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2020年10月22日09:03

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短気連載ブログ 淋しい生き物たち−ねぇおじーちゃん 第11話

 大体冷やかしの対象なんて冷やかしたい子たちにとっては誰でもよかった。何の根拠もなくても、たまたま男女がふたりで立ち話をしていただけで、「うわー、熱いなぁ」なんて冷やかされたものだ。大して悪意などない。日常的な挨拶か定型的反応、あるいは軽いギャグのようなものだった。少なくとも冷やかす方にとっては。
けれども圭子さんとぼくには、まず名前の共通点があり、誕生日が1日違いということがあり、そういう子たちが仕掛けたことだったかどうかは別にして、同じ保健委員に選ばれたという、クーちゃんの言ういくつもの縁(根拠)があったから冷やかしには格好のターゲットになったし、それに多分、ぼくが甘酸っぱい感情を圭子さんに抱いていることくらい、勘の鋭い女子たちには丸見えだったのだろう。
 気のいい女子たちの冷やかしには毒がないし、節度もある。冷やかされることが照れくさくても嬉しかったし、それで圭子さんもぼくのことを意識してくれるだろうと思った。
一方、悪ガキや一部女子たちの冷やかしは執拗で品がなく、自分たちが楽しむためだけに人をもてあそんでいるのだから、自分の純粋な思いが汚されているようでイヤな気分にさせられた。それが不愉快だからそんな子たちのいるところでは圭子さんとの会話を控えなければならなかったし、からかわれるのが苦痛で圭子さんがぼくを避けるようになるのではないかと心配でもあった。
 でも、圭子さんはぼくとのことを誰に冷かされても、いつも「もう! やめてよ」と笑顔でやわらかな抗議をするだけだった。
          フォト

「他にも何かイヤなことがあったの?」
「あったなぁ。イヤなことっていうより困ったことがね」

 恐らく圭子さんもぼくのことを憎からずは思ってくれていただろう。ぼくの思いとは随分ひらきはあったかもしれないけれど、ぼくの気持ちにも気づいてくれていたと思う。
 ただ圭子さんには小学校時代から続く無二の親友がいて、葉子さんと言ったのだけど、彼女も同じクラスのメンバーだった。成績は7クラスか8クラスあった学年でもトップレベル。うちのクラスの副委員長だった。気が強いのと近寄りがたい雰囲気とで男子の人気はさほどでもなかったけれど、圭子さんと葉子さんは一緒にいることが多いので、3人で喋ることもよくあったし、ぼくは他の男子たちよりは葉子さんと親しかったと思う。
 ある日の放課後、圭子さんがぼくにメモをそっと手渡してくれた。
 その少し前、圭子さんとぼくは夏休みに神社のお祭りに行こうかという話をしていた。

(挿絵 匿名画伯)

【作中に登場する人物、施設等にモデルはありますが、実在のものとは一切関係がありません】


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