mixiユーザー(id:371669)

2019年10月25日19:39

243 view

今年も収穫多し、ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2019 秋の映画祭。

10月17日(木)  東京都写真美術館ホール
                    米アカデミー賞公認国際短編映画祭
  ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2019 秋の映画祭


 2019年受賞プログラム1〜次世代俳優特集〜

「頑固者」(ダヴィッド・ヘルマン)
車中で運転しながら、フリーハンドで携帯会話する男の姿が、延々と映し出される。後部座席からは赤ん坊の泣き声…。妻(?)との不仲から子供を浚ったみたいだが、声は次第にエキセントリックになってくる。そして、不気味な余韻を残すエンディングに至る。インターナショナル部門ベストアクターアワード受賞。アメリカ映画。8分32秒。(まあまあ)

「クローバー」(菅田将暉)
若いサラリーマンの日常が淡々と綴られる。悪友4人組が主人公の自宅に集まり、宴会してハシャぐ姿を長廻しで納めたり、時に下駄箱内からのアングルショットがあったりと、意味ありげながら、私には狙いが判らぬ退屈作だった。湯布院で観た柳英里紗の短編2本と同様の、ひとりよがりの「映画ごっこ」にしか見えない。好意的に言って「習作」「実験作」か。なお、これは「次世代俳優」菅田将暉の監督作品として上映されたもので、受賞作品ではない。日本映画。47分。(あまりよくなかった)


 2019年受賞プログラム5〜ヒューマンプログラム特集〜

「石が現れた」(コンスタンチン・ヴェネットポールズ)
家具もほとんどないモノクロ空間で、男女が質素だが仲良く暮らしていると、ある日、奇妙な石が出現する。一人が触れると、その者だけがカラーになる。最初は楽しく共有していたが、やがて独占しようと争いになり、悲劇に至る。冒頭にアダムとイヴの林檎の木に関わる一節が引用され、様々な奥深いアナロジーを感じさせるショートフィルムならではの秀作だ。アメリカ映画。11分35秒。(よかった。ベストテン級)

「名前って、ふたつ以上の鐘の音」(たかひろや)
ハーフ二世の青年の名前が、両親の姓の混合で、田中コンドーム・ジュリアン。何ともバツが悪く戸籍改名しようと悪戦苦闘するが、ある時、オマタ タツオ・オマタ サキという名前なのに、あっけらかんとしている二人に遭遇し、気にならなくなる。他愛ない話ではあるが、何となく面白い。第4回ブックショートアワード受賞。日本映画。15分47秒。(まあまあ)

「A+」(ベーラング・ミザイ)
学校帰りの男の子が、嫉妬深い夫婦の諍いに巻き込まれ、コキ使われてしまい振り回される姿が、微笑ましく楽しい。最後ッ屁のごとく、さりげなくエンディングにかます報復が、また楽しい。SSFF & ASIA 2019 アジア インターナショナル部門オーディエンスアワード受賞。イラン映画。15分30秒。(よかった)

「おわりはじまり」(一ノ瀬晶)
昔に着ていた夫のジャケットから、謎かけのようなメモを妻が発見。追っていくと、近所のお馴染みさんやお店を、メモの連鎖で次々と追う破目になる。そこには、それぞれの人の生きた歴史も反映されている。最後にたどり着いたのは、秘めた30年来のホノボノとした秘密だった。ただ、かなりリアリティに無理があり、凝った割りには面白さ半減の感も否めない。第3回キテミル川越ショートフィルム大賞受賞。日本映画。14分5秒。(まあまあ)

「見下ろすとそこに」(ゼーンファン・ヤン)
据えっぱなしワンカットで、あるアパートの12の窓の外景が、一望に捉えられる。明かりがついたり消えたり、様々な生活の光景が展開されている。映像と関係なく、さらにその近くの部屋なのだろう、争う男女の声が聞こえてくる。これも、近くの部屋か、心配して警察への通報も考えている男女の会話も被さる。でも彼等も結局は何もしない。映像内にあるどの窓も住人も、全く関心を示さない。隣は何をする人ぞ?都会の不気味さ。短編ならではの、ワンアイデアストーリーの素晴らしさだ。SSFF & ASIA 2019 ジョージ・ルーカス アワード(グランプリ)受賞。アジア インターナショナル部門 優秀賞(東京都知事賞)受賞。中国=フランス合作映画。10分15秒。(よかった。ベストテン級)

