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2022年02月26日02:21

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「日本のロック、フォークの名盤10選」第2回  高田渡「ごあいさつ」

前回取り上げた、岡林信康は
名前だけは知っていたが
高田渡は名前さえも知らなかった。

高田渡のことを知ったのは、テレビで
ドキュメンタリー映画「タカダワタル的」(2004年)の
PRをやっているのを見た時であった。
独特の、不敵な面構えが印象に残った。

その映画は観ることができなかったが、
高田の死後に発表されたドキュメンタリー映画
『まるでいつもの夜みたいに〜高田渡 東京ラストライブ』
(2017年)は観た。
高田渡の死の年のライブ映像で、50代半ばだったが、
かなりの年齢の老人に見えた。
ギターを弾き、歌う、その姿からは
強烈な孤独を感じた。

同じ時期に高田のドキュメント番組が放映されるなど
だんだん彼の存在が身近になってきた。

高田渡「ごあいさつ」(1971年、キングレコード)

高田渡の3枚目のアルバム。
キングレコードはメジャーレーベルだが
デビュー盤と2枚目は岡林信康「わたしを断罪せよ」と同じ
URCだ。

全16曲。どの曲も素朴で聴きやすいものだが、
繰り返し聴くと、いろいろなこだわりに気づく。

高田自身による歌詞は4曲のみ。
それ以外では、谷川俊太郎、吉野弘など
現代詩人の詩に曲をつけたものが多い。
高田は現代詩をフォークに乗せたスタイルを確立した
シンガーと言われているのだ。
歌詞に対するこだわりは相当あるようだ。

ギタープレイは、あくまで歌の伴奏と位置づけているようだが
かなりの腕前のようで、特に
「アイスクリーム」など、瞠目すべき上手さである。

歌詞やギタープレイに徹底的にこだわりながら
素朴なフォークソングを作り、歌っているという趣きがいい。

もちろんラブソングはない。
「失業手当」や、「シラミの旅」のホームレスなど
貧しさ、生活の苦しさを歌ったものもあるが
その曲調は暗いものではなく、むしろ淡々としていて
音楽の楽しさを損なうことはない。

「値上げ」の歌詞も面白い。

このアルバムでは、はっぴいえんどが参加している。
高田は、自作自演にロックバンドが加わるのを嫌っていたそうだが
ここでは、それが非常に効果的だ。
特に「失業手当」のブルース、「シラミの旅」のロックンロールは
最高だ。
はっぴいえんど参加のおかげで、ロックファンにも
アピールする名盤になったということができる。

なにげない日常や、あるいは
労働者の貧困などを歌った
ピュアで素朴なフォークアルバム。

このアルバムを聴けば、歌謡曲やJpopが
いかに商業主義に毒されているかが
誰もが気づくのではないだろうか。
そういう意味で、多くの人に聴いてほしい作品だ。
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