主人公は、兄の急死をきっかけに医師をめざす。
家に帰るのが面倒なのでずっと研修医室と当直室に泊まり込み、
着るものはよれよれ白衣と手術着。
アナムネもプレゼンも「なんとなく」しか意味がわからない。
ダメダメ初期研修医だ。
医者が書いただけあって臨場感はすごい。
ワシにも書けるだけのネタはあるが筆力がない。
(あったら小説家になってたよ)
「医者のくせにこういうものを読むなんておかしい」と言われたこともある。
自分が毎日やっていることでしょ、経験済みでしょ、と。
だからこそ読むんだよ。
自分でやっていると自分のことがわからなくなるものね、と答えた。
この小説を読んでいて、気づいたことがある。
5歳の子が、シートベルト損傷で腸がはみ出た状態で搬送されてくる。
緊急手術で腸を修復するが、
なかなか状態が改善せず、抜管できない。
(全身麻酔は手術後の状態が落ち着いてから管を抜くけど、落ち着かないうちはそのまま)
いっしょに交通事故に遭ったけど軽症で済んだ父親が、術後説明のあとで、
「息子を助けてください、お願いします」と頭を下げる。
オーベン(上司医者)はだまって会釈して説明室を出るが、
出たあと、研修医くんに言う。
「絶対なんとかするよ」。
このシーンで、自分は「上司」の立場で「うんそうだね」と答えていた。
少し前までは研修医くんになって「はい」って答えてたのにな。
いつの間にか年をとったねぇ。
同級生で公務員やってる連中は「そろそろ定年」だとか言ってるもんな。
もう「研修医」どころか、中間管理職でもない、「一番上の部長」だよ。
主人公が、最後に30年前に死んだ兄ちゃんの墓参りをするシーンで、
やっぱり少し泣いた。
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