋士たちには絶望を与える形になったのである。

様々な新手(しんしゅ、新しい戦法や指し方)が開発され、
多くの挑戦者が羽生に挑んだがその牙城を崩すには至らず、
遠い未来の次世代のスーパースターの登場まで待たねばならなかった。
これは、勝負の世界では当然でありあるべき姿だが、
ファンそれもライトなファンには退屈を与えるだけの時間となり、
著しく寒い時代となってしまった。
想像して欲しい。
仮に巨人が今から10連覇、クライマックスは無難に勝って、
日本シリーズでも毎年4連勝していたら、野球は盛上るだろうか。

 その最中に、今から15年ほど前に勃発した
日本女子プロ将棋協会(LPSA)を巡る騒動は更に深刻であった。
ご存知の方も多いと思うが、
これまで多くの女性がプロ棋士を目指してその登竜門であり選考機関である
研修会・奨励会の門を叩き挑戦してきたが、
実はただの一人も“女性棋士”は誕生していない。

半年に2名ずつ(その他の規定もある)しかプロ(四段)にはなれず、
極めて難関である事は間違いないが、
あと一歩のところまで迫った女性は数多く居るが、誕生には至らないのだ。
これは実力によるものであり、性別による何らかの格差に因るものではない。

では、テレビ対局では聞き手を務めたり、
女流棋戦を戦っている世間にあるプロの女流棋士とは何か?
彼女たちはプロ棋士になれなかった
もしくはならなかった「女流棋士」なのであり、
彼女たちが生きていく道筋として女流棋戦や聞き手の仕事や
普及の仕事が多く回されるなどしているのである。

この日本将棋連盟(以下、連盟)が示した「女性救済の道」に
不服を訴えた一部の“女流棋士”とその支援者グループが発足させたのが
LPSAだったのである。
連盟からすれば、門戸は女性へも常に開いており、
シビア過ぎるプロ(=四段)への道にそぐわない女性への救済策として「女流」を創設したのであり、
これに不服とはけしからん、と主張。
LPSAは連盟の女性への不当な扱いを根拠に、
団体独自にプロ認定を行い、独自のプロ棋戦を創設するなど横暴な独立劇を展開した。
(これは喧嘩を売っていると受け止められても仕方ない)
連盟のプロ棋士の定義はどちらも満たして居らず、
その上連盟主催の女流棋戦にも参加させろと言い出して、
当時の連盟会長だった米長が怒り狂ったのは道理である。

当初は当時の女流棋士の第一人者である清水市代を始め錚々たるメンバーが団体発足に名を連ねたが、
LPSA加盟棋士には連盟主催棋戦に参加させないなどの方針を示した勧告に屈し、
ごく一部の離反に留まった。
清水のライバルでもあった中井広恵もその一人であるが、
プロを目指した女性が男性の添え物としてのみ生き長らえるという
「妾」のような扱いに我慢ならないと感じた現役女流棋士も多かったようだ。
(それには同情の余地はある)
この泥仕合は女流棋士の活性化には繋がったが、
競技団体としての連盟の不備やジェンダー的問題発言を露呈してしまい、
連盟はただただ傷付いただけに終った。

米長の前の会長は、米長が目の上のタンコブとしていた中原誠であった。
中原は谷川台頭までの棋会第一人者だったが
弟子で美人棋士であらゆる意味で有名だった林葉直子(師匠は米長)
との不倫関係がもつれ、
ストーカー行為を暴露される大スキャンダルが復帰後もつきまとい
彼の会長就任はイメージダウンとなり冬の時代の端緒であった。

98年の中原によるストーカースキャンダル以前から暗い話題が多かった将棋界だが、2015年辺りから加藤一二三九段や桐谷さんこと桐谷広人七段らが注目を集めるようになり風向きが変わったことで棋界のイメージが転換し始めたと言って良いだろう。

だから、ここ数年の明るくて楽し気なイメージは仮初のもので
健全で恒久的に愛されるイメージを確立するためには
近年得られたものだけで維持するのではなく、
もっと人間そのものがオープンになるような将棋界が続かないと
逆に心配になってしまうのである。
とりこし苦労か?

■藤井五冠が叡王初防衛=3連勝で出口六段下す―将棋
(時事通信社 - 05月24日 19:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=6968995
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年05月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    

最近の日記

もっと見る