●澤田隆治著『永田キング』読了。 労作っていうか、半分資料集。
単なる「和製グルーチョ・マルクス」ではなく、比類ない体技と現代的センスで一世を風靡し、一時はエンタツアチャコやエノケンと肩を並べた、忘れ去られた喜劇人の事跡を、座員だった息子さんたちからの聴き取りや、吉本・松竹に残された記録をもとに、可能なかぎり詳しく描き出した。
ただ、しゃべくり漫才ではなく、スポーツねたやアクロバティックな殺陣やドタバタといった「見せる」芸の人だったので(彼の野球をスローモーションで見せるというコントはラスヴェガスでも受けたという)、録画がなかった時代には、その面白さを後世に伝えるすべがなかった。
いまならテレビで人気を博しているだろうけど、それが普及する直前に「消えた」人だったから。
晩年は、米朝さんの師匠米團治のことばどおり、芸人の「末路哀れ」を地で行ったという(体技系の人だったから、とくに)。
「てなもんや」と「ひょうきん」のプロデュースで名を高めた澤田さんも、86歳。
いまだに、こんなしっかりした仕事を私たちに届けてくださる。 尊いことです。
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