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2020年10月17日09:43

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短期連載ブログ小説 淋しい生き物たちーねぇおじーちゃん 第6話

「かわいかった? びじん?」
「そうだねぇ、美人ではなかったけど、そこそこ可愛かったかな? 結構男子には人気があったから。でもそれは可愛いからじゃなくて、圭子さんがすごく気立てのいい子だったからだと思う」
「きだてって?」
「えーっと、何て言うかな、誰にでもやさしくて感じがいい子って言ったらわかる?」
「うん。さらちゃんみたいな子なんだ」
「そんなお友だちがいるんだね。きっといい子なんだ。クーちゃんは気立てのいい子かな?」
「うーん・・・・。いっつもじゃないの。ともだちにいじわるしたりすることもあるから」
「そっか。ま、ぼくもおんなじだからいいさ。でも圭子さんはいっつも気立てがいい女の子だったんだ。ホントに誰にでもやさしくてね、怒った顔をしたとこなんか見たことなかったな」
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「ふーん。さらちゃんだってたまにはおこるよ。だんしがわるいことしたときとか」
「それはそれでいいことだと思うよ。圭子さんだって腹が立つことはあったと思うけど、でも圭子さんはいっつも笑顔だったなぁ」

 ぼくが入学した中学校にはふたつの小学校から6年生が上がってきた。自分の小学校から来た女子のことはクラスの違う子でもたいてい知っていた。けれども深井圭子さんは違う学校から来た子で、特に目立つタイプではなかったけれど、ぼくは彼女の立ち居振る舞いを見て、すぐにほのかなものを感じたのだった。初めて目にするタイプの女の子だと思った。
 それは同じ小学校に彼女を超えるほど魅力的な女子がいなかったからなのか、小学生のころよりは少し強く異性を意識するようになったからなのか、どちらかはわからない。でも、深井さんよりもっと美人だったり目立ったりする女子はいたけれど、ぼくには深井圭子さんが誰よりも魅力的に映ったのだ。ぼくの名前が圭史だったので、彼女と一字違いの名前だということも、ぼくを少しわくわくせた。

(挿絵 匿名画伯)

【作中に登場する人物、施設等にモデルはありますが、実在のものとは一切関係がありません】
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