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2021年05月29日17:23

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『魅惑の香り』

 2021年の双子誕作品です。
 『聖闘士星矢』の二次創作で聖戦後復活設定。ロスサガ・ラダカノ前提ですがオリキャラが出てきます。
 アケローオス河神から誕生日に贈られた練り香水を身につけたサガが夜にハッスル(意味深)しちゃって、アイオロスが勘違いする話です。
 誕生日ものなので全年齢向けです。頑張っちゃったサガさんのあれやこれやは読者の皆様が想像で補足してください(笑)。
 アケローオス河神に「頑張れよ」と言われて、ホントに頑張っちゃうサガさん、マジ素直すぎ。きっとカノンもラダマンティスとの夜に頑張っちゃったに違いない。
 兼好法師は『徒然草』で「良い友」の第一位に「ものをよくくれる人」を挙げているので、色々とものをくれるアケローオス河神は双子にとって良い友人なのではなかろうか…多分。
 アケローオス河神は『ハルモニアの首飾り』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3513947が初出なのでそちらを参考。
 昨年の双子誕作品はこちら。『シードラゴン様はサガ成分が不足しているようです』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13042257

『魅惑の香り』

 5月30日は双子座の黄金聖闘士であるサガとカノンの誕生日である。双子座の双子たちのうち、兄のサガは教皇アイオロスの首席補佐官として聖域に在住しており、弟のカノンは海将軍筆頭・海龍を兼任しているため、海界にと別れて住んでいた。
 こういう事情で普段は別々に暮らしているサガとカノンであるが、それだけに誕生日の日は兄弟二人きりで過ごそうというのがいつの頃からかの二人の約束になっていた。だが今年はまだ新型コロナウイルスの流行が心配だということで、二人は誕生日当日を一緒に過ごすことは避け、サガは恋人である教皇アイオロスと聖域で、そしてカノンはやはり恋人である冥界三巨頭の一人、天猛星ワイバーンのラダマンティスと冥界で、それぞれ過ごすことになった。
 こうして自分の誕生日である5月30日も聖域にいたサガだが、双子座の黄金聖闘士とはいえ一介の聖闘士に過ぎず、彼の誕生日が聖域で祝日になっているわけでも何でもない。が、それでもサガに個人的に親しい何人かの人々は彼の誕生日を祝福してくれ、贈り物をくれたりした。
 そしてその日、大洋神オケアノスの長子であり、サガとカノンにとっては幼い頃の兄代わりであったアケローオス河神も聖域を訪ねてきて、サガに誕生日の贈り物をくれた。成人した双子たちと再会してから再び彼らとの交流を開始したアケローオス河神だったが、彼は自分の荘園で穫れた果物だの父神からもらった魚介類だの、色々と二人におすそ分けをくれたりするのだった。
 そんなアケローオス河神が今回サガにくれたのは、手のひらに乗るくらいの陶器製の蓋つき小容器だった。
「サガ、今日はお前の誕生日だろう?ちょうどいいから、これをやる」
 と言って、アケローオス河神はその蓋つきの小容器をサガに差し出した。
「何ですか、これ?」
 サガが手を差し出す。赤絵で草花文様と雷紋を描いた小容器がアケローオス河神の手のひらからサガの手のひらにと移動する。サガは容器の蓋を開けた。すると、容器の中から甘やかで官能的な香りが立ち上った。まるで大輪の花が咲いたような華やかで鮮やかな芳香だった。
「これは…」
 全身を包み込む濃密な香りに驚きながら、サガは香気を吸いこんだ。
「練り香水だ。イランイランとジャスミンを使っている」
 容器の中には半透明の薄い黄色の軟膏が詰められていた。アケローオス河神が調合させた練り香水だろう。
「すごい…こんなに少量なのに、むせるように香りますね」
 感嘆とともに南国の雰囲気を醸し出すエキゾチックで甘い香気を堪能しているサガに、アケローオス河神がからかうような笑みを浮かべて言った。
「ほら、イランイランとジャスミンには、どちらも官能的な気分を高める効能があると言うからな。今夜はそれをつけて教皇を誘惑してみたらどうだ?きっと喜ぶぞ」
「アケローオス様…!」
 河神のからかいにサガがさっと頬を赤らめる。アイオロスとの恋人関係はもはや周知の事実となってしまっているが、それでも他人にあれこれ言われるのは恥ずかしいものだ。
 やがて恥じらいを収めたサガは気を取り直し、改めてアケローオス河神に謝意を述べた。
「でもありがとうございます。こんなに上等の香料をくださるなんて…」
「いや、なに。カノンにも似たようなものを贈る予定なんだ。恋人たちの夜の営みのマンネリ化を防ぐためにも、たまにはこういう小道具を使うのもよいのではないかと思ってな」
「もう…!やめてください!」
 河神のからかいに再びサガが頬を染めてむくれてみせる。だがサガのその表情は、かえってアケローオス河神を楽しませた。二十八歳の成人男性に使う形容詞ではないが、「兄」というフィルターがかかったアケローオス河神の眼に映ると、このようなサガの表情は「可愛い」と表現されてしまう。
「では、今夜は頑張れよ、サガ!」
「アケローオス様!」
 そして焦るサガの「可愛い」を表情を十分に堪能したアケローオス河神は、笑い声とともに聖域を後にしたのだった。

