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2020年04月17日04:57

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アマンダスポーツが面白い!

■アマンダスポーツが面白い!

僕の頭の中に残っているのは、開店当時のアマンダスポーツは、外洋カヌーとカーボンパドル屋さんのイメージだった。ドイツ製の防水布を木製フレームの折りたたみカヌーも印象に残っている。このドイツから輸入されたカヌーに興味があって、分解と組み立てを体験させてもらった。

見本の折りたたみカヌーをまず担がせてもらった。なんとか山を歩くスタイルで背負うことができて、渓流を歩いて移動できそうだった。狭い店内で梱包を解いて、千葉さんに手伝ってもらいながら組み立て始めると問題が発覚した。

木製のフレームを組み上げようとすると、左右でフレームの寸法が違っているのだ。どう見ても一方が3cmほど長すぎて、気のフレームを無理やりしならせて曲がりを作っても、ピンを通して先端を合わせて止めることができないのだ。

二人とも汗を垂らして力を込めているのに、なかなか組みあがらない。これじゃー渓流へ持って行っても、夕方になっても組みあがらないね〜、几帳面なはずのドイツ人の作ったものとは思えないねと、顔を見合わせて苦笑したことを覚えている。

そこからが千葉さんの凄いところ、組み立てを諦めないのだ。折りたたみの鋸を取り出してきて、木製のフレームをメジャーで測って切り始めた。先端にはドリルで穴を開けて固定ピンが通る穴を開け直して、補強の金具を外して、接着剤で固定した。

お昼頃に組み立て始めて、ここまでに4時間が経過していた。これで組み上がるだろうと、固定ピンを通すと左右のフレームが均等にアールを描いた。今度はそのほかのフレームも無事に連結できて、カヌーらしい形になった。

後は防水の布を縫い上げたものを、木製のフレームへ被せて固定するだけだ。ところがこの布があまりにもぴったりサイズに縫い上がっているので、二人で思い切り引っ張りながらでも、なかなかかぶせることができないのだ。

円周の小さいチューブラータイヤをリムへはめるのより難しい。部分的に引っ張っては、伸びたかなという瞬間にフレームへ被せて、1時間以上かけて、折りたたみの布張りのカヌーは組み上がったが、これが現地での作業だとしたら、クタビレ切ってパドルを漕げるかわからない。

カヌイーストでコラムニストのチキンラーメンをカヌーの上で作るコマーシャルで有名な野田さんの撮影にお付き合いした時に、この話をすると、同じドイツ製の折りたたみカヌーを愛用していたので、寡黙なはずの彼に、組み立てに5時間もかかったのと、ゲラゲラ大笑いされてしまった。

これ軽くていいんだけど、木製のフレームの精度悪いんだよ。作り直し覚悟で手間はかかるし、防水の布も慣らしをして、使い込まないと、とても一人じゃ被せられないというのだ。水の染み込みも起こるので時々防水性を復活させるメンテナンスも必要という。

渓流で底をこすって穴が開いても、適当なサイズの帆布を用意しておけば、沈没しても岸へ上がって乾かして、接着剤で貼り付ければすぐに復活できるよとアドバイスされた。急流を降るより、この人パドルをゆったり動かして、ポイントを移動してルアーフィッシングをしたり、水辺で遊ぶのが大好きなんだな。

アマンダスポーツの千葉さんはイシワタという引き抜き管のフレームチューブを作るメーカーのアドバイザーをやっていた。荻窪のパターソンズハウスの太宰さんのところで修行していた時期もあった。ヨーロッパ製の自転車パーツを輸入していた、フランスサイクルズジャパンという商社のスタッフだった人だ。

イギリス製のBSAのハブギヤ、サンプレックス、ストロングライト、TA、ユーレー、マファック、ジョス、ソービッツ、マヴィック、マイヨール、スイスワインマン、アルテンバーガー、シェーレン、などを輸入していた会社で、商社の丸紅と組んでべニックスという輪行車を企画していた人だ。

アマンダスポーツはその頃どんなロードバイクをつくっていたのか記憶がない。スチール製のフラットバーのクロカンモデルを見たような記憶がある。それにエクソン製のステンレスラグと、ピッチ系カーボンチューブの接着フレームを研究していた気がする。

そうそうその頃の千葉さんの飯のタネは、レーシングヨット作りだったと思う。ここで初期のカーボンファイバーとの出会いがあったと出会って、大きな可能性を感じたという。三菱レーヨンや東邦レーヨンとのお付き合いは長いのだ。

カーボン繊維メーカーは、この時期、何にカーボン繊維を使えるかを模索していた時代だ。大量に使われる可能性がある分野はもちろん、今はニッチでも可能性がある分野には試験操業レベルで投資してくれたのだ。

カーボン繊維も開発研究が進んで、弾性率の高いカーボン繊維も製造されて、鉄より強く、軽いという特性の新素材として注目されるようになる。最初はアルミラグとカーボンチューブとの接着構造だったが、接合部に電気腐食が発生して抜けが課題となる。

量産カーボンフレームはセミモノコック製法など、パート別に部分成型して接着する成型方法も進化する。アマンダスポーツの製造方法は高弾性のカーボン繊維をラウンドチューブに成型して、電気腐食を起こさない、相性のいいクロモリラグを手作りして。熱硬化型の接着剤で接合している。

ラグを手作りするのでスケルトンを自由にできるのだ。手作り品ならではの体格に合わせてスケルトンのオーダーや、ラグの肉厚の調整や、強度の違うカーボンチューブの中から、オーナーの体格や体力や走る距離などに合わせて、強度の違うチューブを選ぶことで、フレームの剛性のオーダーも可能なのだ。

カーボンディスクホイールの試作製造にも着手したり。パワー測定システムのSRMの輸入代理店になったり。振動減衰製に着目して、イタリア製の木リムを輸入したり、コンプレッションホイールの製造にも取り組んでいるし、ビットリアやソーヨータイヤに発注して、しなやかなラテックスチューブ入りの太い軽量タイヤの設計製造にも取り組んでいる。

カーボン繊維の優位性、パワー測定トレーニング機材、振動減衰性の重要性、転がり抵抗の小さいチューブラータイヤなど、世の中のバイシクルビジネスの流行や思想にとらわれることなく、次々に取り組んでいる。ともするとトレンドに流されそうになりそうだけど、ふと考えてみるとそこには千葉さんという、ことの本質を見極めて頑張っている先達がいる。

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