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2022年04月02日09:34

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民族って何だろうか?

先日、図書館で「不思議の国ベラルーシー、ナショナリズムから遠く離れて」服部倫卓 著 という本をみつけ、借りて読んでみた。

ベラルーシはウクライナと同じように旧ソビエト連邦の構成共和国の一つであり、またウクライナ同様、東スラブ人に区分される人たちの国である。

この本で元外交官の著者が “ベラルーシの国益を保つためにはベラルーシ・ナショナリズムが必要だ” と主張している。

ベラルーシが独立国として存在したのは、ソビエト連邦が崩壊してからまだ30年程度。

それまで一度も存在したことのない国であり、国の名前は、ロシアの西方にあり、タタールの支配から免れたという意味で、白(純粋な)ロシアという意味。

かつてはポーランドの東部であり、リトアニア公国の一部であり、ロシア帝国の西部であった。

ここが連邦構成国になったのも、ロシア革命政府がポーランドと国境を接する地域を違う国とすることで、西方の国々との間に緩衝地帯を設けたかったから。

でも所詮はソビエト連邦の一行政区にすぎず、まさか独立して国になってしまうとは考えられていなかった。

こんな地域がソビエト連邦の崩壊により、独立国になってしまった。

著者はベラルーシ民族なるものがあると主張するが、ベラルーシ語とされる言語は、古代スラブ語の方言の一つにすぎず、今は使われてもいない。

ただこの方言を一つの言語としてピックアップし、現代語を作り、「俺たちはロシアとは違う民だ」と主張しているのだが、国民のほとんどはロシア語を話し、ベラルーシ語は日本語でいえば平安時代の大和言葉みたいなもの。

国益のため東スラブの古典語の一方言を現代風にし、それを学校で教え、ベラルーシ民族というものが存在することを国民の意識に植えつける。

なるほど民族ってこうやって作られるんだなとつくづく感じた。


実際、民族なんてものは、宗教みたいなもので、自分がそう思っているからその民族であり、血縁にしても、てんでバラバラ。

ではロシア人なるものとは何かとなれば、一般には東スラブ族とされるが、ただ東スラブ族の風習を持ち、東スラブの一言語、ロシア語で意思疎通をしているにすぎない。

ギリシア、ゲルマン、アラブなどなどいろいろな人たちを先祖に持つグループであり、まさにてんでバラバラ。


ベラルーシの政治家が「我々の国はアメリカ合衆国みたいなものだ」と言っていたが、実際、ロシアの歴史はアメリカ合衆国の歴史に似ている。


こういった背景を知ると、今のウクライナ戦争も違った見方ができる。

まあいわばアメリカの南北戦争みたいなものであり、旧ソビエト連邦のロシア・グループ諸州とウクライナ・グループ諸州が、方針の違いから戦争しているようなもの。

グループの結束を高めるため、民族を作り出し、言語もルールも変えてしまう。

なるほど民族とはこうやって作られるものかと再度納得した。


この本では、ベラルーシ民族を作るため、ベラルーシ国内にある遺跡をベラルーシのシンボルにしたり、地域の一風習を全国に広め、独自性を持たせようとしている。

歴史とは本来存在しないはずの民族を生み出すための物語。

これは遠い外国の話ではなく、日本でも事情は変わらない。
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