『千と千尋の神隠し』を抜き国内興行400億円を突破した本作。
炎柱・煉獄杏寿郎と一緒に無限列車に乗り込んだ炭治郎たちは、上弦の参・猗窩座(あかざ)へと襲われ壮絶な煉獄の最後に彼の覚悟と柱の“意志”を継承する。
映画とは、基本、上映時間の枠内で物語が完成するものだ。くわえてシリーズなら、劇場にかかる作品のみによって完結する。「本来」ならばである。*1
一方、本作は今年12月から放送するテレビアニメ2期への“接続”をはたす作品。
ゆえ鑑賞の前提に24話のテレビアニメ1期の視聴が絶対必要だし、物語が劇場で完結するわけではない。また以後も作品は続く。この部分が本作を自身が「1本の映画」とは云い辛い理由である。
とはいえ、だ――。
本作が間違いなくエンタメすべての要素ひっくるめたかがみであることは疑いようもない。映像、音楽、演出、演者の演技を結集して原作の力強さ――煉獄杏寿郎の生き様――を十分再現する。
閉鎖空間の列車内部へとしかけられた下弦の壱・魘夢(えんむ)の眠りの罠。その夢の中で登場人物たちが見る過去や甘美な理想の世界。
この活劇と同時に煉獄や炭治郎たちの過去を掘り下げ、バトルものの枠を超え物語を発展させるところが原作の上手さ。
そうして原作の複雑性と多重性を織り込み計算しながら、ほとんどスビードをゆるめず次から次へと「サビ」を打ち出し展開していくのが、ufotableの原作の理解度と再現力の上手さだろう。*2
※1 「とはいえ映画とはなにか?」のかんがえかたなど個人の自由で千差万別だ。
※2 今月(※2021年10月時点)から「無限列車」編は7本に分割(初回放送の1話がアニメオリジナル + 劇場版の再編集6話)で放送されるが、そもそももとから分割可能な格好か、あるいはテレビアニメとして制作していた単話を劇場版に再編集した部分がいくつもみられる。たとえば一番わかりやすい部分は善逸が雷の型で斬り込む場面で、再編集版では、この場面が〇話の最後か最初になるかもしれない。
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