 その夜、サガは入浴後に早速にアケローオス河神から贈られた練り香水を身につけてから、教皇の間にあるアイオロスの寝室に足を踏み入れた。
 寝室に入ってきたサガの周りに漂う濃密で官能的な香りに、アイオロスは瞠目した。
「サガ…今夜はいつもと様子が違うね。すっごくいい匂いがする…」
 スーッと大きく息を吸い、アイオロスは馥郁たる香気を胸一杯に吸いこんだ。
「ふふふ…。この香りは気に入ったか、アイオロス?」
 ワンピース型の夜着の他には甘やかなこの香気だけをまとったサガが、明らかに誘惑するための笑みをアイオロスに見せた。サガが身に着けている夜着はこれまた薄く織られていて、その下にある白い肌が透けて見えそうだった。むしろ慎ましい乳首などはうっすらと布地の下に形が浮き上がっており、乳輪の色までほんのりと赤く色づいて見えて、そのなまめかしい光景にアイオロスは思わず生唾を飲んだ。
「ああ。なんだか…とてもエロチックな気分になるね…」
 サガから立ち上る蠱惑的な香気と彼の艶やかな表情に誘われて、アイオロスもまた陶然としたような表情を見せた。雄の本能が煽られ、己の下半身に血が集まってうずくのをアイオロスは自覚した。
「今夜は…寝かさないぞ、アイオロス」
 そしてサガは白く美しい腕をアイオロスの首に巻き付け、嫣然と愛する人に微笑んで見せたのだった。

 それから数日後、再びアケローオス河神が聖域を訪ねてきた。教皇アイオロスの執務室まで十二宮の階段を律儀に上って来た彼は、手に下げていた粗末な麻の手提げ袋を執務机に座るアイオロスに示してみせた。
「アップルマンゴーがあるんだが、教皇、食うか?」
「食べます!食べます!」
 アケローオス河神の問いにアイオロスは勢いよく手を挙げた。こんな感じでアケローオス河神は何かと美味で珍しい食べ物を彼らに差し入れてくれるので、おすそ分けにあずかることの多い教皇の間勤めの者たちなどはすっかり彼に胃袋をつかまれている。
 その日はアイオロスの側に首席補佐官としていつも控えているはずのサガの姿が執務室に見えず、アケローオス河神は小首をかしげた。
「サガはどうした?出かけているのか?」
「ええ。今日はロドリオ村の事務局に用事があって外出中です。夕方には戻りますけど」
「そうか。じゃあ、帰ってきたらこのマンゴーをサガにも食わせてやってくれ」
 アイオロスは侍従に命じてアケローオス河神が持参したアップルマンゴーを早速に切り分けさせた。そして侍従がガラス製の器に盛ったアップルマンゴーを運んでくると、アイオロスは執務机で、アケローオス河神は来客用の長椅子の上で、それぞれ甘くみずみずしいその黄色の果実を食べ始めた。
「あ、そういえば、アケローオス様。サガの誕生日に練り香水を贈ってくれたそうですね。ありがとうございました!」
「ああ、あれか」
 アイオロスは顔をにやけさせ、実に嬉しそうに言葉を続けた。
「いや〜、本当にあれは良かったです。サガがいつにもましてエロくて、エロくて、エロくて、そりゃもうエロくて…。あの堅物のサガが、あの夜はすごく積極的で、普段はしないあんな体位やこんな体位もしてくれて、喘ぎ声だって全然抑えなくて、その上に疲れ知らずで、何度でもおれを求めてくれて、おれもサガにせがまれるままその気になっちゃって、時間も気にせずがんがんやって、気づいたら夜が明けてたくらいで…」
「…ああ、そう…」
 延々と続くアイオロスののろけ話に、アケローオス河神はややげんなりとした表情になった。「なぜこいつはこんなことをおれに話すんだろう…」といぶかしむ河神を前に、アイオロスは相手の反応も気にせぬまま、「誕生日の夜のサガがいかに魅力的で情熱的であったか」を一方的に熱くアケローオス河神に語り続け、最後に爽やかで健康的な笑顔とともにこう言い切った。
「いや、本当にありがとうございました!あの練り香水の催淫剤、すごい効果ですね!」
「…は?」
 アイオロスの言葉に、だがアケローオス河神は目を見開いて驚いた顔になった。
「…いや、あの練り香水に催淫剤とか入れさせてないんだが…」
 その返答に、今度はアイオロスが不意を突かれたような顔になった。
「え?」
 アイオロスの反応に、再びアケローオス河神が疑問符を投げかける。
「え?」
 かみ合わない会話に頭をひねった後、二人は沈黙し、そして互いを見つめ合った。
「………」
「………」
 視線を交わすアイオロスとアケローオス河神の間に気まずい空気が流れる。
「…え?じゃあ、あのサガは素の状態で…?」
 やがてぼそっとアイオロスが呟いた。
「あー…あー…あー…」
 アケローオス河神は何かを納得したような表情になって空中を見つめた。
「そっかー。誕生日の夜で、普段は身につけない香水とかつけたんで、サガが張り切っちゃったんだなー。なるほどなー…そうかー…」
 うんうんとうなずいているアケローオス河神を前に、先程までの勢いはどこへやら、アイオロスは赤面して口ごもった。
「いや…その…何と言うか…、すみません…」
 アイオロスは思わず謝罪した。別に謝ることでもないのだが、誤解に基づいてアケローオス河神にサガの痴態を得々と聞かせていたのかと思うと、豪気な彼でもさすがに気恥ずかしくなる。
「いやいや、仲良きことは美しきかな、だ。ぜひこれからもその調子でやってくれ」
 そして持参したアップルマンゴーを一つ平らげたアケローオス河神は、何に対してか「ごちそうさまでした」と言って、サガに会うことなく教皇の間を辞したのだった。

 その後、アイオロスのもとにはアケローオス河神から「催淫剤入りの練り香水」が改めて届けられた。サガに贈られたものと同じような蓋つきの小容器に入れられたその練り香水を受け取ったアイオロスは、アケローオス河神が住むギリシャ北西部の方角を向いて深々と拝礼したのだった。

<FIN>

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