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2020年01月27日23:44

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【臭い物に蓋】パラサイト 半地下の家族

 
半地下は、日本の古い建物で見たことが何度かある。
中之島公会堂の半地下↓などはレトロな風情が乙だった。

 https://www.twin.ne.jp/~k-ohtani/mise/naka.html

リンクした写真のように半地下の窓外は掘り下げられており、開放感がある。
採光は十分、建物を囲む植栽があれば道路から隔てられ、より静かに落ち着ける。

こういう「洒落た半地下」しか知らなかった私は、韓国の半地下住居に驚いた。


 公式 http://www.parasite-mv.jp
 



監獄か、ナチスの目を逃れたユダヤ人やレジスタンスが潜む半地下のよう。

北朝鮮からの核攻撃に備えるシェルターを貧困家庭の住居に転用したものだそうだ。
2015年韓国人口住宅総調査によると、約82万人が半地下の住人という話に、絶句。

 映画「パラサイト」が描く、韓国のおそるべき「超格差社会」
  https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69292



トイレがむき出しの上、そこそこ汚部屋。あれはきっと臭い。相当なレベルだ。
「部屋の乱れは心の乱れ」と言う通り、主人公のキム一家は荒んでいた。

ところが、彼らは意外にもインクレディブル・ファミリーで、実力は結構ある。
実力はあっても、社会の競争から転落してしまうと這い上がれない。

這い上がろうと思ったら、コネを使うか、他人を蹴落としポストを横取りするか。
昔からずっと、韓国社会の仕組みはこうだったのかな…と思った。



エリート大学生と身分を偽ったキム家の長男・ギウが、家庭教師の職を得るため
IT社長邸へと向かう坂道は、関西きっての高級住宅地・芦屋の風景を思わせた。
きつい坂を気にせず、金持ちが高台に家を構えるのはどこも同じか。

理由は本作のクライマックスで分かる。
社長宅から一目散に我が家を目指したキム親子が、下りに下りまくる階段!
伏見稲荷か、とツッコミたくなるくらいの高低差だ。
やっとの思いで辿り着いた我が家は下水に飲み込まれており、彼らは全てを失った。
底辺で生きる者たちに安住の地はない。

それにしても、ギウと親友のエリート大学生は家族ぐるみの付き合いらしかったが、
どこでどうなって運命の明暗が分かれたのだろう…。



キム家の長女ギジョンは、ITに強い才女。不遇からか、クールな悪女になった。
普段は肝が座っているのに「ノープラン」を恐れ、パニックに陥る繊細さがある。
キャラ的には菜々緒だが、顔だちは典型的韓国顔。美貌をバラに例えられていた。


いかにも育ちが良さそうなパク社長の妻・ヨンギョは「シンプルな」女だった。
彼女は過保護で心配性で教育熱心だが、世間知らずの典型的セレブマダム。
親切で愛情もあるが、相手をよく見ていない。だから、すぐ騙される。
子供らにも、家政婦にも、そしてキム家の全員にも欺かれていた。ちょっと哀れ。

木村佳乃と松嶋菜々子を足して二で割って若くしたような美貌で、読モにいそう。
急遽開いた息子の誕生パーティーに駆けつけたゲストを迎えるときの仕草に笑った。
(きゃーっ)と駆け寄ってハグし、手を握ってぴょんぴょん跳ぶ。あるあるだ。


登場人物の中で、このヨンギョと、キム家の長女ギジョンが私は好きだった。
愚かだけど非常に恵まれた可愛いヨンギョと、賢くてクールで柄が悪いギジョン。
正反対のタイプだが、どちらも非常に魅力的な「悲劇のWヒロイン」だった。

彼女たちに比べると、男好きのJK、ダヘは完全に格下な感じ。笑



ところで、JKといえば間違いなく「もっとも臭いに敏感な人々」である。
彼女らは男の匂いや悪臭に対して特に過敏で容赦ない。これはホルモンのなせる技。

にもかかわらず、ダヘは半地下住まいのギウと「至近距離で」勉強していたのに、
「ギウの臭い」を全く意に介していなかった。

その一方、「もっとも臭いに鈍感」であるはずの活発な男子小学生・ダソンが、
美術の家庭教師としてパク家に乗り込んだギジョンとギウが「同じ臭い」だと
瞬時に見破ってしまった。

これは致命的なミスプロットだと思う。 「臭い」が鍵を握るサスペンスなのに。

20代の男女は、およそ両極端と言っていいほど体臭が違うもの。
その差を完全にマスキングして「同じ」と子供に言わしめるほど強烈な半地下臭。
その悪臭に、JKのダヘや、元お嬢様のヨンギョが全く気づかないなんて…。

アレルギー持ちの私でさえ、あの距離なら絶対に感づくんだけどな、と思っていた。



もっといえば、豪雨の中、我が家に戻って汚水を浴びまくったキム親子が、
翌日パク社長宅のガーデンパーティーに参加した時の様子があまりにも変だった。

子供がテントで一晩過ごせるほど陽気のいい時期(よく香り立つ)に、
風呂に入れず避難所でもらった服に着替えただけのキム親子は、さぞ臭ったろう。
3人ともただならぬ臭いを放っていたに違いない。

なのに、パク家に集った人々は誰1人、その強烈なはずの臭いに気づかないのだ。
(ベンツで移動中、ギテクの異臭に堪え兼ねたヨンギョが窓を開けたのみ)

父・ギテクと鼻付き合わせて茂みに隠れたパク社長も。
2人でこっそりいちゃつこうよとギウにキスして誘ったダヘも。
「サプライズのケーキ」についてギジョンと打ち合わせしたヨンギョも。


そんなバカなことって、ある??

あるとしたら、彼らは事実として「ほとんど臭ってない」んだよね。

この点に気づいてしまったら、あのクライマックスはとっても意味不明になる。

現に、私は(なんで?)と思った。


あの瞬間こそがミステリーの核心だったはず。

それが腑に落ちないってことは、つまり、プロット失敗だ。



ジェットコースター系・社会派・ミステリー・サスペンス・ホラーと
てんこ盛りの要素を、ねじ伏せるようにまとめ上げた力技には感服した。

これでもか!と過剰で過激な韓国映画のテイストは苦手だが、
社会問題の描き方が『ジョーカー』よりも良かったと思うので、レビューは☆4つ。


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