mixiユーザー(id:196524)

2020年01月01日14:45

92 view

あけすみ

◆あけおめです。

◆この世界の(さらにいくつもの)片隅に(映画)
(片渕須直監督)

正月の妻実家の広島帰省時に(さらにいくつもの)片隅にを観てきました。八丁座はゆったり落ち着いた雰囲気の良い映画館だなと。この映画を広島で観られてよかったですよ。

2016年に公開された前バージョンの映画ではカットされていた、原作での“リンさん関連”の描写を補足した作品…との認識で観に行きましたが、
実際の追加シーンはそれだけでなく、水原さんや親戚の人や隣組の人の描写や戦後の台風の描写なども加えられていて、それが人間関係や当時の状況をより深化させて心に迫らせる効果を持っていて、
1本の作品としてより完成度が高まったものになっていました。168分という長時間も気にならずにのめり込める素晴らしい作品になっていたかと。

追加シーンによって前映画と同じシーンでも印象が大きく変わってくるのが印象的でした。
特に「すずさんと周作さん」の関係性は前映画と同じ場面でもかなり印象が違って見えたかと。今作によって前作では秘められていた一面が新たに開示されたのだなあと強く感じました。
ノートの切れ端とかテルさんの遺品の紅とかも前作時点でキッチリ描写はされていたわけで、まさに「秘められていた」物語だったのだなと。

すずさんが周作さんに見初められたのはリンさんの“代用品”だったと言うのが観ている側としても辛く苦しいのですが、そういう2人でもぶつかって乗り越えてやがて本物になっていくのだなあと思えました。
ラストで2人が助けた子供も、「亡くした晴美さんの」「亡くした母親の」代用ではあるのかも知れないけど、そこには確かに愛も救いもあるし、そこから独自に大事な存在になっていけばいいのかなと。

序盤の学校時代で水原さんとのシーンが増えていて、水原さんの存在感が増していましたね。本先は一見「すずさん・周作さん・リンさん」の三角関係だけど、実際はそれに水原さんも加えた四角関係で、
周作さんに対するリンさんが、すずさんに対する水原さんで、どちらも過去に選ばなかった道の象徴で極めて対比的なんですね。
リンさんとの関係性と並べてみると周作さんの負い目も分かりやすいかなと。
そして、どんな道を選んでも、そこで良いことがあっても悪いことがあっても人は自分の人生を歩いていかないといけないのだなあとも思えました。

複雑な関係性があることを踏まえてのすずさんとリンさんの関係は切なくも目が離せない味わい深さがありました。桜のシーンとか良い場面ですよ。
花見のシーンは、戦時中の大変な状況下でもこんな華やかな状況があったのだなあと思いつつ、そこに来ている人達が「今生の別れ」を意識してるのだと思うと切なかったです。

広島の原爆投下後に、広島に行って戻ってきた人達の不調・変調が描かれていたのはキツい、なんとも言えない気持ちになりました。
あの当時は放射能のことなんて分からないけど、そこで大きく人生の道が別れてしまったのだなあと…。
この作品、ちょっとした違いで変わったかも知れない晴美さんの運命にせよ、本当はもう少し早く広島に帰るはずだったすずさんの運命にしても、そもそもすずさんと周作さんの馴れ初めにしても、
ちょっとしたことで(良くも悪くも)運命が別れてしまう場面があらためて考えると本当に多いんですよねえ…。

単なるシーン追加版にとどまらない、新たな視点を与えてくれる良い作品でした。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年01月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 

最近の日記

もっと見る