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2021年11月21日13:15

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声劇台本を作成しました!「無いもの守り。」(後編)

※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※

※ 前後編のうち後編です。前編はこちらです。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980907509&owner_id=24167653



※ こちらは二方美人シリーズの一つです。単独でも楽しんでいただけるように作っていますが、最初の声劇台本「二方美人。」 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1958862956&owner_id=24167653 や他のシリーズ作もご欄いただきますと、私は大変喜びます。


※シリーズ内でも最も関連性の強い作品「まあ好きっちゃ好きかもね。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1977998791&owner_id=24167653


※「二方美人。」シリーズ及び関連作品のみをまとめたリンク。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964303733&owner_id=24167653



登場人物(男女2:4)

共通設定として、全員今年28歳です。

遊語鎖鳥(ゆうご さとり):女性。信用金庫勤め。非常に負けず嫌いで、また、積極的に大事な人の前に立って守ろうとする気質を持つ。そのため雪那とはとても相性が良い。また、近頃岩埜と仲が良いらしい。

砥留岩埜(とどめ げんや):男性。元プロゲーマーで、その時はパズルゲーム『ネクフェクス』を専門にしていた。好きなものに対して熱くなりやすいものの、人が絡む話の場合は努めて自分の気持ちをきちんと把握して冷静に行動しようとする。友人の浦風曰く、最近話をすると口にするのは大抵鎖鳥の事ばかりらしい。

生徒世燦花(いくとせ さんか):女性。図書館で司書として働いている。誰よりも自分や周りの人の平和と幸せを愛する。友達みんなの事が大好き。水限(みぎり)という夫と実(みのる)という娘が居る。また、水限からプレゼントに貰った自作の絵本を常に持ち歩いている。

小幸雪那(さゆき せつな):女性。一人でもすべき事はきちんとできるが、何となく周りから庇護欲を集めやすい雰囲気を持っている。鎖鳥の事が好きでたまらない。昔、姉や友達の色恋沙汰に巻き込まれて辛い思いをした経験があり、そのため元々は他者の色恋沙汰への恐怖症を持っていたものの、近年は克服しつつある。

光画月夜(こうが つくよ):女性。人の恋愛話を聞くのが好きでたまらない。常に楽しい事を探しながら生きている人間。浦風との間に架帆(かほ)という娘と鈴美(すずみ)という息子の双子を持ち、日々育児に奔走している。

光画浦風(こうが うらかぜ):男性。岩埜の友人。旧姓は香架(こうが)で、月夜と結婚し双子を持ち、日々育児に追われている。満月の日でなくとも気がむいた時には月夜や子供達と一緒によく月見をしていて、それが人生の一番の楽しみである。



想定時間:22分(前編35分と合わせて57分)







「無いもの守り。」後編




鎖鳥「いやほんとに。これは照れ隠しとかじゃなくてほんとのほんと。なんていうか、砥留君が追いかける夢が叶ってほしかった。砥留君が大好きだったネクフェクスの事嫌いになるのが許せなかった。砥留君が苦しんでるのを放っておくのが嫌だった。それだけ。別に好きとか結婚するならこの人が良いとかそういう風に意識した事は無かったんだよ、正真正銘、本当に。」

燦花「その気持ちは少し分かるかも。放っておけないとか幸せになってほしいっていうのと好きっていうのはまた違うよね。」

月夜「お前達はそうやって色んな男達を勘違いさせてきたのだな。」

鎖鳥「燦花と一緒にしないの。私の場合その事例は砥留君くらいだよ。別に誰彼構わず構ってなんていないし他の人を勘違いさせてきてはいない、きっと。」

雪那「……それは、どうだろう…。」

燦花「私も多分そんな事無いと思う…よ。そんな風に言われた事あんまりないし…。」

月夜「あー……そのな、多分なんだが。燦花の場合、勘違いさせなかったのではなくて、一度勘違いした男達も大概『この人はそういうんじゃなくてもここまでしてしまう人で、別に恋愛感情向けてくれてるとかそういう可能性があるとかじゃない』って自分で気付いて、ちょっと切ない気持ちになりながら身を引いてくれてるんだと思うぞ。」

鎖鳥「珍しいね。その意見については全面的に同意するよ。」

雪那「私もそう思う。」

燦花「なんでみんないじめるの…。」




岩埜「でもその後も変わらず、友達としては仲良くしてくれまして。僕としても雲の上の人って気持ちで、冷静に考えたらそもそもこんな凄い人と僕とじゃ無理だよなあ、そりゃそうだよなあって思って。意外とすんなり諦められました。」

