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2022年02月19日23:19

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機動戦士ガンダム考 第3稿

https://mixi.jp/home.pl#!/diary/6231411/1981603516
の続き。
予め断っておくが、この連載は本稿で一旦区切りとする。

そもそも「機動戦士ガンダム」は
子供向けのロボットアニメだと考えて軽く流している人も居るが
実は全く違う。
確かに後年のロボットアニメが子供向けでなくなった事から
「ロボットアニメ、宇宙戦争アニメは子供だけのものでは無い」
という概念を求める事はさほど難しい事では無い。
しかし、ガンダム以前のそれとガンダム以降のそれは
苦笑を禁じ得ない程に位置づけが変わっており、
ガンダムという作品が大人に対してアニメの門戸を開いた、
実に大きな意味を持つ作品であった事を理解しておきたい。

とはいえ、それは1979年の事であり
すべて過去の事だと片付けてしまっては議論は始まらない。
手塚治虫が切り開いたアニメーションという娯楽文化はしかし
既に発達していた欧米のアニメ文化に「日本の」という
独自の味付けを行ったという意味で大きな功績があるのと同時に
ガンダムがそれを青年以上の世代の人間に門戸を開いたという意味では
更に大きな功績があると言えよう。

主人公が所属する「地球連邦軍」が単純に正義で
その敵国である「ジオン公国軍」が悪役では無い事は
多くの人がイメージとして理解していると思うが
だとすれば、本作の真の主人公はアムロ・レイ少年ではなく
シャア・アズナブルという負けに負けを重ねる
ジオン軍のエースパイロットにある事は真理ではないかと思う。
しかしながらドラマは最終的な戦勝国であり
観る者が感情移入し得る地球連邦のいち市民としての立場で
アムロ少年の視点を持って描かれるドラマであるから
どうしてもシャアはそこに襲い掛かる「敵」として
描かれる事についても納得すべきである。
つまり、主人公の敵側の人間としてこのドラマを見ていたのだという事を
視聴者は最終的に理解しなければならないという事である。
この点の指摘をする人はあまり居ないのではないか

物語の本質が宇宙移民時代の話で、
スペースコロニー群の一つが、地球政府に対して
独立戦争を挑む、というところの物語なのである。
普通であれば、この時の主人公設定が
独立戦争を挑む側にありそうなものだが
この作品は主人公を地球連邦政府側に置いているのである。

後日談でそもそも当時のアニメ作品が
スポンサーなどの玩具セールスと制作戦略に
内容が大きく影響される性質があったもので
いわば「作品」という位置づけが許されていなかった事が
原因ではないかと言われている。
この点については以前に述べたので割愛するが
本当であればシャアが主人公であるべきだった。

このジオン公国を設立するに当たって
大きく思想的に影響を与えた「国父」が
シャアの父でもあるジオン・ダイクンという人物である。
物語開始前に暗殺されているので回想シーンにしか登場しない。

主人公のシャアは、この暗殺に関わったのは
前身のジオン共和国設立に際してジオンの右腕を務め、
ジオン公国の公王のデギン・ザビだと確信している。
そう信じるに値する理由があるのだが、
そのジオン公国軍の高級士官でありエースパイロットとして
シャアは物語に登場する。
戦争は戦闘はジオン軍が優位に進めていたが
国力の差が10対1、いや30対1という絶対差があり
開戦後暫くすると膠着状態に陥ったところで
ドラマは始まるのである。

連邦軍はジオンが開発したモビルスーツという
架空の最新型人型ロボット兵器に戦闘で苦しめられていたのだが
自軍の兵器として開発に成功する。
ジオン側には導入の一日の長がありパイロットの質はジオンが上、
兵器は後出しの連邦軍が質と物量で勝る。
しかし、そこにそれまでの人類の概念を超える存在が
現れる。
それが主人公のアムロ、という設定である。
その能力を持つ者を「ニュータイプ」と呼び、
その存在をジオン・ダイクンが提唱し、
大きく戦功を挙げたシャア自身が
自らこそが体現者だと信じている存在である。
本物の「ニュータイプ」を目の当たりにして
嫉妬し、打ち砕こうとする。
そういうドラマである。

並行して、2国間の戦争である。
シャアはアムロ以外には圧倒的な能力を発揮し
シャア・アズナブルという偽名を使ってまで行おうとしていた
父親の仇討ちを進めて行く。
デギンには長男ギレン、三男ドズル、長女キシリア、四男ガルマという
後継が居り、
シャアは戦闘の最中にガルマを敵の前に差し出して
謀殺する事に成功する。
ドズルはアムロが倒し、ギレンはキシリアとの確執の中で
キシリアが射殺。
そして、最終話でシャアがキシリアを暗殺し、
戦争は連邦軍が辛くも勝利して終わるのである。

アムロは軍属では無かったが
偶然与えられた新型MSの操作する機会を通じて
戦闘の殆どに勝利し、戦争の趨勢を決定する戦いでは
驚異的な活躍を納める。
軍人として圧倒的な能力を持ちながら
アムロの常人離れした「先読み」の能力のために
シャアは悉く負ける。
全てにおいて負けるのだが、
当初目指していた「仇討ち」は果たすのである。

シャアは依然として「ニュータイプ」の存在を追究し
人類の革新について目指すところを訴えるが
アムロにはその自覚は無く、
思想と利害と戦争は一致しない。
そのもどかしさが続編の登場に繋がるのではないだろうか。

続編では、連邦軍はもはや正義でもなく
ジオン軍の残党や新しい勢力、加えて
地球連邦軍から別れた「正義の勢力」などが
入り乱れて戦闘が起こるのだが、シャアはどちらかというと
正義の勢力に位置している。
続編については余り造詣が深くないので言及しないが
最初の作品の真理というか
本当の意図はそこで描かれているように思う。


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