「ホセのトーキョー夢物語」(田中希美絵)
外国から、寿司職人のドキュメンタリーを撮りに来た監督が、スタッフに日本人客にふさわしいエキストラを集めることを指令し、東京を駆けずり廻らせることになるが、指示が適当なので、テンヤワンヤの事態に至る。浅草で和服の女子集団に声をかけたら、チャイナ グループだったりとかの面白さもあるが、全体的に私には、アイデア倒れに見えた。だから、最後の全員集まってのお祭り騒ぎも、もう一つ盛り上がりを感じられなかった。日本映画。15分9秒。(あまりよくなかった)


 今年の秋のショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2019も、私にとっていくつかの収穫があった。実はもう一つ「秋の BRANDED SHORTS プログラム」も観たのだが、これは厳密には短編「映画」ではない。チラシによれば2016年から始めた「映画的な広告作品を集めた部門!」とのことである。この日は、短い物は30秒、長いものは15分のCFが、16本紹介された。

 でも、インターナショナルカテゴリー受賞作品「22 AGAIN」を観ると、これは立派なショートフィルムと言わざるをえない。複数市民がプールで宝籤を買える国のCFで、なぜか発表前日の時間をループすることになった男の、策謀を巡らし賞金独り占めを目論む顛末が綴られるが、時間がループするので、賞金受け取りのところまで至らない。どうループから抜け出せたか、そこにヒューマンな落ちがつくのである。

 化粧品のCFでは、顔の小さなタトゥーが、勝手に動きだすユニークなイメージのものがあった。これなどは、スクリーンの劇場上映にはそぐわない。むしろプライベートなモニターで、顔を近づけて克明にその映像の魅惑を味わうものだろう。Netflixに席捲されている映像文化。映画というものは、確実に変貌しつつあることを痛感する。


10月18日(金)  UPLINK吉祥寺
「典座−TENZO」(富田克也)
空族の富田克也の最新作が、曹洞宗の住職を主演にしたセミ・ドキュメンタリーというのは意外だったが、実は監督のいとこなのだという。どうりでこれまでの、題材に比して激し過ぎない作風が理解できた。精進料理教室などを通じ、地元と密着する主人公と併行して、東日本大震災で被災し再建を目指している兄弟子の現在も描かれる。宗の高僧の話も描かれていく。私の実生活とフィットするものはあまり無いのだが、人は生きとしものを食して生き、「自然の循環の一部」という想いは、老境を迎えた私に、ひどくピッタリくる感慨だ。ただ、兄弟子の「お前それ、この福島で言えるか?」との詰問は、痛烈である。そんな感慨に脳天気に耽っていられるのは、私がまだまだ幸せということなのだろう。とんでもない不幸に見舞われたらどうなるか。それでも「循環の一部」と達観できたら、「悟り」の境地なのだろうが、多分そんなことにはなるまい。(よかった。ベストテン級)