浦風「相変わらず後ろ向きな奴だなお前は。」

岩埜「そこは浦風君も同じでしょう?」

浦風「ああ、その点については自覚があるから心配は無用だ。」

岩埜「そうしてよく電話したり、たまに一緒にゲームしたり……月に一回くらいか一緒に出掛けたりしてそれから半年くらいしまして。」

浦風「間にクリスマスやらお正月やら……あ、この先右左どっち行きたい?俺も知らん道だからどっちでも良い。」

岩埜「知らないんです?えっと、じゃあ右で。」

浦風「知らない道を適当に走るのが楽しいんだ。」

岩埜「……もしかしてここまでずっと?」

浦風「ああ。」

岩埜「月夜(つくよ)さんじゃなくて僕がドライブの相手な理由が分かりました。」

浦風「そもそもあいつは乗り物酔いしやすいからな。目的があって長距離移動する時もいつもつらそうにしながら薬を飲んで耐えている。」

岩埜「ああ、そういえばそんな話聞いた事があったような。」

浦風「で、クリスマスやらお正月やらには何かあったのか?」

岩埜「まあ…一応メリークリスマスとか明けましておめでとう、今年もよろしくお願いしますとか言い合ったのと、手帳を贈りました。」

浦風「手帳……?」

岩埜「色々と悩んだんですけども、やっぱり実用的な物が良いだろうと思って、それに手帳なら自分で好きなように改造できますし。」

浦風「なるほど、もうすでに持っていたらと思ったものの、確かに有りだな。高価な物でもないからちょうど良いかもしれん。」





鎖鳥「まあ確かにね、もうその時来年用の手帳買ってたからそれが無駄にはなったけど、実際嬉しかったよ?手帳。ほら、今でもちゃんと持ち歩いてる。」

燦花「良いなぁそういうの。ずっと肌身離さず持ってられるもの良いよね。」

月夜「燦花は水限(みぎり)から貰った絵本ずっと持ち歩いてるくらいだからな。」

燦花「えへへ、良いでしょ。」

雪那「良いなあ。」

鎖鳥「それでノートパソコン入れる用みたいな鞄持ってるんだね。」

雪那「鎖鳥さんはクリスマスに何かあげたの?」

鎖鳥「いや……というか正確にはクリスマス付近には会ってなくて、お正月に会った時、遅くなったけどって言ってもらったんだけど。私はその神社で買ったお守りと小さな人形をあげた。」

雪那「人形?」

鎖鳥「その神社のマスコットか何かなのかな。なんか狛犬がもこもこになった感じのやつ。砥留君、今でもそれお財布につけてるんだよ。支払いの度にその犬がポケットから顔を出してくる。」

燦花「良いよね!お互いに持ってるの!」

雪那「燦花さんはそういうの好きなんだねえ、本当に。」

燦花「だってぇ。」

雪那「分かるよ、私も良いなあって思う。」

鎖鳥「そういうの見てるとさ、男の人に言うのもなんなんだけど甲斐甲斐しいっていうかかわいいっていうか。」

月夜「かわいいかあ。」

鎖鳥「浦風君にそういうの思う事は無いだろうけどね。」

月夜「うむ。あいつはかわいくない。」

鎖鳥「……はは、だよね。……なんだろね。ほら、私って人から物貰うのも好きで。嬉しくって、それにプレゼントの選びどころもなんだか気が合うような気もして……確かに前は好きとか何とか思う事は無かったんだけど、悪い事したかなって。改めて考えてみると……一緒に居て落ち着いて居られるのとか、砥留君が楽しそうにしてるのを見ると嬉しく思えて自然と笑えたりっていうの、長く一緒に居るならそういうのが一番大事なのかなって。だから私の方から、もし良かったらって言おうかなって思ったりもした。」

月夜「思った、という事は結局決行しなかったのか。」

鎖鳥「やっぱり付き合うって事はその先に結婚がある事が前提になるわけで、それを思うとなんだかんだで二の足を踏んでた。大きな変化があったのはその更に後、四月。」

雪那「あ、四月って事はもしかして」

鎖鳥「そう、雪那には前言ったね。お花見に行ったんだ。」

燦花「お花見、良いなあ。良いなあ。」

月夜「さっきから良いなあしか言わなくなってきたな…。」

燦花「だって、やっぱりこういう話って良いものだから。」

月夜「ああ、気持ちは分かるとも。」

鎖鳥「お花見の約束をした時点で私は嬉しくってさ。砥留君からしたらそんなに喜ぶ事かって話だと思うんだけどね、私にとってなんだか……お昼の公園で一緒に座って過ごすって、特別な感じがしたんだよ。だから気合入れてお弁当作ろうと思ったんだけど、作ってこないでって言われて。」

