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2022年01月16日18:03

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フルトヴェングラー、バイロイト1954年の第9を聴く

フルトヴェングラー/バイロイトによる1954年の
ベートーヴェンの第9を聴いて、大きな感銘を受けたので
その感想を書いてみた。
8月9日のライヴで、有名なのルツェルン音楽祭での
第9のライヴは同年の8月22日であるが、
受ける印象は大きく異なる、というか
ぜんぜん違った演奏になっているのが大変興味深い。

聴いたのはオルフェオ盤。
「録音が悪い」「回転ムラがひどい」などと言われるが
たしかに良い録音ではないが、
悪いなりに聴ける音になっている。
少なくとも、熱心なフルトヴェングラーのファンは
音の悪さでこの録音を聴かないのはもったいないと思う。

第1楽章

ゆっくりしたテンポで慎重さが感じられるのは51年盤と同様だが
こちらのほうがオケがマイクに近いせいか、力強い印象を受けた。
特に、ティンパニが迫力満点なのが51年盤と大違いだ。
その代わり、51年の神秘的な美しさはない。

再現部でのティンパニがルツェルン盤では
32分音符なのに
ここでは51年バイロイト同様、トリルなのが面白い。
ここのティンパニも非常に強烈で、1942年の
ベルリン・フィルとの録音を彷彿とさせるものがある。
録音の悪さもそう気にならないが、第1ヴァイオリンがマイクから
やや遠いなど、バランスには多少問題がある。

第2楽章

落ち着いたテンポと表現。
それに加えてティンパニの熱演。

最後の2小節でティンパニを追加しているのには驚いた。
13日後のルツェルンではこの追加はないのだ。
最後の小節でティンパニを重ねるのはシューリヒト/パリだが
最後の2小節で「ラッ!レッ!」と2つ叩くのは
ほかにはアーベントロートのライヴ盤くらいしか知らない。
しかし、このアイディアは非常に効果満点で面白い。

第3楽章

フルヴェン最晩年の枯れた表現。
こういう静かな楽章になると、音質の悪さが気になり、
感銘度は51年盤に劣るかもしれない。

第4楽章

冒頭から、迫力満点。特にティンパニが
激しく叩きまくっている。
低弦のレシタティーヴォの意味深さは、さすが
フルトヴェングラーだと思わせる。
ヴァイオリンがやや遠い感じがするのは残念。
(そういえば、ルツェルンの第9ではトランペットが
やたら強かった。大編成のライヴ録音は音のバランスを取るのが
難しいのだろうか)

ソロ歌手はマイクにかなり近く、特に
ヴィントガッセンのテノールは聴きものだが
その後のシンバル、バスドラの迫力はものすごく
なだれこむように2重フーガに突入する。
2重フーガは51年盤ほど加速しない上
弦がマイクから遠い。
コーラス入りの2重フーガでは回転ムラも発生。

最後のクライマックスは荒れ狂うティンパニ、シンバル、大合唱と
凄まじい盛り上がり。
エンディングも51年のように加速しすぎることなく、
しっかりと締めくくる。

この演奏は、バイロイトの第9としては、最近BISから出た
1951年のライヴ(本番)より、
はるかに感動的な名演だ。
BIS盤が出たことにより、1951年バイロイトの正規盤は、良くも悪くも、
プロデューサー、ウォルター・レッグのアイディアが
極めて強いものであることが明らかになった現在、
この演奏の価値はより高まったといって
いいのではないだろうか。

この演奏はフルトヴェングラーのファンにはぜひ聴いてほしい
名演であり、
また将来、より音質の良い音源が出ることを期待したい。
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