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2020年04月11日02:45

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ジャン・クロードキリーを見た

■ジャン・クロードキリーを見た

ワールドカップスキーを撮り続けているプロカメラマンの写真を見て、感動してアシスタントとして連れて行ってもらった。空港でアウディのクワトロのマニュアルを借りて、クネクネの細い雪道を運転して会場入りして。主催者のいるホテルのプレスレジストレーションに行った。日本からFAXで申し込みをしてあったので、国際プレス証を見せて無事にビブスも受け取った。

その頃のフランスのスーパーチャンピオンと言えばキリーだった。ダウンヒラーだと思っていたら、回転系もスラローム系も早かった。直線に入ると独特の卵型のクラウチングフォームになって加速していく。キリーを探しにフランスチームのテントに行ったり、ゲレンデを見にいった。ついに見つけた。

大きいアールの高速コーナーでもすきあらばクラウチングスタイルに入って空気抵抗を減らそうとしている。バランスを崩すとリカバリーが難しいフォームだ。直線の高速域ではストックを抱えて、後ろに揃えて徹底したエアロフォルムだ。

高速コーナーではスキーが暴れても腕を軽く広げて、ストックの先端が雪面に軽く引っかかるくらいで、余裕を持って曲がっているように見える。だけど、どの選手より早いタイムで通過している。雪の粉のキラキラ光る舞い上がりの量も少ない。エッジの使い方が違うみたいだ。

キリーが帰ってくるとフランスチームのジャケットを着たコーチが駆けよって来て、スキー板とストックとゴーグルに、ヘルメットに入ったグローブがなどのマテリアルが、ワックスマンへ手渡されると、1つ1つの状態を点検していた。

タイムキーパーが区間タイムとかフィニッシュタイムが記入された、ロンジンの3連のアナログストップウオッチが付いたボードを差し出していた。ボードにはストップウオッチのホルダーがあり、長いシングルプッシュレバーで時計を操作できるらしい。

フランスチームはインカムを全員が腰にぶら下げていて、遠いところにいるスタッフとはハンディタイプのモトローラの高出力トランシーバーで話していた。フランスチームのテントにスキー板の供給元のスタッフが集められた。昨日キリーとつきっきりでゲレンデを歩いていた、コースインスペクション担当のコーチも呼ばれている。

フランスのスキーメーカーのジャケットを着た3人の他に、イタリア人ぽい、ジャケットにブランドが小さく入ったエンジニア風の人が加わっている。キリーも来てスキー板が10セット近く並べられていた。よく見るとナンバリングされていて。例のタイムボードの紙にもタイムの後に板のナンバーが書かれていた。

スキー板にはそれだけでなく、滑走した回数がマジックで線を引かれていた。滑走回数はどうも板の性能や寿命に関わることらしい。今回のタイムを確認したスキー板メーカーのエンジニアらしいスタッフが、キリーが持って帰って来た板へ線を一本書き入れてフィニートと言ってテントの柱へ立てかけていた。なんだやぱりイタリア人じゃないか。

プレスのフルアクセスのビブスを着ていたので、結構中に招き入れてくれて、ココアをご馳走になったり、ポタージュスープを飲ませてもらったり、各チームのテントの中まで見せてくれたし。スキー板のロゴやワックスメーカのロゴを入れて、写真を撮れ撮れと言ってくれた。

すると、さっきのイタリア人が他チームのテントへもやって来て、スキー板のチェックを始めたのだ。ブランドロゴを見るとフランスチームとは違うブランドだった。どうして他チームのスキーをいじれるんだこの人という疑問が浮かんだ。ボンジュールと挨拶すると、疑問をなげかけると、あっさりと答えてくれた。これ全部うちの特注品なんだというのだ。イタリアの手作りスキーメーカだという。そこの開発エンジニアなのだそうだ。

スキー板の素材はカーボン、ケブラー、ノーメックスハニカム、アルミ合金、スチール板、グラスファイバー、熱硬化型のプラスチック、ガラスコート剤、それに30年も40年も寝かせた木材だというのだというのだ。木材には寿命があって、何度も滑るとヘタってくるので滑走回数をチェックしているのだそうだ。

同じように板を埋め込んでも、天然素材だから、振動吸収性能に差があって、接地感とか、反発とか選手が好みの乗り味があって、何度もコースを滑ってデータ採りと、選手の感じたフィーリングを聞いて本番用の板を時間をかけて選定していくのだそうだ。

単純にスキーワックスの塗り方や対応温度や雪質の変化に合わせてワックスを変えているわけではないようだ。どれをどう設定したかだけでなく、板の特性や寿命を考えてスタッフ全員に状況をわかるようにして、ローテーションしているのだ。1000分1秒を争う、すごい世界だな〜。

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