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2021年11月13日10:07

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バスの「鉄道化」で移動サービスの質を高めよ…目白駅の事例から考える

 去る令和3年10月23・24両日,JR渋谷駅の改良工事のために山手線の内回り列車が全面運休となりました。僕も当日は週末ということで美術鑑賞のために都内各所を動いておりましたが,災害でもないのに山手線が動いていないということで,何だかとても不思議な感じを覚えました。

 山手線が止ってしまうというのは一見非常に不便なことのように思えますが,東京というのは実に有り難い所で,他のJR線や地下鉄を活用すれば山手線無しでもそれほどの問題も無く都内各所を移動出来てしまいます。特にこういう時に力を発揮するのが都内に13路線ある地下鉄で,たとえば池袋駅から渋谷駅に向かおうという際にはメトロ副都心線に乗れば何ほどのことはありません。また目黒駅から東京駅に向かおうという場合でも,都営三田線を使えば簡単に移動出来てしまいます(都営三田線の大手町駅は,東京駅と地下通路で繋がっています)。1本の路線では行けない駅でも,動いている路線を乗り継げば向かうことは容易に可能です。
 とはいえ,他の鉄道では行けない駅も,無いわけではありません。山手線の駅の中でも新大久保駅と目白駅は他路線との接続の無い単独駅で,それでも新大久保駅のすぐ近くには大久保駅がありますが,目白駅の周囲には駅が全くありません。この記事でも紹介されているとおり「目白は陸の孤島になってしまう」ということが以前から話題になっていました。他ならぬ僕も「2日間も陸の孤島になってしまっては,さぞや不便だろう」と懸念したものです。この記事には「駅はある」と紹介されていますが,少なくとも目白駅からは約1kmは歩く場所にあり,歩き慣れた人以外にとっては相当の距離と言わざるを得ませね。
しかし実は便利な交通手段はあるのだ,ということがこの記事の最後で種明かしされています。「目白駅」停留所に停車する複数の都営バスが存在し,しかも落合南長崎駅からは1時間に14〜15本もの頻繁運転が行われているというのでは,これは全く陸の孤島などではありません。たとえ山手線が存在しなくても交通至便の地ということが出来るでしょう。

 実は目白は山手線が止っていても決して不便な場所などではないのに,僕を含めて「陸の孤島になる」と勘違いしてしまったのは何故でしょうか。答えは簡単で,路線バスの存在が周知されておらず,またバスの存在自体は知っていてもどれほど便利かということについて人々がよく知らないからでしょう。
 バスというのは判りにくい存在です。たとえば僕は東京の交通にはかなり詳しいつもりですが,それでも路線バスについては土地勘のあるごく一部の路線しか判りません。「実は詳しくないのだろう」と言われればそこで話は終わりですが,僕は都内の鉄道であれば案内を見ずに大凡利用出来る程度の知識は持ち合わせています。万一それでも不安なときには駅に掲示されている路線図を確認すれば,鉄道に関してはほぼ間違い無く最適な路線を選んで目的地の最寄り駅に辿り着くことが可能です。しかしバスはそうは参りません。駅から遠い目的地の場合などにバスに乗り換えることはありますが,乗換駅に掲示された案内を見てもなかなかバス停を見つけられなかったり,どのくらい待つのか見当もつかなかったりということは日常茶飯事です。まして「鉄道だと遠回りだが,バスを使えば便利だ」などということを事前に把握するのは非常に困難です。バス路線図というものもありますが,それを見てもバス停の場所も判らなければ運転頻度も判らない上,そもそもバス路線図自体を滅多に見掛けません。結果として無駄に徒歩で目的地に向かったり自家用車を使ったり,甚だしくは鉄道で無駄な大回りをして目的地に向かうということを日々繰り返してしまっています。
 思うに,交通機関というのは「乗って楽しむ」といった特殊な需要を別にすれば,人々が何らかの目的で移動するための手段です。その手段として提供されるのは需要の太さやインフラ整備の状況などによって鉄道だったりバスだったりしますが,極論すればそれは交通事業者の都合です。無論,大抵の場合は「需要が太ければ鉄道,細ければバス」という使い分けが成立していますが,先述のとおりインフラ整備の関係で鉄道にも比肩するほど需要の太い区間でありながらバスでの輸送が行われている区間も存在し,そのような需要の太い区間については当然ながら頻繁運転が行われています。そうした「本来ならば鉄道でもおかしくない」バス路線(以下「幹線バス」と呼びます)については,これの「鉄道化」を図ってははどうでしょうか。

 このように申し上げても「『バスの鉄道化』とは,具体的にどういうことか」と疑問を抱かれる方も多いことと思いますので,以下順を追って説明させて頂きます。
 現在は鉄道路線図を見ても,バス路線については何も記載されていません。またバスの車内放送では「○○鉄道乗換」という案内放送が行われていますが,鉄道側ではそうした案内放送は行われていません。そして駅構内にはバス乗り場の案内表示がありますが,目的地と路線番号名が書かれているだけで主要経由地等の記載は無く,鉄道への乗換案内が懇切を極めているのとは著しい対照を見せています。
 幹線バスの路線については地下鉄等の路線図にも「バス○○線」と記載し,鉄道側でも駅到着前に「バス○○線乗換」と車内放送等で周知を行い,更に駅構内や周辺の道路に「バス○○線乗場はこちら」といった鉄道同様の懇切な誘導表示を行うことで,鉄道と同様に判り易い移動サービスを人々に提供することが出来るでしょう。まずこれが「鉄道化」の第一歩です。そして幹線バス路線については地下鉄の1日乗車券などでも乗車可能とし,実質的に鉄道路線としてのサービスを提供する。更には鉄道との通し運賃或いは大規模な乗継割引を実施し,鉄道とバスの両方を使った場合の費用負担を小さくする。ここまで進めることで名実ともに「バスの鉄道化」の完成と称することが出来るのではないかと考えます。
 このように申し上げると「それはBRTとは違うのか」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。無論,バスで鉄道のような大量高速輸送を行うBRTが導入される路線は当然ながら「幹線バス」でしょうから,上記の「鉄道化」に組み込むべきは当然です。しかしBRTのようなサービスを提供することが不可能・或いは不必要だったりする中にも,需要が太く頻繁運転が行われている路線は存在します。そうしたBRT以外の幹線バス路線についても上記の「鉄道化」を進めていくことは良質の移動サービスを提供するのに大変有益であり,利用者にとって歓迎すべきものであることは疑いありません。

 「バスの鉄道化」によって,土地勘の無い人でもバス路線を柔軟に活用し円滑な移動を行うことが出来るようになれば,そのメリットは計り知れません。このようなことを進めていくのも都市交通改善の方策ではないかと僕は思いますが,皆様はどのようにお考えになられるでしょうか。



目白は本当に「陸の孤島」だったのか JR山手線が止まった日
https://trafficnews.jp/post/112313
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