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2020年04月26日03:17
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佐賀紀行18 龍泰寺 ／ 與賀神社
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３月22日日曜日は島義勇銅像を見学した後、佐賀城西方にある曹洞宗平安山龍泰寺を訪れました。
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ここは與賀(ﾖｶﾞ)城の跡です。筑前守護少弐満貞(ｼｮｳﾆﾐﾂｻﾀﾞ)は肥前国佐嘉(ｻｶﾞ)郡與賀荘にも所領を有しており、三男教頼(ﾉﾘﾖﾘ)が居館を構えていました。ここは少弐氏を支持する有力国人領主竜造寺氏の村中城に隣接した場所でした。
永享３(1431)年、室町幕府第６代将軍足利義教の命を受けた周防・長門・豊前守護大内持世(ｵｵｳﾁﾓﾁﾖ)が九州へ侵攻し、満貞の長男資嗣は與賀館へ逃れますが敗死、筑前国秋月城に拠った満貞も永享５(1433)年に戦死したため、教頼は対馬の宗氏を頼って落ち延びました。
文安４(1447)年、教頼は大内氏と対立していた幕府管領細川勝元によって赦免され、宝徳２(1450)年に與賀館へ戻りますが、応仁２(1469)年、応仁の乱に乗じて大内政弘支配下の大宰府を攻めた結果、大内軍の反撃によって筑前国志摩郡の高祖城に追い込まれ、自刃を余儀無くされました。
教頼の子政資は一時は肥前・筑前・豊前の三ヶ国を制覇しますが、応仁の乱が終息して大内政弘が再び北九州へ出兵すると忽ち敗北して肥前国へ逃れ、文明14(1482)年に與賀館を改修して與賀城を築き、竜造寺康家の村中城と相互支援の態勢を整えました。しかし、明応６(1497)年に周防の大内義興が肥前国へ出兵、政資は梶峰城で邀撃したものの敗れ、現多久市の専称寺で自刃してしまいました。その後、與賀城の名は史料から消えますので、廃城になったと推定されます。
その後、永禄８(1565)年に至り、当時東肥前を制覇していた村中城主竜造寺隆信が竜造寺氏の安泰を祈願して、大圭和尚を招聘、與賀城跡に寺院を創建しました。寺号は「竜造寺安泰」の意味で、本尊は釈迦如来です。
天正12(1584)年に隆信が沖田畷(ｵｷﾀﾅﾜﾃ)の合戦で敗死したため、この寺に墓所を築き、後に夫人や子の政家夫妻も葬られました。しかし、竜造寺隆信等の墓所は、明治４(1871)年に佐賀藩主鍋島氏の菩提寺である高伝寺に改葬され、竜造寺の系統としては、政家の子村田安良の子孫で久保田10770石を領した村田家の墓地だけが残っています。但し、村田家は途中で鍋島家から養子を迎えています。
山門です。明治元(1868)年の廃仏毀釈に際して、曹洞宗般若山慶��(ｹｲｹﾞﾝ)寺から移築されました。
本堂です。明治７(1874)年の佐賀の乱で炎上した佐賀城本丸御殿の内、焼け残った玄関・式台等が解体された部材を移築し、大正11(1922)年に建立(ｺﾝﾘｭｳ)されました。
龍泰寺には内閣総理大臣大隈重信侯爵の墓もあります。
重信の本墓は、東京都文京区の真言宗豊山派神齢山悉地院大聖護国寺にありますが、こちらにも分骨されているのです。
墓地には久保田領主村田家歴代の墓標が並びます。
重信の墓がある場所は、本来は竜造寺隆信の墓があった場所っぽいです。
かなち立派な墓でした。
龍泰寺から北上すると、路傍の花壇で多くの花々が咲き乱れていました。
チューリップです。
西洋油菜です。
やがて與賀神社〔県社〕に到着しました。