10月23日(水)  UPLINK吉祥寺
「見えない目撃者」(森淳一)
憧れの警察官着任目前に、ちょっとしたミスの交通事故で高校生の弟を事故死させ、自身も失明し、引きこもり状態で精神科に通院するヒロインが、ひょんなことから誘拐事件(?)の目撃者(!)になってしまう。序盤は視覚障害者の目撃(?)が事件として成立するか否かのサスペンス。中盤は二転三転するミステリーの面白さ。そして、犯人判明後には、視覚障害のハンデの中で、どう犯人の襲撃をかわしていくかのサスペンスだ。2時間越えだが、この3部構成で全く退屈させることはない。視覚障害を乗り越えて、何となく事件に関わる羽目になった高校生との連携で、犯人の脅威をIT駆使で、ヒロインがギリギリすり抜ける展開は、巧妙で見事だ。犯人絞り込みでも、両者のIT活用の効果的な展開がある。さすが21世紀ミステリー。終盤の、これでもかこれでもかの危機の連発は圧巻だ。支援者が次々と、えっ、死んじゃったの!との連打で、さらにスリリングに盛り上げる。(館内の熟年女性集団から、何度も悲鳴が上がっていた)それを乗り越えての、危機突破の伏線も効いている。強いて言えば、ヒロインが警察学校優等生(多分)であるにせよ、やっぱりスーパーヒーロー過ぎるとの疑義と、猟奇殺人の犯人は、結局×××××だとの安易なパターンは、もういい加減にしてほしい。死にそうな人間がとにかく生き残り(ここは韓流原本の粗っぽさが露呈)、ヒロインのトラウマ再生でエンディングを迎えるラストは、後味が良かった。(よかった)


10月24日(木)

 立川シネマシティ
「ホテル・ムンバイ」(アンソニー・マラス)
2008年インド・ムンバイで発生したイスラム武装勢力の同時多発テロの中での、五つ星ホテルの観客脱出劇が、従業員の活躍を中心に描かれる。息もつかせぬとは、こういうのを言うのだろう。極限状態の中で、様々な人間の本質が剥き出しになり、人間ドラマとしても興味津々だ。現実に多数の犠牲者が出ているのだから、すべて目出度しとはならないが(多分フィクションもかなりあろうが)、生き残る人は生き残り、エンディングも爽やかだ。ただ、これは事実に基づいたドラマであり、同じ密室脱出劇でも、「ポセイドン・アドベンチャー」のような架空空間として安閑と眺められはしない。テロは論外にしても、富の偏在による下層の人間の不満は当然であり、そこを宗教のカリスマで煽れば、純真無垢な若者(少年に近い者までいる)は、恐るべき殺戮者に変貌する。でも、特殊部隊が投入されれば、そんな物はひとたまりもない。強大な国家暴力装置は、結局は必要なのか?国家の恩恵を最も受けている「富裕層」を「お客さま」として、必至に護り抜いた従業員を賞賛するだけでは済まない問題だ。複雑な感慨をもたらす作品でもある。(よかった。ベストテン級)

 kino cinema 立川高島屋S.C.館
「ボーダー 二つの世界」(アリ・アッバシ)
醜い容貌だが、犯罪を嗅ぎ分ける異常に発達した嗅覚で、その能力を生かし税関職員として働いている孤独な女性が主人公。ある日、嗅ぎ分けたのに犯罪性を全く有しない男(?)と出会う。ここから先の展開は、ちょっと触れてもネタバレになりそうなので一言も記せない。予告編を観た時は、こんな映画を想像しなかった。予告を創った人は、相当に苦労したのではないか。人類を「種」として捉え、その存在に疑義を呈した壮大なSFだったとだけ言っておこう。(それって、すでにネタバレだろと怒る人がいたらゴメンナサイ)でも、醜女(失礼!)にヘアヌードを晒させ、濡れ場を演じさせる、この監督の美学(?)に、私は疑問を感じざるをえない。(まあまあ)

 立川シネマシティ
「楽園」(瀬々敬久)
不明ながら原作者の吉田修一の小説を一つも読んだことはないが、李相日の映画化2作品「悪人」「怒り」を観た限りでは、ド暗い題材の人で、李監督のヒリヒリした個性と相まって、私の好みからはかなり閉口モノであった。本作も難民家族・小学生失踪・村社会の偏見・限界集落の中の閉塞した青春・21世紀の新たな村八分・狂気の連続殺人etcと、ようまあド暗いネタを並べたものである。ただ、終盤の時制を輻輳させたファンタスティックな処理に、瀬々作品らしく「それでも俺は生きてんだ!文句あっか!」との活力が現れていたのが救いだった。(まあまあ)


 ここまでの私のスクリーン初見鑑賞作品は、258本。

2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年10月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031