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2022年04月20日21:24

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「日本のロック、フォークの名盤10選」第9回 大森靖子「PINK」

大森靖子「PINK」(2012年、PINK RECORDS)

ジョン・レノン「ジョンの魂」以来の
自己をさらけ出す傑作アルバム。

20代の女性の苦悩、怒り、絶望を
これほどあからさまにさらけ出したアルバムが
かつてあっただろうか?

前奏曲のような1曲目「キラキラ」に続く
「パーティドレス」は、
風俗嬢が客からもらった金で
パーティドレスを買うという歌。
「パーティが始まるよ!」の
かけ声がなんと悲しく響くことだろう。
「ときどき手首を切らないと
幸せはわからない」という歌詞も驚かされる。

音楽の美しさもずば抜けていて
イントロや間奏でギターを
のめり込むように弾きまくるのも
凄みを感じさせる。

優しいメロディに、ぞっとするような
寂しさ、孤独をにじませた
「さようなら」のあと、
すさまじい怒りをぶちまけ、怒鳴り散らし、
狂気をさらけ出す
「PINK」。
この歌に関しては、もはや説明する言葉さえ
見つからない。

「ジョンの魂」と比較して言えるのは
ジョンには、「ゴッド」の歌詞にあるように
「神も信じない。ブッダも信じない。ビートルズも信じない。
自分とヨーコだけを信じる」。
絶望しながらも、ヨーコという救いがある。

それに対し、このアルバムには
救いがないのだ。
怒り、悲しみ、そして絶望。
そこに2012年という時代を感じるのは
自分だけではないだろう。

全6曲。20分足らずのミニアルバムだが
十分過ぎる内容だ。

アルバムを通し、ギターの活かし方も
抜群に上手い。
怒鳴り、わめきまくる「PINK」も、音楽として
不思議なくらい、上手くまとまっている。

発売から10年経ったいまも
同時代の音楽としての輝きを失っていない。
病んだ時代を刻印する名盤だ。

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