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社伝によれば、人皇第29代欽明天皇25年(A.D.564)に土地開拓の鎮守神であった佐嘉郡小津西郷の塚原大明神を遷して祀ったのが始まりとされ、当時、この一帯は河口デルタ地帯の芦原だったため芦原大明神と称していましたが、後に朝廷から与止日女(ﾖﾄﾞﾋﾒ)大明神の神号を与えられて勅願所となったと伝えられます。当社では、与止日女神を彦火火出見尊(ﾋｺﾎﾎﾃﾞﾐﾉﾐｺﾄ)夫人で神武天皇の祖母である豊玉姫命(ﾄﾖﾀﾏﾋﾒﾉﾐｺﾄ)の事だとしています。
この地域は12世紀に最勝寺領の與賀(ﾖｶﾞ)荘となったため、鎌倉時代には與賀庄鎮守宮と呼ばれ、建暦２(1212)年に鎌倉幕府執権北条義時が社殿を再興、寛元３(1245)年に執権北条経時が御嵯峨天皇の勅によって祭祀の礼式を定めたとされています。建長３(1251)年には與賀荘地頭であった幕府鎮西奉行少弐資能(ｼｮｳﾆｽｹﾖｼ)が洪鐘(ｺｳｼｮｳ)一口を寄進した記録が残ります。
文明14(1482)年に少弐政資が與賀城を築くと、当社を鬼門の鎮守として社殿を修復しました。その後、竜造寺氏・鍋島氏からも崇敬を集め、特に鍋島氏は藩祖鍋島直茂が朝鮮出兵の際に武運長久を祈願し、帰国後にその報賽(ﾎｳｻｲ)として社殿や神輿を寄進しています。初代佐賀藩主鍋島勝茂も毎年掃除人夫120人を給付し、他に社領として65石５斗を寄進しました。
三の鳥居〔重要文化財〕は慶長８(1603)年に鍋島直茂夫人お藤の方(陽泰院)によって献納された石造明神鳥居で「佐賀荘正一位与止日女大明神」の銘を持ちます。「肥前鳥居」の初期の物として貴重な存在です。
石橋〔重要文化財〕は、慶長11(1606)年に鍋島直茂が朝鮮出兵から無事帰還した事を祝って寄進した物で、橋脚が６基18本、擬宝珠(ｷﾞﾎﾞｼ)が10個あります。
楼門〔重要文化財〕は文明14(1482)年に少弐政資が寄進した物で、佐賀県内最古の木造建造物です。総丹塗(ﾆﾇﾘ)で正面三間・側面二間、屋根は入母屋造(ｲﾘﾓﾔﾂﾞｸﾘ)で、当初は杮葺(ｺｹﾗﾌﾞｷ)でしたが、後に銅板葺屋根に改められました。
拝殿〔登録文化財〕です。
宝暦９(1759)年に佐賀藩第６代藩主鍋島宗教が造営した軒唐破風(ﾉｷｶﾗﾊﾌ)付の入母屋造建築です。室内も装飾豊かで華やかな造りとなっています。大正２(1913)年に屋根を従来の瓦葺から銅瓦葺に葺替え、さらに拝殿正面扉の上下蔀戸(ｼﾄﾐﾄﾞ)を開閉扉に改造しています。
本殿〔登録文化財〕です。宝暦８(1758)年に鍋島宗教が造営した石積基壇上に立つ大型の五間社流造で、内外に精巧な彫刻が施されています。大正２(1913)年に屋根を従来の銅瓦葺から銅板平葺に改築しています。
拝殿と本殿を連接しているのが幣殿〔登録文化財〕です。
切妻造(ｷﾘﾂﾏﾂﾞｸﾘ)で、本殿と同様、大正２(1913)年に屋根を従来の銅瓦葺から銅板平葺に改築しています。
摂社の少弐神社です。
与賀城主少弐政資を與賀神社再興・郷土開発の守護神として祭る神社です。昭和27(1952)年に楼門解体修理落成を記念して建立されました。
摂社の佐賀恵比須神社です。
明治37(1904)年に地元の有志が兵庫県西宮神社から恵比寿大神を勧請(ｶﾝｼﾞｮｳ)して創建しました。佐賀市は市内の恵比寿像数が日本一として恵比寿を用いた街づくりを行っており、その中心的な存在として十日恵比寿の時には大いに賑わいます。
神宝の太刀〔重要文化財〕です。銘は「康…」としか判別出来ませんが、応永年間(〜)に備前国長船(ｵｻﾌﾈ)の康光が作ったと推定されています。
神宝の與賀大明神縁起図(ﾖｶﾞﾀﾞｲﾐｮｳｼﾞﾝｴﾝｷﾞｽﾞ)〔佐賀市指定文化財〕です。
永松玄偲(ﾅｶﾞﾏﾂｹﾞﾝｼ)作のの絹本着彩掛け軸で、天地2.17ｍ・幅1.55ｍあります。延宝６(1678)年に佐賀藩第２代藩主鍋島光茂の夫人から奉納寄進されました。
與賀神社境内には楠の巨樹が数本ありますが、本殿南側の巨樹は佐賀県指定天然記念物となっています。
根回り25.5m・目通り幹回り9.8m・樹高20.5mで、枝張りは東西37m・南北25mに達します。
