10年ほど前、ベートーヴェンのオペラ
「フィデリオ」の3枚組LPを買ったときの話である。
（フルトヴェングラー指揮ウィーンフィル、1950年）
聴いてみると、なんと、2枚目がプッチーニの
「トスカ」なのだ。
2枚目のA、B両面に「トスカ」の第1幕が収録されているのだ。
不良品だが、CLSレーベルはマイナーレーベル（海賊盤？）
なので、良品との交換は無理だろう。
なぜか、返品せずに放っておいた。
それから10年経って、久し振りに、この「トスカ」を
あらためて聴くと、
これがとんでもない名演なのだ。
主な特徴は、
�．皀痢璽薀觧�代のライヴ録音。録音はまあまあ。
�▲肇好�、カヴァラドッシ、スカルピオの
主役級の3人とも、ものすごい名歌手ぶり。
��オペラのライヴにしては、拍手や声援はずいぶん控え目。
といったところである。
これはLP時代から有名なライヴ録音なのだろうか？
そこで、この演奏の歌手、指揮者が誰なのか、
推理してみることにした。
まず、「トスカ」の、モノーラル時代の名盤を聴いてみた。
歌劇『トスカ』（全曲） カラス - デ・サバタ＆ミラノ・スカラ座ほか
（1953年録音、EMI）
マリア・カラス、ジュゼッペ・ディ・ステファノ、ティト・ゴッビの
競演がすばらしい。
これを数回聴いて、曲に馴染んだところで
あらためて、CLSのLPを聴いてみた。
当然、トスカ、カヴァラドッシ、スカルピオの
それぞれの役が誰が歌っているのかが問題だ。
スカルピオは、間違いなくティト・ゴッビだ。
マリア・カラスのCDと声、語り口がほぼ同じである。
つぎにカヴァラドッシは、タリアヴィーニだろうか。
タリアヴィーニはステレオ録音の「ナポリ民謡集」しか
知らないが、甘く美しい声からして間違いないだろう。
問題はトスカ役だ。
トスカはマリア・カラスではなく、もっと普通の美声である。
強烈な個性がないのでこれは難しい。
トスカの録音が（スタジオ、ライヴ）何種類も出ている
歌手といえば、カラスとレナータ・テバルディである。
わからないので、とりあえず、トスカ役は
テバルディと仮定した。
Googleのトップ画面を出し
「プッチーニ トスカ テバルディ、タリアヴィーニ、ゴッビ」
で検索してみると、
「モリナーリ＝プラデッリ＆コヴェント・ガーデン王立歌劇場、
テバルディ、タリアヴィーニ、ゴッビ、他（１９５５ モノラル）」
というCDが出てきた。
さっそく、このCDを入手して聴いてみると、
まさにCLSのLPと同一、ドンピシャの正解だ！！！
前奏曲の直後の、アンジェロッティのつぶやきから
他のディスクとは段違いだが、
その後のカヴァラドッシの恋のアリアの
タリアヴィーニの巧さに至っては、もう
聴き惚れるしかない。
テバルディもカラスのような熱狂こそないが、
声の美しさではカラスを上回るだろう。
CLSのLPより音質も改善されているし、自分にとって
「トスカ」のベストCD決定である。
しかし、2枚目が間違って「トスカ」が収録されている
「フィデリオ」のボックスLPなんて、普通なら
返品するか処分して終わりだろう。
その不良部分である「トスカ」の演奏者を推理し、
当ててしまう執念に、我ながら呆れるほかない。
それも音楽の楽しみ方なのだろうか。
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