このシリーズ、回を重ねるごとで、ここに至り、「北摂」の欠くことの出来ない「文化アイテム」としての成熟をなし遂げたんじゃないだろうか?
大阪(豊中)豊中市立文化芸術センター大ホール
センチュリー豊中名曲シリーズVol.17
川瀬 賢太郎指揮 日本センチュリー交響楽団
(コンサートマスター 松浦奈々)
ピアノ独奏 若林 顕
グリーグ:「ペール・ギュント」組曲 第1番 作品46
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
ラヴェル:マ・メール・ロワ
ラヴェル:ボレロ
今日、何故そう思ったか。それは、コンサートに先立って行われるプレパフォーマンス&トークが立ち見もでる盛況だったこと、そしてお母さんに連れられてやってくる小学生と思しき少年少女が少なからず見かけられたこと。
このコンサートシリーズの聴衆が育っています。
だから、SD仕様の客席はキャパの半分しか入らないけれど熱気をもって演奏を待ち、演奏に対しての反応も、そのタイミングと熱さにおいて、成熟した「大阪の聴衆」にひけをとらない。いや、むしろ「ワクワクさ」においてはその上を行く。
川瀬さんの指揮も全力投球、ピアノの若林さんも没入せんがごとくのロマンティシズムとダイナミズム。そこから立ち上がるグリーグは、この曲が突出したロマン派ピアノ協奏曲の名曲であることを再認識させる。蕩けるように甘い響きと、熱く熱く叩き込まれるピアニズム。これに淫するがごとくに身をゆだねる休日の午後のひと時の、なんと贅沢で芳醇であることか。
このコンチェルトを取り囲む、ペール・ギュントとラヴェルもまた「名曲」の名に恥じぬ魅力と香りを身にまとい、ボレロの転調してからのクライマックスを渾身の指揮で振りぬく川瀬さんの姿を食い入るように見守る聴衆がかもしだす空気は、「豊中名曲」聴衆特有のキラキラしたまっすぐな感動を湛える。
ああ、こうやって「コンサート」が育っていくんだ。「聴衆」が育っていくんだ。
そして、来季からこのシリーズは新たな衣装を身にまとう。僕もまた、その場にいよう。豊中の「若い」聴衆の一員として。
ログインしてコメントを確認・投稿する