樹齢は1400年以上と推定されますから、神社創建の頃から生き続けている訳です。
根元には正岡子規門下の俳人青木月斗(ｱｵｷｹﾞｯﾄ；1879〜1949)による「我に迫る三千年の楠若葉」の句碑があります。
本殿北側の楠も相当な巨樹です。
《続く》
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ここは與賀(ﾖｶﾞ)城の跡です。筑前守護少弐満貞(ｼｮｳﾆﾐﾂｻﾀﾞ)は肥前国佐嘉(ｻｶﾞ)郡與賀荘にも所領を有しており、三男教頼(ﾉﾘﾖﾘ)が居館を構えていました。ここは少弐氏を支持する有力国人領主竜造寺氏の村中城に隣接した場所でした。
永享３(1431)年、室町幕府第６代将軍足利義教の命を受けた周防・長門・豊前守護大内持世(ｵｵｳﾁﾓﾁﾖ)が九州へ侵攻し、満貞の長男資嗣は與賀館へ逃れますが敗死、筑前国秋月城に拠った満貞も永享５(1433)年に戦死したため、教頼は対馬の宗氏を頼って落ち延びました。
文安４(1447)年、教頼は大内氏と対立していた幕府管領細川勝元によって赦免され、宝徳２(1450)年に與賀館へ戻りますが、応仁２(1469)年、応仁の乱に乗じて大内政弘支配下の大宰府を攻めた結果、大内軍の反撃によって筑前国志摩郡の高祖城に追い込まれ、自刃を余儀無くされました。
教頼の子政資は一時は肥前・筑前・豊前の三ヶ国を制覇しますが、応仁の乱が終息して大内政弘が再び北九州へ出兵すると忽ち敗北して肥前国へ逃れ、文明14(1482)年に與賀館を改修して與賀城を築き、竜造寺康家の村中城と相互支援の態勢を整えました。しかし、明応６(1497)年に周防の大内義興が肥前国へ出兵、政資は梶峰城で邀撃したものの敗れ、現多久市の専称寺で自刃してしまいました。その後、與賀城の名は史料から消えますので、廃城になったと推定されます。
その後、永禄８(1565)年に至り、当時東肥前を制覇していた村中城主竜造寺隆信が竜造寺氏の安泰を祈願して、大圭和尚を招聘、與賀城跡に寺院を創建しました。寺号は「竜造寺安泰」の意味で、本尊は釈迦如来です。
天正12(1584)年に隆信が沖田畷(ｵｷﾀﾅﾜﾃ)の合戦で敗死したため、この寺に墓所を築き、後に夫人や子の政家夫妻も葬られました。しかし、竜造寺隆信等の墓所は、明治４(1871)年に佐賀藩主鍋島氏の菩提寺である高伝寺に改葬され、竜造寺の系統としては、政家の子村田安良の子孫で久保田10770石を領した村田家の墓地だけが残っています。但し、村田家は途中で鍋島家から養子を迎えています。
山門です。明治元(1868)年の廃仏毀釈に際して、曹洞宗般若山慶��(ｹｲｹﾞﾝ)寺から移築されました。
本堂です。明治７(1874)年の佐賀の乱で炎上した佐賀城本丸御殿の内、焼け残った玄関・式台等が解体された部材を移築し、大正11(1922)年に建立(ｺﾝﾘｭｳ)されました。
龍泰寺には内閣総理大臣大隈重信侯爵の墓もあります。
重信の本墓は、東京都文京区の真言宗豊山派神齢山悉地院大聖護国寺にありますが、こちらにも分骨されているのです。
墓地には久保田領主村田家歴代の墓標が並びます。
重信の墓がある場所は、本来は竜造寺隆信の墓があった場所っぽいです。
かなち立派な墓でした。
龍泰寺から北上すると、路傍の花壇で多くの花々が咲き乱れていました。
チューリップです。
西洋油菜です。
やがて與賀神社〔県社〕に到着しました。
https:/
社伝によれば、人皇第29代欽明天皇25年(A.D.564)に土地開拓の鎮守神であった佐嘉郡小津西郷の塚原大明神を遷して祀ったのが始まりとされ、当時、この一帯は河口デルタ地帯の芦原だったため芦原大明神と称していましたが、後に朝廷から与止日女(ﾖﾄﾞﾋﾒ)大明神の神号を与えられて勅願所となったと伝えられます。当社では、与止日女神を彦火火出見尊(ﾋｺﾎﾎﾃﾞﾐﾉﾐｺﾄ)夫人で神武天皇の祖母である豊玉姫命(ﾄﾖﾀﾏﾋﾒﾉﾐｺﾄ)の事だとしています。