月夜「作ってこないように…?それは不思議だな…何か食べたい物でもあったのか?」

鎖鳥「うん、私も出店(でみせ)でもあるのかなって思ってたんだけど…当日行くと、砥留君がお弁当作ってきてくれたんだよ。」



岩埜「そのお花見の時は本当に驚く事だらけでしたよ。」

浦風「ああ、その話は少しだけ聞いたな。」

岩埜「そうそう、元々食べられない物は特に無いって聞いてましたから、お弁当作っていったんです。それまで何度か手作りの料理ごちそうになってましたから。」

浦風「随分苦労したらしいな。」

岩埜「ある程度料理は自分でもできるつもりですけど、やっぱり遊語さんとんでもなく料理上手ですからね……当然緊張もしますし、気負いもしますよ。」

浦風「でも結果、美味しそうに食べてくれたんだから良かったな。」

岩埜「ええ、ただ……まさかそこで…あんな事になるなんて……ただただ驚くとともに、僕はこの人の事まだ全然知らないんだなって痛感しました。」

浦風「今となっては、その理由に見当はつくのか?」

岩埜「……恐らく。」



鎖鳥「私って自覚してなかったけど、多分理想の家族像みたいなのに憧れすごかったんだと思う。その、理想の家族像の一つが……昔、何かで見た家族みんなでピクニックに行くってやつ。公園でみんなでシートに座ってお弁当食べるんだよ。バスケットに入った小ぶりなおにぎりと卵焼き、ウインナー。あとブロッコリー。実際砥留君が作ってくれたおかずは全然違う物だったけど、なんだか今までの家族の色んな事思い出して……そのちょっと前に飛鹿(ひろく)の結婚式があったのもあるのかな。急に泣けてきて、全然止まらなくなっちゃって。」

月夜「鎖鳥って泣くんだな…。」

鎖鳥「私も人間なんだけど。」

燦花「それだけ今まで気持ち抑え込んで、いっぱい頑張ってきたんだもんね。」

雪那「……その、理想の家族と鎖鳥さんの家族は全然違って……でも、そんな自分の気持ちを自分で気付く事すらなくって……鎖鳥さんがね、自分がどれだけため込んでたのかちゃんと自分で分かって良かっ……良かったよ…。ご両親や飛鹿(ひろく)さんとはまだだけど…少なくとも緋鳥(ひとり)君とも鎖鳥さんがちゃんと仲良くなれて……鎖鳥さんもやっと誰かに……。」

鎖鳥「……なんでここで雪那が泣きだすの。」

雪那「ごめんなさい、喋ってるうちに…止まらなくなっちゃって…。」

月夜「……二人は特に仲良いからなぁ。」

燦花「ふふ、鎖鳥さんが家族の事でずっと苦しんできたの知ってるものね。みんなで……一緒に笑って、一緒に……楽し…楽しくて穏やかな、時間を……」

月夜「燦花、大丈夫か…?燦花まで泣き出して……これじゃまるで私だけ冷たい奴みたいだ。」

鎖鳥「この二人は私が家族仲の事で色々あったの知ってる上に、自分の家族仲がそんな良くなかったから。それでより感情移入しちゃってるとこもあるんだと思う。月夜は家族仲が良いから、それでぴんと来ないんじゃないかな。それはむしろ良い事なんだよ。」

月夜「そうか……確かに私は家族仲がそこまで険悪になった事は特に無いからな…。」

雪那「……大丈夫、もう泣き止んだから……。」

鎖鳥「本当に?」

雪那「うん……。」

燦花「私は……もう、両親と仲良くなるなんて諦めてて……私にとってね、水限(みぎり)君やご両親、実(みのる)は勿論、ここに居るみんなの事も家族だと思ってる。だから……笑い合える家族は……ちゃんとここにも……。」

鎖鳥「ちゃんと伝わってるよ、ありがとうね。血のつながった家族と仲良く居られたらそれは当然良い事だけど、血の関係がなくてもそれ以上の仲になれるもんね。……ああ、そういう事なら、雪那は私の妹になるね。」

雪那「なっ、ちょ、鎖鳥さんっ」

鎖鳥「くっくっく、冗談。」

月夜「?……なんとなく分かるぞ。鎖鳥はどこに居ても長女のイメージで、雪那は誰かの妹な感じはする。」

雪那「うっ…うん、そうかな…。それより、鎖鳥さんのお話の続き、聴きたいな。」

鎖鳥「…はぁい。いや、うん。続けるも何も……お弁当食べながら私の方から、結婚を見据えてお付き合いしましょう、この前は断ってごめんなさいって話をしてそれで付き合う事になった。うん。それだけ。以上、終わり。これだけ。特に語るような事はもう無いよ。」

