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2020年05月15日16:45

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「クルードさんちのはじめての冒険」

先日、BS日テレで放映した字幕版をたまたまリアルタイムで視聴。
ドリームワークスの3DCGアニメ、2013年作。

面白かった!頭がぐらぐらするほど笑った。
後でスタッフを見たら、原案・脚本・監督の1人が『ヒックとドラゴン』シリーズのクリス・サンダースではないか。面白い筈だ。OPとEDが2Dアニメになっているのだが、そこに出て来るドラゴンたちの絵は『ヒックとドラゴン』に似ている。『ヒックとドラゴン』同様に3D立体視用の制作で随所に立体視を意識した画面設計が見られる。

舞台は原始時代。登場するのは原始人と得体のしれない生き物。彼らは皆パワフルで個性的。原始人たちは言葉を喋り、ニコラス・ケイジやエマ・ストーンらが声を演じていて上手い。
原始時代といっても、この地球とはやや趣を異にしていて、鮮やかな色彩や起伏の大きい雄大な土地に得体の知れない原始生物が跋扈しているイマジネーション豊かな世界。映画『アバター』を思い起こしてもらえば雰囲気が伝わると思う。
タイトルにあるクルード一家が主な登場人物。強烈な父権を発揮して一家を守ろうと頑張る父親(声=ニコラス・ケイジ)、母親、長男、長女、次女、祖母のパワフル6人家族。これに新しい住処を求めて移動中のティーンエイジャー男子ガイ(声=ライアン・レイノルズ)が加わる。
クルード一家の毎日はとてもパワフル&タフネス。食料を調達するにもアメフトさながらに原始世界を駆け回る。ギャグまたギャグの釣るべ打ちだ。
ヒロインは長女のイープ(声=エマ・ストーン)。トラの毛皮を着ており、甚大なバイタリティーの持ち主。いわゆる女の子らしさとは無縁のワイルドな野生児ながらホルターネックにベアトップの衣装は悩ましく、よく見ると顔立ちもキュート。性格は進取の気質たっぷりで、一家が住処にしている岩穴からどこか遠くへ行きたくて仕方なく、いつも父親と衝突している。ディズニーには絶対にいないタイプ。
話はそんな彼女がこっそり岩穴から抜け出して、ガイと出会うところから転回。彼らのこの世界には大異変が迫っており、家族を失ったガイはたった一人で安寧の新天地を目指す旅をしているのだった。新世界への憧れに夢中になるイープ。ガイの話に半信半疑だった一家も相次ぐ天変地異に危機を悟り、共に旅立つ。
体力勝負のクルード一家に対してガイは知性に優れたタイプ。『ヒックとドラゴン』のひ弱な主人公ヒックの仲間と言える。
旅に出た一家はガイの知恵に度々救われ、火を覚えるなど人類の進化を辿るが如くに見識を新たにしていく。その成長ぶりがアイディアたっぷりに描かれて目覚ましい。
一方、古くからの習慣を頑固に守ることこそ生き残る第一の術と固執する父親はどんどん面目を失い肩身が狭くなっていく。父権や男らしさが力を失っていく様が滑稽な展開の中で描かれるが、決して嫌味でも哀れすぎることもない。この辺りのバランス感覚はさすがだ。
父親が実は母系家族の入り婿であり、目の上のたんこぶで、見た目は萎びているが超パワフルな義母を内心では邪魔にしており、義母が命の危険に見舞われる度に世にも邪悪な顔でニヤリとするブラックユーモアがまた利いていて、一筋縄でいかないキャラクターがいいのだ。大事な愛娘が関心を持っているガイに露骨にフェイントをかけるのも微笑ましい。父と娘が互いを大切に思いながら素直になれない様子もいい。
出て来る動物植物も実にユニーク。一家の宿敵のネコ科大型獣がいるのだが、猛獣にしては大きな四つ足がもこもこして可愛いと思っていると果たしての展開や、生き別れたペットとの思わぬ再会などもあり、人物のみならず出て来る生き物全部が好きになってしまう心地良さがある。
ある日、一行は天地鳴動の大ピンチに見舞われる。その危機を救うのがすっかり権威喪失していた父親のフィジカルな力。一大スペクタクルの中で家族を安全な場所に移し、1人取り残された彼はどうなる?のハラハラドキドキといったらない。
死を覚悟した父親が洞窟の中でとる行動も作者が信じているに違いない芸術や創作の意味を言葉でなく伝えてぐっと来る。何でもない短いシーンだが、ここに一番の思いが込められているような気がする。
意表を突く解決策と、ラストの胸のすくような解放感は格別。家族の絆と新しいものへ挑戦する心はいつの時代にも不変だ。

でも、この映画、本国の評論家筋には不評だった模様。こういう滑った転んだの面白さ(投げ捨てたバナナの皮で滑って転ぶシーンさえある)で押すタイプの作品はそういう向きには受けない。日本で『どうぶつ宝島』が公開時には評価されなかったのと同じだ。
でも、面白さは間違いなし。
クリス・サンダースの作品としては『ヒックとドラゴン』の後。ドリームワークスの公開順では『ガーディアンズ 伝説の勇者たち』の次。日本では劇場公開されておらずDVDスルーだ。惜しい。
これ、日本語タイトルも良くないと思う。『クルードさんちのはじめての冒険』では何が何だかイメージが湧かない。平仮名が多すぎて幼児向けのように見える。「クルードさん」が何なのか知らないのだから原始時代の話とは全く思わないし、スペクタクルなイメージも皆無。「はじめてのおつかい」的なのほほんとした雰囲気だ。事実、だいぶ以前にレンタルビデオ店で背文字を見たのだが食指は動かず、アニメかどうかすら不明だった。『ヒックとドラゴン』の公開時の宣伝の失敗は周知していると思うが、ドリームワークスはちょっと運が悪すぎる。たまたまBSで見られて良かった。こればかりはステイホーム様々だ。
ウィキペディアによると、そもそもの企画はドリームワークスとアードマンの為のもので、途中で変更になったとのこと。不思議な経緯。アードマンが原始時代を舞台にした『アーリーマン』と何か関わりがあるのか定かではない。
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