この地域は12世紀に最勝寺領の與賀(ﾖｶﾞ)荘となったため、鎌倉時代には與賀庄鎮守宮と呼ばれ、建暦２(1212)年に鎌倉幕府執権北条義時が社殿を再興、寛元３(1245)年に執権北条経時が御嵯峨天皇の勅によって祭祀の礼式を定めたとされています。建長３(1251)年には與賀荘地頭であった幕府鎮西奉行少弐資能(ｼｮｳﾆｽｹﾖｼ)が洪鐘(ｺｳｼｮｳ)一口を寄進した記録が残ります。
文明14(1482)年に少弐政資が與賀城を築くと、当社を鬼門の鎮守として社殿を修復しました。その後、竜造寺氏・鍋島氏からも崇敬を集め、特に鍋島氏は藩祖鍋島直茂が朝鮮出兵の際に武運長久を祈願し、帰国後にその報賽(ﾎｳｻｲ)として社殿や神輿を寄進しています。初代佐賀藩主鍋島勝茂も毎年掃除人夫120人を給付し、他に社領として65石５斗を寄進しました。
三の鳥居〔重要文化財〕は慶長８(1603)年に鍋島直茂夫人お藤の方(陽泰院)によって献納された石造明神鳥居で「佐賀荘正一位与止日女大明神」の銘を持ちます。「肥前鳥居」の初期の物として貴重な存在です。
石橋〔重要文化財〕は、慶長11(1606)年に鍋島直茂が朝鮮出兵から無事帰還した事を祝って寄進した物で、橋脚が６基18本、擬宝珠(ｷﾞﾎﾞｼ)が10個あります。
楼門〔重要文化財〕は文明14(1482)年に少弐政資が寄進した物で、佐賀県内最古の木造建造物です。総丹塗(ﾆﾇﾘ)で正面三間・側面二間、屋根は入母屋造(ｲﾘﾓﾔﾂﾞｸﾘ)で、当初は杮葺(ｺｹﾗﾌﾞｷ)でしたが、後に銅板葺屋根に改められました。
拝殿〔登録文化財〕です。
宝暦９(1759)年に佐賀藩第６代藩主鍋島宗教が造営した軒唐破風(ﾉｷｶﾗﾊﾌ)付の入母屋造建築です。室内も装飾豊かで華やかな造りとなっています。大正２(1913)年に屋根を従来の瓦葺から銅瓦葺に葺替え、さらに拝殿正面扉の上下蔀戸(ｼﾄﾐﾄﾞ)を開閉扉に改造しています。
本殿〔登録文化財〕です。宝暦８(1758)年に鍋島宗教が造営した石積基壇上に立つ大型の五間社流造で、内外に精巧な彫刻が施されています。大正２(1913)年に屋根を従来の銅瓦葺から銅板平葺に改築しています。
拝殿と本殿を連接しているのが幣殿〔登録文化財〕です。
切妻造(ｷﾘﾂﾏﾂﾞｸﾘ)で、本殿と同様、大正２(1913)年に屋根を従来の銅瓦葺から銅板平葺に改築しています。
摂社の少弐神社です。
与賀城主少弐政資を與賀神社再興・郷土開発の守護神として祭る神社です。昭和27(1952)年に楼門解体修理落成を記念して建立されました。
摂社の佐賀恵比須神社です。
明治37(1904)年に地元の有志が兵庫県西宮神社から恵比寿大神を勧請(ｶﾝｼﾞｮｳ)して創建しました。佐賀市は市内の恵比寿像数が日本一として恵比寿を用いた街づくりを行っており、その中心的な存在として十日恵比寿の時には大いに賑わいます。
神宝の太刀〔重要文化財〕です。銘は「康…」としか判別出来ませんが、応永年間(〜)に備前国長船(ｵｻﾌﾈ)の康光が作ったと推定されています。
神宝の與賀大明神縁起図(ﾖｶﾞﾀﾞｲﾐｮｳｼﾞﾝｴﾝｷﾞｽﾞ)〔佐賀市指定文化財〕です。
永松玄偲(ﾅｶﾞﾏﾂｹﾞﾝｼ)作のの絹本着彩掛け軸で、天地2.17ｍ・幅1.55ｍあります。延宝６(1678)年に佐賀藩第２代藩主鍋島光茂の夫人から奉納寄進されました。
與賀神社境内には楠の巨樹が数本ありますが、本殿南側の巨樹は佐賀県指定天然記念物となっています。
根回り25.5m・目通り幹回り9.8m・樹高20.5mで、枝張りは東西37m・南北25mに達します。
樹齢は1400年以上と推定されますから、神社創建の頃から生き続けている訳です。
根元には正岡子規門下の俳人青木月斗(ｱｵｷｹﾞｯﾄ；1879〜1949)による「我に迫る三千年の楠若葉」の句碑があります。
本殿北側の楠も相当な巨樹です。
《続く》
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