燦花「そっか……鎖鳥さん、良かった。まだ付き合い始めて3か月くらい?でもきっとうまくいくよ。いっぱい大事にされてね。」

鎖鳥「うん、分かってるよ。……まったく、月夜が聴きたいって言って始まった話だけど、終わってみれば燦花が一番食いついた気がする。」

燦花「……うん、私そういう話結構好きだったのかも。」

月夜「何を今更。私と浦風の話を聞かせる時も大体いつもこんな感じだろうに。」

燦花「それは月夜さんだって」

月夜「私はちゃんと自覚してるから心配は無用だ。」

鎖鳥「全く。…でも改めてこうして口に出してみると……色々と、自分の気持ちと向き合うには良い機会だった。すっかりコーヒーが冷めてしまったけど、このくらいの代償なら安いもんだ。」






浦風「ようし、ここからは知ってる道だ。お前の社宅の前で下ろせば良いな?まあ5時半には着くだろ。」

岩埜「ええ、ありがとうございます。途中で食べたごみは持っていきますね。」

浦風「頼んだ。」

岩埜「……ん、なんだろ。遊語さんから連絡が来てた。……え。」

浦風「なんだって?」

岩埜「ああ、いえ、この後今夜会いたいって。」

浦風「どこで。」

岩埜「遊語さんの最寄り駅って書いてありますね。」

浦風「仕方ない、そこまで行って下ろすか。ごみも俺が持って帰る。んなもん持ってったら格好がつかんだろ。」

岩埜「申し訳ない…ありがとうございます。」

浦風「申し訳ない事は無いだろうが…そうだな。……せっかくの縁だ。大事にな。」

岩埜「勿論です。」





鎖鳥「…こんばんは、岩埜(げんや)君。ごめんね急に。」

岩埜「いえそんな。今日は鎖鳥(さとり)さん、月夜さん達と久しぶりに会って遊んでたんだよね。楽しかった?」

鎖鳥「ああ、楽しかったよ。……ちょっと歩こ。」

岩埜「?はい。」

鎖鳥「ねえ、岩埜君。」

岩埜「うん?」

鎖鳥「今日はうちに泊まってってよ。」

岩埜「えっ…鎖鳥さんが大丈夫、なら。」

鎖鳥「片付けてはある。夕食はもう食べた?」

岩埜「まあ軽くは。」

鎖鳥「私もそんな感じ。家に一食分のおかずが沢山冷凍して置いてあるから、それ二人で分けて食べよ。」

岩埜「あ、ええ…ありがとう。」

鎖鳥「……。」

岩埜「あの、鎖鳥さん。」

鎖鳥「なあに?」

岩埜「……来年の春、鎖鳥さんの住んでる部屋の契約の更新があるから、その時に二人で別の部屋に住もうって話、あったじゃないですか…。」

鎖鳥「そうだね。時期的にもちょうど良いと思う。」

岩埜「もっと早くからじゃだめかな……。」

鎖鳥「もっと早く?」

岩埜「鎖鳥さんの事もっとちゃんと知りたい。一緒に住んでもっとお互いの事沢山知って、それで結婚したい。」

鎖鳥「……ふっふふ。岩埜君、私が君と付き合いたいって思った一番の理由が『気が合うから』なんだ。」

岩埜「気が合う…。」

鎖鳥「うん、今君が言った事、部屋に着いたら私から言おうと思ってた。ま、別に今この時にプロポーズしてくれても悪い気しなかっただろうけど。……君なりの真剣さの形がそれなら、ちゃんと受け止めるよ。私の部屋に着いたら、一緒にお部屋情報でも調べよっか。」

岩埜「ええ……今プロポーズしても良かったの…でもそれだとちょっと早すぎるというか、軽く見られそうな気がして…。」

鎖鳥「んー、悪い気はしなかっただろうけど、もしかしたらその場合『ちょっと待ってね』って言ってたかもね。だってまだ付き合って3か月だし。」

岩埜「ですよね、やっぱり順序として間違ってませんでしたよね。」

鎖鳥「くっくっく、そうだね。私もそう思うよ。……あのさ、私は……新しい部屋。その、子供部屋のあるとこが良いと思うんだけど、どう思う?」

岩埜「子供部屋……そうだね、生まれてから引っ越すのも大変そうだし、その方が良いかなやっぱり。」

鎖鳥「そっか、そうだね……ふふ。……ねえねえ、見てよ空。」

岩埜「空?」

鎖鳥「星一つ無い真っ暗な空だよ。」

岩埜「わぁ、本当だ。綺麗な空ですね。」

鎖鳥「くっくっく。だよね、これはとっても綺麗な空なんだ。」







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